さんの書評2026/02/26

海の地政学を読んで

海の地政学を読んで タイトルに惹かれてこの本を手に取ってみた。この本はシーパワーを巡る歴史を紹介し、海洋秩序を守るために試行錯誤してきた過程を大航海時代から現代に至るまで紹介した1冊である。また最終章においては日本の対応が、海上保安庁の役割を中心にまとめられていた。 シーパワーをめぐる覇権国家の移り変わり及び海洋秩序を守るための法律の変遷が体系的でわかりやすかった。特に海洋秩序を守るための法律である国連海洋法条約の成立においては、トルーマン宣言を契機とした海底資源に関するルール整備の必要性が高まったことを背景に検討が進められた点が非常に興味深かった。またアメリカが同条約を批准していないのは、海底資源開発の制度設計に関して反対の立場をとっていることが理由である点については、現在のトランプ氏の政策以前から存在するアメリカ・ファースト的傾向の一例であると感じた。さらに最終章で紹介されていた国際的に見た日本の海上保安庁の優秀さについては、それが海洋法を遵守するという枠組みの中で発揮されている点に意義がある一方で、国際法を軽視する国家への対応に関してどのように柔軟性を確保していくかという課題も感じられた。 本作品はシーパワーの歴史だけでなく、日本の海上保安庁についても整理されており、地政学のみならず海上法執行体制に関心のある読者にも勧められる1冊である。

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