さんの書評2026/02/22

文明の衝突を読んで、

文明の衝突を読んで、 タイトルに惹かれて手に取った。本書は西欧対イスラムの対立構造をはじめとする世界の対立を、「文明」という視点から分析し、21世紀の世界秩序を論じた一冊である。本書は1990年代後半までに発生した世界各地の紛争を、文明間の衝突というロジックで説明しており、大変興味深かった。 特に印象に残ったのは、文明間紛争の火種となる要因の一つとして人口構成の変化が挙げられていた点である。マイノリティー側の民族が人口増加により勢力を拡大し、反乱を起こし、さらにその民族の中核国が介入することで紛争が泥沼化するというロジック(レバノンの例)は、単一民族国家とされる日本にとっては馴染みの薄い視点であり、新たな学びとなった。 現在の日本では少子化による労働力不足を背景に移民受け入れ政策が進められているが、人口構成の変化が将来的に社会や政治に与える影響については十分な議論がなされていないように思われる。本書を通じて、日本においても人口構成の変化がもたらす潜在的な社会的緊張について検討する必要があると感じた。 本書が出版されたのは1990年代後半であるため、中国の台頭については現在ほど大きな比重は置かれていない。また、地政学的要因への直接的な言及は限定的であった印象を受けた。仮に改訂版があるならば、中国の台頭が文明構造に与える影響や、地政学的視点との接続をより明確に示すことで、理論の現代的意義はさらに高まるであろう。 とはいえ、人口構成の変化と紛争の関係など、現代にも通じる視座を提示している点で、本書は国際秩序を考える上で重要な視点の一つを提供している。これからの国際関係に関心のある読者に勧められる一冊である。

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