コモリーマン@Yoga好き❤️

コモリーマン@Yoga好き❤️

本大好きなおじさんです。 kindle paperで本を購入してましたが、お金の節約のため図書館を利用するようになりました。


本が好きです
4 スタンプラリー

合計スタンプポイント:9pt

ボーナスポイント

初スタンプポイント 5pt x 1

さんの書評2026/08/29

謝罪論を読んで

謝罪論を読んで 私の人生において、謝罪されても許すことができなかったことが多々あった。当初は私自身の心が狭いことが原因だと考えていた。しかし「許さない権利」という概念をABEMA TVで知った。そこで、そもそも謝罪とは何なのかと哲学的に疑問を持ち、答えを探していたところ、この本にたどり着いた。 この本は、謝罪の全体像をロジカルにわかりやすく解説した作品である。本作品の流れは、最初に子供に謝罪を教えるときにどのように教えるかという問いかけを与え、謝罪の本質を読者に意識させた上で、多様な実例も交えて、被害者及び加害者の観点から解説していくというものである。 本書を通じて、謝罪する際、被害者の心情に寄り添うことの重要性を学ぶことができた。 ドラマ『北の国から』の主人公・五郎が、息子・純の不祥事について被害者側に謝罪する場面が事例として紹介されていた。五郎は、わざわざ自分自身が上京して被害者側のもとへ赴いたという行為そのものが謝罪にあたると考えていた。しかし被害者側は、被害者が感じた苦痛に関して寄り添っていない点から、謝罪には当たらないとして五郎を追い返したというエピソードだ。この事例は、被害者と加害者の謝罪に対する考え方の違いにより起きたことである。厳しい見方をすると、加害者側である五郎は、頭さえ下げれば何とかなるという打算的な謝罪を行った。しかし被害者側はそれを見抜き、被害者の心情への寄り添いが足りないことを指摘した。 この学びを通して、前述した私自身が経験した、許せない理由に関して今一度見直してみた。その結果、謝罪してくる人は何が悪かったかを全くわかっておらず、とにかく頭さえ下げれば何とかなるという打算的な謝罪ばかりであったことに気がついた。なので、許すことができない私自身は正常で、私の心が狭いことが原因ではないということである。 本作品では、謝罪する際の注意点などを、上記以外の例で紹介していた。どれも大変実践的であった。昨今、辺野古沖転覆死亡事件における同志社国際高校校長の謝罪など、謝罪行為をしているにもかかわらず、被害者から全く受け入れられていない事例が散見している。その中で、本作品で紹介されていた謝罪する際の注意点を照らし合わせていくと、何が足りないのかということが客観的に浮き彫りになる。 最後になるが、謝罪というものを考える上で一石を投じる貴重な作品である。(これはあくまで私の感想であるが、ここまで完成度の高い作品がAmazon売れ筋ランキングなど社会的に注目されていないのが理解に苦しむ。) 謝罪の本質をきちんと勉強したい人だけではなく、新社会人、幹部候補生など組織としての謝罪を経験する可能性のある方に、ぜひ読んでいただきたい作品である。

この書評がいいと思ったら、押そう! » いいね!

さんの書評2026/08/10

親といるとなぜか苦しいを読んで

YouTubeで紹介されていたため、この本を手に取ってみた。この本は臨床心理学の観点から、親といるとなぜか苦しいと感じる子供の事例を深掘りした作品である。本作品ではただ事例を深掘りするだけではなく、原因、親側と子供側の心理、及び対策についてまとめた1冊である。 全体的に事例も交えてわかりやすく説明されていた。また本作品の読者が、子供時代の親子関係が原因で悩んでいる人たちを想定してか、やや子供側よりの見解であった。特に印象に残ったのが、大人側の原因として紹介されていた精神的に未熟な人の特徴である。融通が効かず1つのことを思い詰める、ストレス耐性が低い、自分が1番良いと思うことを押し通す、以上3つが該当すると紹介されていた。この点に関しては、親子関係だけではなく、昭和型の日本企業と新入社員との関係でも当てはまるのではないかと感じた。 昭和型の日本企業の特徴としてジョブローテーションというものがある。新卒社員の中で専門性を磨きたい人にとって、これは奇異な制度だ。また会社側も組織人間を作りたいと考え、尖りすぎた人材は望まない傾向にあった。そのため、必然的に上司は、融通が効かず、ただただ問題を起こさないことなかれ主義を遵守することを思い詰め、若手が少しでも自分の意見に対して批判的な意見をしたら、変革を恐れるあまり冷静に対処せず恫喝する行動を取り、会社が1番良いと思う制度であるジョブローテーションを若手社員へ押し通そうとする。以上より、精神的に未熟な人と昭和型の会社組織とは驚くほど似ていると感じた。 だからこそ、現在において昭和型企業が少なくなってきているのは、日本だけでなく海外の市場にも目を向ける必要のある現代において、精神的に未熟な会社ではグローバルで戦っていくために必要である多様性を組織に根付かせることが難しいことが理由に挙げられるのではないか。今回の私の見解においては、本作品の内容と比べるとやや飛躍しすぎてしまったが、会社組織において重要なファクターの1つは人間関係であり、その人間関係において1番最初に経験するのが親との人間関係であるため、おのずとシンクロしてくるのも納得できる。 本作品においては、親自身の対策、改善点が紹介されていなかったのは残念である。もし親自身の対策も紹介していれば、本作品の完成度は大変高かったと思われる。また私が今回飛躍した昭和型企業の例においては、曲がりなりにも一部の日本企業においてグローバル化が成功している実例もある。ある意味、本作品で親自身の対策としてグローバル化が成功している日本企業を調査することにより、何らかのヒントを得られる可能性もあると思われる。 とは言え、本作品においては、精神的に未熟な親の元で育った子供に対しての生き方の紹介がメインである。親子関係という視点から問題提起した作品であるため、自分自身の人生に悩んでおり、立ち止まって考えたいと希望する人たちに対してお勧めしたい作品である。

この書評がいいと思ったら、押そう! » いいね!

さんの書評2026/08/08

ゆたかな社会を読んで

PIVOTの「経済学の名著5選」という特集で紹介されており、興味を持って手に取ってみた。 この本は、ものが増えても、社会全体が本当に豊かになるとは限らないという視点を紹介した作品である。その論拠として生産という行動に焦点を当て、人類にとっての生産の位置づけ及び目的、最終的に生産を通じた豊かさが生み出すものが何かがまとめられていた。現代の豊かさが人類に対して与える影響を生産という概念から読み解いたが、最終結論の中で、豊かさと軍拡の間に強い相関があるという著者の主張は非常に驚いた。理由として、そもそも豊かさに必要な要因の1つとして技術開発が挙げられる。しかし消費財中心の経済では、コマーシャルや広告に投資が割かれ、技術への投資に回らない。また技術投資はコストが非常に高く、民間企業だけでは賄えない。そこで租税という形で資金調達できる公的機関のみが技術開発を実現することができる。ただ、公的機関が技術投資をする上で国民を納得させる必要があるが、1番納得させやすい理由が安全保障を隠れ蓑に、兵器開発という名目で技術開発を実施することである、と紹介されていた。 この点に関しての見解は非常に鋭いと思う。しかし、安全保障という名目だけではなく、他の名目で豊かになった実例もある。代表として日本の戦後復興が挙げられる。池田勇人内閣において「国民所得倍増計画」というスローガンが掲げられ、国が積極的に投資した結果、自動車産業など各業界で大いに技術が発展し、トヨタなど世界に認められた。その結果、世界中で日本製品が売れ、国民の所得は上がり、豊かになったという実例がある。国民所得倍増計画では、社会資本の整備だけではなく、教育・訓練や科学技術の向上も重視されていた。 本書は明記されていないが、アメリカの事例を挙げていると思われる。そのため、日本など他の国の実例を挙げて検討していただければ、なお完成度の高い作品になったと思われる。 とは言え、豊かさという曖昧な概念を考察する上で、生産活動の目的の変化を読み解くことで、安全保障にかこつけた軍拡など、現代社会の問題点を考察するまで拡大する本書の構成は非常に面白かった。豊かな社会という概念を考えたい人に対してお勧めしたい作品である。

この書評がいいと思ったら、押そう! » いいね!

さんの書評2026/07/30

社会はなぜ左と右に分かれるのか、を読んで

モラルリベラル関連の本を探していたところこの本が見つかり、興味を持ち手に取ってみた。 この本は、なぜ人間は敵対するグループに分かれるのかを道徳心理学というアプローチで考察した一冊である。道徳心理学の視点から、主に三段階で考察することができる。最初に、人間は物事の善悪を理性ではなく自身の道徳的直感で判断し、その後に理性的な理由付けを行う性質があると紹介されていた。次に、道徳的直感で判断する際には六つの要因(ケア、公正、忠誠、権威、神聖、自由)の組み合わせ(道徳マトリックス)が大きな判断指標となり、これは人によって異なると紹介されていた。最後に、同じ道徳マトリックスに属するグループはメンバー同士の強い団結を生み、自分の所属する共同体の思想を絶対視するため、異なるマトリックスを認めることが困難となり、やがて分断を生むと紹介されていた。 道徳心理学というアプローチで現在社会の分断を考察した点は大変興味深い。事例として政治(保守主義、リベラル)が挙げられていた。リベラルが人気を得にくい理由として、採用している要因がケア、公正、自由のみに限られており、その結果、政策に柔軟性を欠くという視点は、大変わかりやすく納得できるものであった。 ただ、一つだけ疑問が生じる。著者の理論によると、道徳的直感を構成する要因は六つであるため、数学的組み合わせ論上は六十三通りの組み合わせが考えられる。しかし、政治において主流なのは保守主義とリベラルの二つであり、残りの六十一通りの道徳マトリックスについては、その存在や役割がはっきりと紹介されていない。明らかにマトリックス間には偏りがあるように思われる。この偏りが発生する原因については言及されていなかった。また、人間が思考よりも直感を優先する理由についての考察も紹介されていなかった。これら二点についても触れられていれば、さらに完成度の高い作品になったと思う。 とは言え、敵対するグループへ分裂する理由を、人間の性質である道徳的直感に起因すると説明したアプローチは、現代社会における分断を理解する上で大変わかりやすかった。現代社会で発生する分断に興味のある方におすすめしたい作品である。

この書評がいいと思ったら、押そう! » いいね!

さんの書評2026/07/30

銃に恋して、を読んで

タイトルに惹かれてこの本を読んでみた。この本はアメリカにおいて銃がどのような位置付けであるかをまとめた作品である。 アメリカ国民にとって、銃とはアメリカ人のDNAの一部であり、自由の象徴であり、神が与えた不可侵の権利であると紹介されていた。そのため、キャッスル・ドクトリン法など、銃を所持するだけではなく使用することについても認められており、銃規制に対して強い反発があることも理解することができた。また、銃だけではなく、アメリカ人にとって神とは大切な存在であり、神の考え方や教えによって社会が営まれていることも本書から学んだ。また、アメリカ国民における銃の考え方は、西部開拓時代に先住民からの襲撃に対抗するための手段として使用した経験から培われてきたものであるという点も印象的であった。 ただ、この点に関しては一つ疑問が生じる。そもそも先住民側の立場に立てば、アメリカ国民は侵略者であり、自分たちの土地を奪う手段として銃が使われたとも言える。それにもかかわらず、銃が先住民からの襲撃を守るための道具であると主張するのは、銃に対する一面的な見方なのではないか。侵略された側からすれば、銃こそ自分たちの土地を奪われた原因の一つと解釈してもおかしくないのではないか。本書では取り上げられていなかったが、ネイティブアメリカンの意見も紹介されていれば、より完成度の高い作品になったと思われる。 とは言え、銃とはアメリカ人を考える上で非常に重要な要因であることは間違いない。その上で本書は、銃に対するアメリカ側の立場を非常にわかりやすくまとめた作品である。また、本書では銃規制が厳しい日本に対するアメリカ人の見解も紹介されていた。歴史上の刀狩政策と比較しながら読み進めるのも非常に面白いと思われる。 アメリカ社会やアメリカ人に興味がある方々におすすめしたい作品の一つである。

この書評がいいと思ったら、押そう! » いいね!

さんの書評2026/07/29

NEXUS 情報の人類史(下)を読んで

タイトルに惹かれてこの本を手に取ってみた。この本は上巻に引き続き、人類の歴史を情報ネットワークの視点から見直した一冊である。なお、上巻でも言及したが、本巻はインターネット出現以降の話が取り上げられており、コンピューターが人類に与えた影響に焦点が当てられていた。また、過去だけではなく未来への展望についても論じられていた。 本作品は大きく分けて二つの内容で構成されており、前半はコンピューターにおける既存の情報ネットワークとの違い及びその特徴、後半はコンピューターが人類に与える影響の可能性を政治の視点からまとめていた。 本書において大変興味深かったのが、後半で紹介されていたコンピューターが与える政治的側面である。民主主義社会、全体主義社会のいずれにも負の側面があるという点が印象的であった。民主主義社会においては、コンピューターが人類に与える影響の一つとして紹介されていた分断を加速させることにより、話し合いを主とする民主主義が成立しなくなることが理由として挙げられていた。一方、全体主義社会では、独裁者自身が情報を集約し決断するのではなく、コンピューターの傀儡となる可能性、あるいは権力を掌握するコンピューターを人為的に管理すると、そのコンピューターの権威が低下し、それに伴い独裁者自身の権威も低下してしまうというジレンマが紹介されていた。 これらのことから、人類がこれまで構築してきた政治制度をそのまま用いるだけでは、これからの社会を維持することは難しくなる可能性があるという未来へのメッセージを感じた。コンピューターは暮らしを便利にする道具であるだけではなく、政治制度そのものの在り方まで変える可能性を秘めていることを改めて認識することができた。 なお、本書ではその解決策として、政治の力でコンピューターの力を抑制し続けられる制度や機関を創設・構築する必要性が紹介されていた。しかし、その制度や機関を運営するのは果たして人間だけで十分なのだろうか。仮にコンピューターに頼ることになるのであれば、人間の存在意義とは何なのだろうか。本書を読んでも、その答えを見つけることはできなかった。 本作品は、コンピューターが人類に与えた影響を実際の歴史的事例を通してわかりやすく説明している。ただし、歴史との結び付きについては、紹介される史実の背景をある程度理解していないと内容を十分に理解することは難しい。そのため、取り上げられている史実をあらかじめ調べた上で読み進めると、より理解が深まるだろう。情報という視点から歴史を見直し、さらにコンピューターが人類にもたらす未来に興味がある人には、ぜひおすすめしたい一冊である。

この書評がいいと思ったら、押そう! » いいね!

さんの書評2026/07/25

人生不案内を読んで

タイトルに惹かれてこの本を手に取ってみた。この本は読売新聞の企画で著者が4年にわたって対応してきた人生相談をまとめた1冊である。また、著者自身の経験を通してまとめたコラムも紹介されていた。そのため、著者の回答を通して心が軽やかになるだけではなく、人生相談を受ける際に心がける必要のあることを学ぶことができる作品である。 個人的には本作品を通して後者に非常に興味を持った。特に印象的だったのが、人生相談を受ける際、その回答は実は相談者の言葉の中に含まれているという点である。相談者の悩みは身内など、自分に近すぎる存在に関するものが多い。悩みが近すぎると、自分自身を俯瞰的に見ることができなくなり、答えが見えなくなってしまう。そのため、回答者はあくまで鏡となり、「こんな風ですよ」と鏡を見せるような意識で回答することが重要である。 この考え方はいろいろな点で応用が利くと思われる。悩みを解決するためには第三者の視点から見てもらうことも大切であるが、日記という形で文字に残す方法もあり得るのではないか。後日、落ち着いた環境で日記を読み返すことにより、過去の自分自身を客観的に見ることができ、未来の自分に答えを気づかせることができるからである。ある意味、日記を自分の鏡とするのである。 ただ、本作品はあくまで人生相談の回答者としての視点からまとめたものであり、自分自身で悩みを解決する方法を紹介する作品ではないため、日記に対する考察はなかった。本作品とはかなりそれるが、コラムなどで自分自身で解決する方法についても紹介いただければ、さらに完成度が高くなったと思われる。 とは言え、死への恐怖に対する相談の回答(回答の詳細は割愛する)など、相談内容及びその回答を読むだけでも読者にとって生きるヒントとなり、心が和む作品である。人生に悩んでいる人だけではなく、カウンセラーなど人生の悩みを聞く立場の人にも読んでほしい作品である。

この書評がいいと思ったら、押そう! » いいね!

さんの書評2026/07/18

NEXUS 情報の人類史(上)を読んで

タイトルに惹かれてこの本を手に取ってみた。この本は、人類の歴史を情報ネットワークの視点から見直した1冊である。なお、インターネット出現以降の話は下巻で紹介されているため、ここでは割愛する。 本作品は大きく分けて3つ(情報の定義、情報により生まれたもの、情報の取り扱いの違いによる政治)で構成されていた。 個人的に情報により生まれたものの紹介がとても面白く、特に興味を持ったのが虚構という概念である。情報において虚構は真実よりも好まれ、その理由として、真実と比較すると単純で分かりやすく、気分を良くするという性質がある。これは、人には感情というものがあるため、理屈上では正しくても感情的に従った結果、間違った選択をする可能性があることを示唆している。 例えて言うなら不倫が挙げられる。現代の日本の法律上、不倫を実施した際、婚姻を継続する上で困難になる理由になるため、離婚する際、不倫した側が社会的制裁を受ける。それでも不倫に踏み切るのは、感情的に今のパートナーよりも不倫相手の方が好きになるためである。仮に虚構よりも真実を選択することができれば、理屈上、不倫がなくなるのではないか。しかし、現実としてなくならないという点を鑑みると、虚構という概念を好む性質を完全に直すことは難しいと思われる。ただ、できることは少しでも多くの確率で虚構に惑わされないことなのではないか。 本作品では、虚構以外にも情報ネットワークの観点から、人類の歴史をたどることにより、人間の本質を紹介する事例が史実をもとに紹介されていた。そのため、本書は情報に興味がある人だけではなく、人類の歴史をこれまでとは異なる情報ネットワークというアプローチからひも解くことに興味のある人に、ぜひお勧めしたい作品である。

この書評がいいと思ったら、押そう! » いいね!

さんの書評2026/06/27

仏教抹殺 なぜ明治維新は寺院を破壊したのかを読んで

タイトルに惹かれてこの本を読んでみた。この本は明治時代に発生した廃仏毀釈運動を取り上げ、発生した原因及び与えた影響について取りまとめた1冊である。興味深いのは、明治政府が目指していたのは、これまで神道と仏教が混在していた状態から、天皇を中心とした神道国家を目指すことを目的とした神仏分離政策であるにもかかわらず、その理念からエスカレートして、仏教自体を潰す運動に突き進んでいった点である。 廃仏毀釈運動へエスカレートした理由として、著者は1.新政府軍への過度な忖度、2.富国策へのインフラ・武器整備の材料供給のための寺院利用、3.熱しやすく冷めやすい日本人の民族性、4.僧侶の堕落に対する批判、以上4つの要因を挙げていた。1、2に関しては支配者層側の視点であり、3、4に関しては民衆側の視点であった。 本書において大変興味深いのは、上記理由1、2より、支配者側の都合により犠牲となるのは民衆だけではなく、仏教という宗教にも及んでいる点である。しかも理由4により、世論は止めるどころか支配者側の策を推し進め、それが廃仏毀釈運動へとつながっていく点である。これらにより見えてくることは、当時の明治政府は中央集権国家としては黎明期であり、まだ全国民及び支配者階級を十分に統制できていない状況にあったように見受けられ、廃仏毀釈運動へエスカレートしたのもその一つであったと思われる。 しかし、著者が挙げた要因及びその分析に関して、一部疑問も生じる。本書においては、鹿児島県が全国の中で仏教寺院が少ない理由として、理由2によるものが大きいと紹介されていた。しかし太平洋戦争時において、日本政府は武器を作るため、民衆だけではなく全国の寺院に対しても鐘などの金属を供出させている。仮に理由2の理屈に沿うのであれば、太平洋戦争時において寺院が激減していることになる。この点については本書では紹介されていなかったが、鹿児島県だけが特に寺院が少ない理由の主要因として理由2であるとするには、いささか説明不足なのではないかと思う。細かい話ではあるが、鹿児島県の寺院数については、太平洋戦争時の政府による金属供出の影響と比較して論じていただければ、より完成度が高くなったと思われる。 とは言え、政府の政策が民衆の怒りや小支配者の過度な忖度によりミスリードした事例として発生した廃仏毀釈運動の過程は、現代の政治にも通じるところがあるため、様々な教訓がある。日本における仏教の歴史だけではなく、政策が正しく国民に運用されなかった失敗例として興味がある人に対してもお勧めしたい1冊である。

この書評がいいと思ったら、押そう! » いいね!

さんの書評2026/06/15

目に見える世界は幻想か?を読んで

目に見える世界は幻想か?を読んで タイトルに惹かれて手に取ってみた。 この本は物理学の思考法をまとめた1冊である。一見すると内容が大変難しいと思われるが、物理学の考え方を数式は全く使わず、わかりやすく解説した作品である。前半は物理学の思考法の概要に関して説明しており、中盤から後半にかけて具体的な実例(量子、時間、空間、重力など)を取り上げており、最後は今後の物理学のホットトピックである素粒子物理学を紹介して終わっていた。 物理学の思考法に関しては大変面白く、特に1.複雑な自然界の現象を単純な要素に分解する、2.立ち止まった場合は観察に立ち戻る、3.1で分解した単純な要素を組み合わせてできた複数の理論的仮説を検証する際、あくまでも宗教的ではなく科学的な視点でふるい落とす、これらのプロセスが面白かった。今回物理学の思考法として紹介されていたが、これは物理学だけではなく、様々な分野にも応用できると考える。例として、あるプロジェクトのリーダーを担当した際、タスクを小さく細かく分ける、細かく分けたタスクを組み合わせて作った様々なフローを俯瞰的に見ることで最適な進め方を決める、行き詰まったときに実際に何が起きているかを観察し、感情ではなく論理的に対策を検討することなど、リーダーとして必要な業務と一致している。 本書の目的は、あくまでも物理学的思考の紹介を通じて物理学の理解を深めることである。しかしここからはあくまでも個人的な見解であるが、物理学的思考を物理の分野だけではなく、他の分野にも応用できる事例を深掘りしていただけたら、なお面白い作品になると思われる。昨今、子供たちの科学離れが進んでいるが、本作品で紹介いただいた物理学的思考をさらに噛み砕いて教育に盛り込めば、歯止めがかかる可能性があると思われる。以上より著者には物理学だけでなく、科学的思考まで拡張した作品を、今回紹介いただいた物理学的思考を応用してぜひ検討いただきたい。 最後になるが、本作品は物理学について興味のある人だけではなく、ビジネスなど幅広い分野で応用できるポテンシャルのある物理学的思考を学びたい方にとって、ぜひお勧めしたい作品である。

この書評がいいと思ったら、押そう! » いいね!

さんのコメント2026/08/15

ノーをイエスに変える技術と強い言葉の2種類紹介されている。内容は限りなく薄い。いまいち。1のないようとほぼ同じ。強い言葉に少しだけ追加されたのみ。最初の付録さえ読めば問題なし。あと相手の気持ちがわかってないとこの方法は使用できない

さんのコメント2026/02/09

読む技法を読んで、 タイトルに惹かれて手に取ってみた。この本は、書き手の意図を正確に汲み取るための手段として、西洋で発展した聖書を読むために使われている7つの技法が、実例を交えて紹介されていた。また、読書の目的は、書かれている文章の意味を理解することだけではなく、作者の意図を理解することが重要であると紹介されていたが、これまで読書の目的を情報収集としていた私にとって新しい視点であった。このような考え方を義務教育の際に学んでおきたかった。本をただ情報収集のためのメディアツールとして扱うのではなく、作者の意図を理解して更なる深みを読み取り、より多くの見識を広げたい方にお勧めの1冊である。

さんのコメント2025/10/29

先日観たドキュメンタリー映画で紹介されていたので興味が湧き読んでみた。内容は著者の弟が半田保険金殺害事件で殺害され、その後加害者との対話を通じて罪と罰とは何かを問うものであった。被害者である著者が最終的には加害者の死刑執行取り止めを請求するまでの流れは特に印象深かった。 また日本の法がいかに被害者に対して寄り添ってないのかという事を初めて知った。裁判でも被害者は検察からの依頼で証言台に立つ以外関わることを許されず、被害者の気持ちが置いてけぼりになるというのはこの本を読むまでわからなかった。 また世間は加害者だけではなく被害者およびその家族に対しても色眼鏡で見てきて、なおかつ、被害者をそれから守る人はいないというのも初めて知った。 死刑の目的は何か?また、被害者の権利について考えさられる本であった。

さんのコメント2025/10/07

タイトルと内容の整合性がよくわからない。 あと、自分が嫌なことは相手にはしない、自分が好きなことは相手にやる、とあり、その下で仕事相手と遊びに行く理由としてるが、仕事相手がキャバクラが嫌いな場合の想定がないように思われる。

さんのコメント2025/10/06

『明智光秀の生涯』を読んだ。 私は光秀に自身の現状を重ね、「明智光秀、牢人はなぜ謀反人となったか」で共感した点も多かったため、別の視点から光秀を知りたいと思い、この本を手に取った。 本書では、光秀が信長に対して感じていたプレッシャーが強調されていた。信長は超現実主義者で、人を単なる機能として評価するため、少しでもパフォーマンスが低いと容赦なく圧力をかける。その結果、光秀は精神的に追い詰められた。また、信長と光秀の間にはコミュニケーション不足があった。例えば甲州征伐の同行時に、信長は光秀が天下布武に必要な人材であるとの評価を明確に伝えず、光秀に監視役をつけなかったことや、本能寺における迂回行動の少なさなどから油断が生じた。こうした状況が重なり、信頼していた光秀から本能寺で討たれるという結果につながったというシナリオは非常に興味深い。

さんのコメント2025/09/29

『若者はなぜ3年で辞めるのか』を久々に読み返した。20年前に読んだ作品だが、改めて読むと「日本のジョブローテーションはやっぱり変わってないな」と痛感する。確かに最近になってジョブ型雇用という制度がようやく出てきたものの、依然として多くの業種でジョブローテーション文化が根強く残り、結局は大きな変化は見られない。 また、本のタイトル通り「3年で辞める」という現象は今も続いている。厚労省の統計でも大卒の約3割が3年以内に離職している。ただし今では転職市場が整ったこともあり、むしろ「3年」が基準とは限らず、もっと早い段階で辞める若者も増えている。ある意味、状況は悪化していると言えるかもしれない。そう考えると、日本企業の人事部はやはり学習しないのか…と思わざるを得ない。

さんのコメント2025/08/27

第4章の「大人になって人から期待されることが一番嫌いになった」というエピソードは、一般社会で人にばかり仕事を振られてキャパオーバーになり、嫌気がさす状況とよく似ていると感じた。 また、第5章の「それでも認められたい」というテーマでは、目的と目標は異なるという考え方や、やる気を引き出すために〈見通し → 目的 → 使命感〉というプロセスを踏む点が示されており、大いに共感できた

さんのコメント2025/08/27

タイトルに惹かれて手に取った一冊。 本書では「面倒に感じること」を回避性パーソナリティ障害と位置づけ、作家の星新一やビアトリクス・ポターといった過去の人物の事例、さらに著者自身が関わった患者のケースを通して、その解決法をまとめている。 星新一のエピソードがやや長く感じられたものの、全体的にはわかりやすい内容だった。ただし提示される解決法は、「最初の一歩を踏み出すこと」「安心できる人間関係を確保すること」「完璧を求めすぎず適度に力を抜くこと」など、すでに他の書籍でも目にするような一般的な方法が多く、新鮮味に欠ける印象もあった。 とはいえ、事例を交えて整理されているため理解しやすく、改めて「回避傾向」と向き合うきっかけになる一冊だと感じた。

さんのコメント2025/08/18

鎮痛薬やワクチンなど、昔からある医薬品を中心に、その起源や開発の裏話、そして薬と社会との関わりが描かれていた。個人的に印象的だったのはスタチンの章。著者自身に届いた保健組合からの手紙がきっかけで自ら論文を調べ、コレステロール低下と心疾患リスクの関係を検証しているくだりは非常に興味深いものであった。また同章で紹介されていたジェレミー・A・グリーンの著書(Prescribing by numbers)も気になる。現時点では日本語訳版は未刊だが、出版されたらぜひ読んでみたい。

さんのコメント2025/08/18

光秀が謀反に至るまでの経緯が整理されており、また理解しやすい内容だった。また、その背景には現代の職場環境との共通点が見られる。特に以下の3点が顕著である。 1. 人材不足に伴う一人ひとりへの業務過多 2. 成果に対する過剰な質とスピードの要求 3. 一部人材の優遇に起因する立ち位置への不安・不信感 これらは現在の組織においても課題となり得る要素であり、光秀の事例は「過度な負担や不公平感が組織全体に及ぼす影響」を考えるうえで示唆的である。