さんの書評2015/04/012いいね!

カルチャーショックを受けるウィーン体験記

本を読んでこれほどのカルチャーショックを受けたのは初めてだ。自己弁護と他者批判、自己主張が空気のように存在している国。真理より権利をひたすら追求する人々。相対的なはずの習慣の、絶対的な存在感。お国柄が違うのは承知の上だが、オーストリア人は我々と同じ人間なのか、とつい思ってしまった。「ヨーロッパ精神との格闘」を繰り広げながら、出来る限り対等であろうとした著者の姿勢には頭が下がる。オーストリアで彼らに振りかざされた著者の「拳」は、そのまま西洋かぶれの日本人に振り落とされる。そこに著者のバランス感覚が感じられた。著者が日々感じていたのは、西洋人であることの優越感と、その裏返しとしての非西洋人への差別意識だ。確かに、本の舞台は1984年以前のウィーンの話である。今とはずいぶん事情が違うであろう。しかし、それらの感情や意識は過去に確実に存在し、今なお精神の奥底には存在していると考えるべきであろう。『続ウィーン愛憎』へ続く

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