さんの書評2021/07/193いいね!

患者としての苦悩と、医師としての気づき

 かなり動けるようになった時点で、サックス氏は膝が余り曲がらなくて歩きにくいと医師に相談しました。すると、水泳がいいんじゃないかと勧められます。彼は医師に紹介されたプールへ行きました。どうやって泳ごうかとプールの監視員に声を掛けたら、いきなりプールに突き落とされました。  「何をするんだ!」と監視員の青年を追いかけて必死に泳いでいるうちに「あっ、泳げる」と気がついたんです。そして、プールから上がると普通に歩くことができるようになっていたのです。これは相談をした医師が仕掛けたことだったのです。  医学的には治っていても、精神的に何かがひっかかっているために症状が治らないということは、患者の話を聞いただけでは理解しがたいことです。サックス氏は自分の体験を、その後の治療に役立てたのでしょう。  「いつも患者の言葉に耳を傾けなければならない」この大事なことを、彼は自分の左足の怪我から学んだのです。  患者としての苦悩と、医師としての気づきが、とても素直に書かれていて実に面白い本でした。

この書評がいいと思ったら、押そう! » いいね!

共有する: