さんの書評2015/04/055いいね!

松陰の魂が乗り移ったような「見る思想書」

初めて吉田松陰について読んだ。学校の教科書でその名は知っていたし、断片的な知識はあった。ただ、それ以上の関心は今まで持てず、大河ドラマも観ていない。それにもかかわらず読んでみようと思ったのは図書館で偶然出会ったからだ。単なる解説本だったならば、パラパラと眺めて元の場所に戻しただろう。しかし、この本は違った。「見る思想書」なのだ。イラストだらけの思想書。しかも、そのイラストがどぎつい。一水会の鈴木邦男氏も解説で書いているが、イラストが「自己主張」している。筆者の文章の「補助」や「説明」を超えて、過激で独創的なのだ。このイラストのインパクトがなかったら、最後まで読み通せなかったかもしれない。この本は「FOR BEGINNERS」シリーズの一つである。学ぶことにまだ迷いがある初学者には、向こうから食らいついてくるような魅力的な本や先生が必要だということを実感した。二十九歳でその生涯を閉じ(られ)た松陰の魂が、著者とイラストレイターに乗り移ったような本だった。

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