さんの書評2025/05/291いいね!

スクールセクハラについての優れた入門書として

 性暴力について、被害者の方が書いた本や加害者の矯正プログラムに取り組む医師の本などを読むと、どれほど被害者の人生を狂わせる甚大な犯罪なのか打ちのめされる思いがする。 それを防ぐための教育が求められるわけだが、一方で、あまりにも易々と餌食になってしまう若年者にその危険性を広く行き渡らせる必要がある。そのひとつとして本書を描いてくれたさいきまこ先生に深く感謝する。  本書はマンガという形式を使って一般的な中学校を舞台に、大人から子どもへの性の搾取、支配が行われる事例を描く。年少者の理解を得やすい形式と最後まで飽きさせないストーリーで、世の中にこういった邪悪さもあるのだという知識を与えてくれる教材は本当に貴重だと考える。  この作品では中心となるのは養護教諭で、おそらく教育現場でも養護教諭は性と人権についての教育において重要な位置におられるのだろう。本作には出てこないが、学校の図書館も情報源として重要な役割を持つ存在なので本作品が学校の図書館に置かれていると良いと思う。  私は本作を市の図書館で読んでいるわけだが、人権コーナーで見つけた。子どもの人権をいっさい考慮せずに自分の支配欲を満たす対象と見る大人もいることを知る、スクールセクハラについての入門書として優れた作品なので、親の立場の方がたにもぜひ読んでほしい。

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