Rokoさんの書評 2024/11/09 2いいね!
認知症の人が繰り返す話を聞くのは、慣れない人にとっては苦痛ですが、なぜその話をするのか?を考えると、ちゃんと理由があるのです。でも、介護現場ではそんな余裕もなく、きちんと話し相手になることができずにいます。それぞれの人が持っている歴史を聞くチャンスがたくさんあるのに、それができないのがもどかしいと思う六車さんの気持ちが伝わってきます。 認知症でなくても、老人は現在の記憶はけっこう曖昧です。でも、昔のことは不思議なほどよく覚えています。子どもの頃に食べていたもの、どんな遊びをしていたのか、親の仕事のこと、断片的であっても懐かしく思い出すことがたくさんあります。そして、大人になってから誰にも言えなかったことも、きっとあります。遠くからお嫁に来て心細かったこと。田舎の言葉をバカにされたこと。戦争で辛い目に遭ったこと。などなど・・・ 介護する側の都合ではなく、介護される方の尊厳を守るという意味でも、彼らの話を聞き、記録していく「介護民俗学」は、これからの時代に必要なものです。そして、急いで着手しなければいけません。その人がどう生きて来たのかを後世に残すための時間は、もう余り残っていないのですから。
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