コモリーマン@Yoga好き❤️さんの書評 2026/02/22
世界最悪の旅を読んで、 YouTubeでスコット南極探検の動画が多く挙げられており、それらのソースとなった文献として本作品が紹介されていたため手に取った。本書はスコット隊に所属していた著者チェリー=ガラードが、スコット遭難から10年後に、スコットの日記および自身の体験をもとに南極探検の経緯をまとめた一冊である。内容は概ねYouTubeで紹介されていたものと重複していたが、著者自身による遭難の批評の章は特に興味深かった。 著者が挙げる失敗理由は、1.探検目的の多様化、2.油や食料など探検準備品の問題、の二点である(後者については既存の解説と重複する部分が多いためここでは割愛する)。探検目的の多様化とは、本探検が1.南極大陸の科学調査、2.南極点到達という二つの目的を併せ持っていたことを指す。本来の主目的は科学調査であったが、当時は科学調査に対する大衆の関心が低く、資金調達のために南極点到達という目標を掲げた背景があった。しかし、ノルウェーのアムンゼンが南極点到達を目指したことで競争意識が高まり、資金獲得のための目標であった到達が次第に優先され、結果として資源配分が中途半端になったことが指摘されている。 この点は探検に限らず、複数の目的を抱えたプロジェクト全般に通じる教訓である。目的が増えすぎれば優先順位の設定が困難となり、結果として全体が中途半端になる危険がある。本来の目的を見失わず、組織を導くことはリーダーの重要な責務であるという学びを得た。 また、著者自身が当事者でありながら、自らの属した隊の失敗を客観的に分析している姿勢は評価に値する。一方で、科学調査がなぜ大衆の関心を得られなかったのか、その理由や対策についての考察があれば、より歴史的示唆に富む内容になったと感じた。現代においても基礎研究への関心や投資の問題は存在しており、その点への言及があれば、より普遍的な意義を持つ書となったであろう。 本書は冒険探検に関心のある読者だけでなく、複数の目的が発生した際の失敗例を学びたいリーダー志向の読者にも勧められる一冊である。
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