コモリーマン@Yoga好き❤️さんの書評 2026/02/23
国家はなぜ衰退するのか(上)(下)を読んで タイトルに惹かれてこの本を手に取ってみた。 この本は繁栄している国と衰退している国が発生する理由及び衰退している国が繁栄する国に生まれ変わる方法を上,下巻にわたって様々な実例を交えて紹介した作品である。著者の主張は、繁栄、衰退する国家の違いは制度の違い(包括的制度、収奪的制度)が大きな要因であり、それらの制度が発生した背景には植民地支配など過去の歴史が強く影響しているというものである。また現在包括的制度を採用している国家においても最初からその制度であったわけではなく、もともと収奪的制度をとっていた国家が革命やペストによる封建主義の崩壊など様々な要因で包括的制度へと変化していったことが紹介されていた。 著者の主張に関しては概ね理解できる。確かに国家としての成長は重要である。しかし国民が経済成長を実感できているかどうかは別問題である。例えば現在日本において株価は最高値をつけているにもかかわらず、円安や実質賃金の伸び悩みにより生活が苦しいと感じる層も存在する。生活が苦しい中においては国民のインセンティブが低下し、その結果成長への投資が弱まるという悪循環が発生する可能性がある。とは言え、現在日本政府も特定成長分野への投資を進めているが、その分野を特定するのは政治家、つまりエリート層であるため、正しく国民に利益が還元されるかは疑問である。 また本書では包括的制度が繁栄をもたらすと述べられているものの、それが永続的であるとは限らないとも示唆されていた。これは戦後の日本経済の高度成長とその後の低成長で説明できる可能性がある。戦後における日本経済成長の要因の一つとして全社員ジョブローテーション制度が挙げられる。この制度は均質な品質を支える人材を育成するという点では効果的であったが、イノベーションが求められる現代社会においては必ずしも最適とは言えない面もある。したがって、日本企業においては会社主導で育成プランを決めるのではなく、本人の希望に沿ってスペシャリストの道を整備し、ジェネラリストに関しても本人のキャリア構想に基づいて形成する主体的な仕組みに変える必要があるのではないか。いわば人事権を人事部というエリートから社員、現場に一定程度返すような仕組みへの転換が求められるのではないか。本書では世界各国の実例が網羅的に紹介されていたが、日本企業の人事制度と包括的制度との関係についても言及があればさらに理解が深まったように思う。とは言え国家の繁栄という命題を世界各国の実例を踏まえて考察している書籍は貴重である。国会議員を目指す諸君にぜひ手に取っていただきたい一冊であると言える。
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