睡眠時の脳の活動を調べるのに、以前は脳波計しかなかったが、fMRIができてから、睡眠時に活動している脳の部位が正確にわかるようになり、睡眠の仕組みの解明もずいぶん進んでいるようだ。 睡眠障害にはたいした治療法もなく、病院にいっても眠剤や抗うつ剤を貰うくらいで、医学ではお手上げ感が強かったが、生理学、脳科学的な知見が積み上がってきたことで、例えばナルコレプシーや夢遊病などの睡眠障害の治療法も確立されつつあるし、PTSDの治療にも睡眠を応用した療法が効果をあげつつあるなど、やっと睡眠が科学の土俵に上がってきた感がある。 こうした新しい知見は、睡眠障害の治療という側面だけでなく、いろいろな応用が試みられていて、とくに睡眠と記憶の関係を利用して、睡眠中に記憶を増強して学習効果を高めたり、あるいは不都合な記憶(PTSDの原因となっている悲惨な記憶など)を消したり、逆に全くあたらしい記憶を埋め込むこともできるそうで、このあたりがいちばんおもしろかった。 映画「インセプション」は2010年の作品だが、実に時代を先取りしていたというか、インセプションの世界がほんとうに現実になるのかもしれない。
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