深水英一郎(ふかみん)

深水英一郎(ふかみん)

読むのはゆっくりだけど本が好き。メルマガプラットフォーム「まぐまぐ」を個人で発案、開発運営し「メルマガの父」と呼ばれる。Web of the Yearで日本一となり3年連続入賞。新しいマーケティング方式を確立したとしてWebクリエーション・アウォード受賞。「ガジェット通信」創刊→ライバー社→ツクレル社など。シュークリームが大好き

@fukamie

本が好きです

さんの書評2022/03/11

著者のバーチャル美少女ねむさんにきいてみる

発売前にあらかじめ原稿を読ませていただいた上で『メタバース進化論』著者のバーチャル美少女ねむさんにお話をききました。 ききて:深水英一郎 ──ねむさん、よろしくおねがいします。『メタバース進化論』はどんな本なのか教えてください。 【バーチャル美少女ねむ】  よろしくお願いします。この本は、メタバースに興味を持った幅広い読者の方を対象に、現在のメタバースの真の姿、そしてその革命性をわかりやすく伝える「メタバース解説書の決定版」を目指して執筆しました。 メタバースの原住民である私の実地調査と、1200人の原住民を調査したアンケート結果を基に、かつてないメタバースの「リアル」をお届けします。 ──ねむさんとしては、本書のどこに注目して欲しいですか?  ブーム以来、投資目線でメタバースが注目されて、様々な思惑や情報が飛び交っています。しかし、実際にそこで人生を送っている私たち「メタバース原住民」からすると、それらの情報は実態とあまりにもかけ離れています。 本書の前半1~3章では、メタバースとはなんなのか? 馴染みのない方にもわかりやすいように、その真の姿を説明します。後半は、メタバースのもたらす革命性を順を追って解説します。 メタバースを体験したことのない方に特に注目してほしいのは4章「アイデンティティのコスプレ」です。 メタバースで、現実とは違う「なりたい自分になれる」とは一体どんなことなのか? どんな革命を我々人類にもたらすのか? 読者の方が自分自身をどうデザインして生きていきたいか、考えるきっかけになればと思います。 ──世間では、メタバースにVRゴーグルが必須なのかどうかについて、まだ定義が揺れているように感じます(「アクセス性」の話との矛盾など)。ねむさんはどう思いますか?  世間的にそこは大きく揺れていますね。 本書の定義では手段のひとつとして「VRによる没入手段が用意されていること」を不可欠な要素としています。 スマホやPCなど必要に応じていろんな手段でメタバースに入ることができるにせよ、親密なコミュニケーションをしたり、じっくりメタバースを楽しみたいような局面ではVRでメタバースに入って没入体験ができる、ということです。 そうでなければ、人生を代替できるような充実感のある体験になりえないと私は考えています。 ——ちょっと確認しておきたい点があるんですが…。今メタバースに住んでいる人たちはこの物理世界はもはやどうでもよくて、メタバースに行ったっきりでもよい、という感覚なのでしょうか?  それについては、必ずしもそうではないと思います。私自身の感覚としては、メタバースでの人生が充実することで、物理現実の人生も豊かになっていきます。  例えば、物理現実では出来ないこと、やってみたいことに、メタバースなら挑戦できるという事はあると思います。  私の場合は「美少女アイドルとして活動する」がそれにあたります。また、物理現実とは一線をおいた世界だからこそ、自由に色んなことを周りの友人に相談できたりする側面もあります。  物理現実とメタバースをいったりきたりすることで、色んな「自分」を切り替えることができます。そのことにより、物理現実も含めて人生がより立体的になり、充実したものになっていくのではないかと私は考えています。 ——メタバースで生活するという感覚に乗っかれる人は今後どれくらい出てくるのでしょう?  現在メタバースで生活している人は、特定の目的(技術やコミュニティへの興味など)があったり、特別な事情(心身の性別の不一致とか)があったりという場合がほとんどです。  そうではない普通の人が使い始めるポイントは、メタバース内で本格的な経済が回り始めた瞬間になると思います。  本書で解説したとおり、現在のメタバースの経済性は試行段階で、それにはもう数年~十数年の時を要するでしょう。しかし、ひとたびそのポイントをすぎれば、一般の人にもメタバースに入る強い動機が生まれます。現在誰もがスマートフォンを持っているように、誰でも当たり前に人生の一部をメタバースで送るようになるでしょう。 ——となると将来は、現実世界を意識せずに生活していくことが可能になったりするのでしょうか。  現在の技術はVRゴーグルでメタバースに入るのが精一杯なので、当分は難しいでしょう。しかし、BMI(脳・コンピューター間インターフェース)が将来的に実用化されると、究極的には全感覚でメタバースに没入し、物理現実を全く意識しないでそこで生きていくことができるようになります。  ただし、技術的な壁は大きく、私たちが生きている間には民生レベルで実用化されることはないでしょう。その辺りも本書で詳しく解説しています。 ——メタバースが理想を実現する世界なのだとしたらそこで生活している人たちから見ると、現実世界はどういう風に見えるのでしょうか?  メタバースに一度慣れてしまうと、移動の不便や姿の不自由さなどの理不尽が多く、物理現実はとても不自由なものに感じられます。ただし、やはり現時点ではVRゴーグルを通したものなので、メタバースに365時間24時間没入するのは不可能ですし、ご飯の美味しさや触覚の臨場感は物理現実の方が上回っています。双方を簡単に行ったり来たりできるのがメタバースのいいところだと思うので、両方のメリットを使い分けていくのが今後の人類のスタイルになっていくのかな、と私は考えています。 ——メタバースが何を達成したら人類の進化といえるんでしょう?  本書で紹介したような「メタバース原住民」の生活・文化・可能性を見る限り、もはやそれは現生人類のスタイルからは大きく逸脱しています。私は、すでに進化は始まっていると考えています。生まれたままの肉体から解放された、「アバター」という新しい身体。それで生活する人類はもはや新たな人類である、と言えるのではないでしょうか。 ——ソーシャルVR国勢調査によれば、メタバースで恋に落ちたことのある人の割合は40%とのことです。そして30%はVR内で恋人ができたことがある。一方、物理世界でのマクロミルの調査によると、いわゆるマッチングアプリでの成功率は約40%(※)。単純な比較はできないと思いますが、それにしてもなかなかすごい数字だと思います。メタバースには恋に落ちやすい要素があるのでしょうか。(※=マクロミル2018年5月15日発表データより)  物理現実だと、年齢・性別・立場の壁があって、だれとでもすぐに仲良くなるのは難しいのではないでしょうか。メタバースではそういった壁が取り払われて、心の距離が近づきやすくなることはデータにもはっきりと現れています。  特に、恋に関しては物理現実と違い、性別の垣根が取り払われる傾向があるのがメタバースでの恋の特性です。そういった要素が、メタバースで恋に落ちることを促しているというのは考えられると思います。 ——人が操作するアバターとNPCの区別がつかなくなる未来は訪れるでしょうか? そうなったら、ねむさんは恋愛相手がAIでも良い?  そんなことは絶対ないと思います。2000年代初頭からの第三次AIブーム(機械学習)で明らかになったのは結局「我々人類の知性の深淵は予想以上に深かった」「AI=人工の『知性』は現在の人類では全く作ることができなかった」ということです。現在「AI」と呼ばれているものは、本来の意味での知性でもなんでも無く、AI研究の結果うまれた機械学習による効率化技術に過ぎません。  一方でメタバースは、言ってしまえば、機械学習による「効率化」とは真逆の技術です。人間らしい非効率的なコミュニケーションをオンラインで行うことができる、という所にメタバースの価値の本質があります。機械学習によりさまざまなことが自動化できるようになったからこそ、自動化できない非効率性・アート性の価値が高まっています。それをオンラインで加速させるための技術こそがメタバースなのです。 ──ねむさんの今後の活動予定について教えてください。 バーチャル美少女ねむ 思いついたことはすぐやる! が信条なので、基本的にすぐに思いつくことはやってしまった後なので、今後の予定は一切ありません。 メタバースの世界は進化が早すぎて明日の予想など誰にもできません。これからも常に新しいこと、昨日の自分が予想できなかったことがメタバースで生まれ続けていくでしょう。これからもそれに挑戦し続けていきたいです。 ──本日はありがとうございました! (了)

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さんの書評2022/02/24

『人生はゲームなのだろうか?』著者の平尾昌宏さんに きいてみる

『人生はゲームなのだろうか? ――<答えのなさそうな問題>に答える哲学』著者の平尾昌宏さんにお話をききました。 ききて・深水英一郎 ——本日はよろしくお願いします。早速ですが、この本はどのような本なのでしょうか? 【平尾さん】  タイトル通り、「人生はゲームか」を考えた本です。でも、安易に答えを披露するとか、「これが唯一の正解だ」と押しつけるというタイプの本ではなくて、この問題を自分たちで考えていくというスタンスをとっています。  私はふだん、大学や専門学校で哲学や倫理学を教えています。それらの授業のために「愛とか正義とか」や「哲学、する?」という本を書きました。それらの中で、例題として「人生はゲームか」をテーマにしました。  しかし、授業で実際のこれらの教材を使っていたところ、学生さんたちが予想以上に関心を持ってくれると同時に、私が予想したのとは違う考え方や反論を示してくれました。そこで、この問題を改めて本格的に取り上げてみようと思った次第です。 ——みなさん関心あるテーマだったということなんですね。  「なんだか生きづらい」というのが時代のキーワードになっています。そして、そこから脱出するためのスキルやノウハウは山ほど提供されています。「答え」を教えてくれる識者や論客も大勢います。それなのに状況を改善できるとはかぎらない。  そもそも、「生きづらさを解消するための手段がどこかで提供されている」と考えることが、錯覚なのかも知れません。だとすれば、むしろ希望は、自分で考えること、つまり<哲学する>ことにあることになります。  具体的なスキルやノウハウとは違って、ある意味では王道、だけど現代では地味に見えてしまう<哲学>ですが、哲学的にきちんと考えていけば、「人生はゲームか」といった、<答えのなさそうな問題>にも一定の解答が得られます。そればかりではなく、人生やゲーム、人生の中で起こるあれこれ(お金、教育、恋愛、宗教などなど)を巡ってあれこれの発見があることが分かります。 ——きちんと考えていくことで、答えがなさそうな問題にも解答が得られるということなんですね。読み通してみると、そこに至るまでのドラマが一冊の本になっているように感じます。この本全体は大きく4つのパートに分かれていますね。  前半のパート1では「人生はゲームか」、パート2では「改めてゲームとは何か」を扱っています。一方、後半のパート3では「人生はどんなものか」、パート4では人生内のあれこれ(宗教、お金、教育、恋愛)について考えるという構成です。  読者の関心によって面白く読めるところはばらけるでしょうが、考え方の基本について学びたい人にとってはパート1が役立つと思います。ゲームに特に関心があってちゃんと考えたい人にとっては、パート2が面白いんじゃないかと思いますし、人生について考えたい人にとってはパート3が面白いだろうと思います。私としては、パート4が気に入っています。 ——もともとこの問題を考えるきっかけは漫画原作の映画「ガンツ」にあったそうですね。そこから大学での学生さんとの対話へ発展していった、とのことですが、このきっかけが面白いですし親しみが持てます。  この本の第2章を、筑摩書房の「webちくま」抜粋紹介していますので、ここを読んでいただければ、本書の意図や方法がよく伝わると思います。 <答えのなさそうな問題>の答えの出し方 「人生はゲームなのだろうか?」より本文を一部公開 https://webchikuma.jp/articles/-/2703 ——やっ、一部読めるのはありがたいですね。語り口はやわらかいですし、平尾さんがうまく交通整理をしながら話を進めてくださっているので、すんなり理解しながら読みすすめることができました。平尾さんは考えを深め哲学をするには地道にやるしかないと冒頭おっしゃっていましたが、こういう風に案内していただけるなら楽しいものだなと思いました。今後執筆したいテーマなどはありますか?  まだ漠然とした計画ですが、今回と同じように、「哲学、する?」や「ふだんづかいの倫理学」で取り上げて反響の大きかった問題について、改めてまとめてみたいと思っています。  代表的なものとして、「お金持ちになりたいか、幸せになりたいか、どちらかを選ぶとしたら?」という練習問題などを考えています。 ——身の回りの答えがなかなか出ない問題って、断片的にはネットでみかけたりもしますが、こうやってまとまって考える機会はあまりなかったように思います。こうやって一緒に考えられる本の存在は嬉しいです。  ほかに、ほぼ完成していて、今は手直ししている本があります。ヨーロッパの哲学者たちが自分たちの言葉を哲学してきたように、我々も日本語を素材として哲学できるのではないか、という試みです。 ——楽しみにしています。本日はありがとうございました! (了)

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さんの書評2022/02/24

『教養としての映画』著者の伊藤弘了さんに きいてみる

『教養としての映画』著者の伊藤弘了さんに話をききました。 ききて・深水英一郎 ——本日はよろしくお願いいたします。本書を執筆するきっかけは何だったのでしょう? 【伊藤さん】  かねてより映画研究者=批評家として自分が身につけてきた知見を世の中に還元したいという思いを抱いていました。そんなときに折よく映画の見方についての連載と書籍化のお話をいただきました。  この本で一番お伝えしたかったのは、映画を意識的に見ることでその楽しみはいっそう大きくなり、世界が広がるということです。 ——ひとことで説明するなら、何の本ということになるでしょうか。  映画の入門書ですね。普段の映画鑑賞がより楽しくなるように、映画の歴史や鑑賞のポイント、鑑賞後のアウトプット術などを紹介した本、ということになります。  まずは「トイ・ストーリー」の見方について説明しているプロローグを読んでいただいて、本書のスタンスがご自分に合うかどうか確かめてみて欲しいです。 ——私はプロローグを読んで、映画についてもっと知りたい! と思いました。  この本の構成について簡単に説明しますと、まず第一講では映画の効用(映画を見るとどんないいことがあるか)、第二講では主に映画の歴史を紹介し、第三講以降で具体的な映画作品を分析しています。  黒澤明や小津安二郎、アルフレッド・ヒッチコックなどの古典期の監督の作品にくわえて、是枝裕和の「海街diary」(2015年)やクイーンの伝記映画「ボヘミアン・ラプソディ」(2018年)といった近年の話題作も取り上げています。最終講では映画を見たあとのアウトプット術について、具体例を交えながら紹介しました。 ——最終章で、感想や批評のアウトプット術、特にTwitterを使った書き方について述べておられて非常に面白かったです。誰でも発信者になれる時代であり、そのレベルも上がっていますが、映画の感想って、ちょっとむずかしいと考えている人も多いと思うんです。アウトプット方法について書こうと思ったきっかけは何かあるのでしょうか?  映画について質の高い発信が増えれば、結果として映画作品の質も上がっていくと考えたからです。  自分が見た映画について言語化することで鑑賞者自身の映画体験も深めることができるし、そうした感想が結果として映画文化の発展に貢献していくのではないかと。それが僕のイメージする健全な文化のあり方でした。とはいえ変に肩肘を張る必要はなく、気軽に取り組んでいただきたいと思います。SNSで発信しなくても、家族や友人に感想を伝えることも有効です。 ——監督が描きたいものと観客が観たいものとの間に差があってそれが批判につながることについてどう思われますか? 最近ですと「マトリックス レザレクションズ」(ラナ・ウォシャウスキー監督、2021年)でそれを強く感じました。人気作品の続編や漫画原作の実写化でも見かけます。  そういうことはこれからも起こり続けるでしょうね。僕個人としてはそれでいいと思っています。観客には自由に作品を批判する権利があるし、その反応を次の作品に反映するかどうかは作り手側の判断次第でしょう。賛否両論がある状態をストレスに感じる方もいらっしゃることでしょうけれど、文化的には健全な状態だと思います。 ——本書の、他の本にはない新しい点や工夫した点は何かあるでしょうか?  「ビジネス書」として出した点ですね。  これまで映画批評や映画評論に馴染みのなかった方にも興味を持ってもらえるように、そして気軽に手に取ってもらえるように意識しました。専門的な知識がなくても問題なく読めるように噛み砕いて説明しつつ、それでいて議論の質は落とさないように心がけて書きました。 ——執筆するにあたって刺激を受けたものはありますか?  大学院の修士課程在籍時の指導教員である加藤幹郎先生からは多大な影響を受けています。第六講(ヒッチコック)では加藤先生の議論を直接参照していますが、それ以外のパートにも加藤先生の教えが反映されていると思います。 ——これからの活動予定は?  ありがたいことに連載や次の本の企画が進行しています。いずれも広い意味で映画の見方について書くことになると思います。また、各種のイベントにも登壇していますので、ご縁があればぜひ。 ——今後執筆予定のテーマは?  映画の見方についてさらに踏み込んだ内容の本を書きたいと思っています。また、今回の本で取り上げられなかったテーマを盛り込んだ日本映画の通史的な本をいつか書いてみたいと思います。おそらくそれはずっと先のことになるでしょうけれど。 ——伊藤さんの映画解説はとてもわかりやすく、注目すべきポイントを知ることができ、映画を見る楽しさが増しました。次の本にも期待しています! 本日はありがとうございました。 (了)

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さんの書評2022/02/11

「教養(インテリ)悪口本」著者の堀元見(ほりもとけん)さんにお話をきいてみる

「教養(インテリ)悪口本」著者の堀元見(ほりもとけん)さんにお話をききます。 ——よろしくお願いいたします。早速ですが、今回の著書を紹介お願いします。 【堀元さん】  今回出版したのは「教養(インテリ)悪口本」という本でして、先日2021年12月22日に初版が出ました。色々な学問のちょっと面白い知識を使って、テクニカルに人をバカにする「インテリ悪口」を37個紹介しています。  インターネットには「こいつ無能。死ね」といった知性もユーモアも宿っていない悪口が氾濫していますが、それを見て楽しいと思う人はいません。  そんな時に「無能だ」と言う代わりに「植物だったらゲノム解析されてそう」と言うとちょっと面白いし「どういうこと?」と知的好奇心が湧きますよね、と。そんな感じのジョーク本です。 ——特にどのような読者に読んで欲しい本ですか?  おもしろ雑学が好きで、ちょっと底意地が悪い人です(狭い!)。 ——私も非常に楽しく読ませてもらったのですが、確かに自分も底意地が悪いところがありますね(笑)。堀元さんがこの本で一番伝えたかった事は何ですか?  抽象的な話になってしまいますが、「知識を無駄遣いしてふざける楽しさ」ですね。僕はここ数年「勉強して得た知識を無駄遣いしてふざける」というコンセプトでコンテンツを作って生活しておりまして、消費者としても作り手としてもそういうコンテンツが好きです。  たとえば、今回の本で言うと「まるでギムワリをやっているようだ」という悪口を紹介した章があります。  これは、フランスの文化人類学者マルセル・モースの『贈与論』(岩波文庫、ちくま学芸文庫など)という古典的名著を読んでいたときに出てきたフレーズです。つまり、めちゃくちゃマジメな本のめちゃくちゃマジメな知識なんですが、僕はふざけた視点でいつも本を読んでいるので、「これ、割り勘が細かい人に対して悪口として使えるなぁ」などと考えるワケです。  そうすると、学者の「堅くて、やや読みにくい文章」が、急に身近で愉快なものに思えている。マジメなものにふざけて向き合うと楽しいんです。  そういう喜びが伝わるといいなと思って書いた本ですね。「これ悪口に使えそう」みたいなふざけたノリで古典を読む人が増えるといいなと思っています。 ——本書を読み進めていると、堀元さんが古典的名著を含むさまざまな本を新しい角度で読み解いて楽しんでらっしゃる様子が伝わります。最終的に悪口に変換されるわけですが、悪口といいつつも読書で得られた知恵を現代の自分たちに当てはめるひとつの例を見せられているような気分です。とても独創的な切り口でこれまでに見たことがないものだなと思いました。この本を書くきっかけってなんだったのでしょう?  もう2年以上、「しょうもない人をインテリ悪口でバカにする」がメインコンテンツの有料マガジンをnoteで書いておりまして、結構人気を博してそれだけで生計を立てられるようになりました。  で、知り合いの編集者に「これ本になりそうだから企画書にして送ってよ」と言われて、送ったらなんだかんだで本になりましたね。全て成り行きで生きてます。高校生の頃は「人の心に温かく染み入る青春小説」とかを書く作家になりたかったのですが……。 ——堀元さんが今一番興味を持っていることは何ですか?  「学問知識をエンタメ化する」です。「ためになるから」とか「必要だから」という以上に、「面白いから」という理由で色んなジャンルに首を突っ込んで勉強する人が増えるといいなと思ってます。皆の知的好奇心を暴走させたい。  僕は「ゆる言語学ラジオ」というYouTubeチャンネルをやっているのですが、その視聴者はかなりの頻度で我々のチャンネルから言語学の小難しい本を買ってくれています。そういう形で、皆が学問を面白がる入り口になれたらいいなと。  「教養悪口本」でも、「社会理論と社会構造」(ロバート・K. マートン著)というかなり分厚い骨太な社会学の本を参考文献にしているのですが、僕の文章をきっかけにこれを読み始めたという報告を何人かからいただいており、嬉しい限りですね。 ——次に書きたい本はどんな本ですか?  今回の本を担当してくれた光文社の編集者と「次出しましょう」と話しているのは、「教養(インテリ)言い訳本」または「教養(インテリ)開き直り本」みたいなヤツですね。  あと、既に決まっていて書き始めているのが徳間書店から出る「ビジネス書って同じことばっかり書いてない?100冊読んで検証してみた」みたいな本です。  僕は軽薄なビジネス書があんまり好きではないので、それをうっすら茶化したいと思ってます。  今までの話とも繋がりますが、僕はちゃんとした学問の知識が好きなので、「どうせならビジネス書じゃなくて古典とか学者が書いた骨太な本とかを読もうぜ」という心情があります。そんな心情をうっすら伝える本にできたらなと。 ——ブログでも話題にされていたビジネス書の話の書籍化が進んでいるんですね、それは楽しみです。本日はありがとうございました! (了)

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さんの書評2022/02/10

『小さい会社のウェブマーケティング必勝法』著者の森野誠之さんにお話をきいてみる

『小さい会社のウェブマーケティング必勝法』著者の森野誠之さんにお話をききました。 (ききて:深水英一郎) ——よろしくお願いします。さて今回の著書、どのような内容のものでしょうか? 【森野さん】  この本は、大都市圏に所在地がない、社員数が5~50名程度の企業に所属する企業経営者、ホームページ担当者向けに書いたものです。本のタイトルに未経験・低予算・独学とあります。そんな環境でウェブマーケティング、つまりホームページの活用に取り組もうとされている方の最初の一歩として読むべき本、をイメージしています。  世の中に出回っているウェブマーケティング本の多くは東京の企業を対象として書かれていますので、予算規模もやっていることも差がありすぎてピンとこないものになっています。これらを読んでも頭でっかちになってしまって、「だから地方は良くない!」とか、「うちの会社ももっとデジタル化しないと!」とおかしな方向に行ってしまいがちです。どっちが良いとか悪いではなくて、場所や規模にあったやり方があるのですが、それが世の中であまり知られていないのが問題です。 ——確かにウェブマーケティングの本を読んでると、これ小さな会社で全部できるのかなと感じることがあります。「場所や規模にあったやり方がある」というのはおっしゃる通りだと思います。 【森野さん】  私もこうした相談に対応しているうちに、小さな会社のホームページ運用がうまくいかない原因がわかってくるとともに、うまくいくようにする方法もわかってきたんです。今回の本ではそのノウハウをまとめました。  ノウハウといってもSEOのテクニックは書いていませんし、見栄えの良いデザインにする方法も書いていませんし、クリックされるボタンについても書いてません。担当者の育成方法、社内基盤の整え方、外部パートナーの探し方、コンテンツの更新方法など、個人ではなくて組織として行うウェブマーケティングの方法を書いています。この点だけは先にお伝えしておきたいです。 ——なるほど、地方の小さな会社が、組織でおこなうウェブマーケティングのノウハウがまとまっているということですね。 【森野さん】  文章も可能な限り専門用語を使わないようにしていて、巻末に用語集もつけています。本だけではカバーしきれない情報源や参考図書もジャンルごとに紹介しています。 ——参考になる書籍やサイトの情報も多数掲載されており、はじめての人にとっては重宝しますね。個人的には森野さんの語り口も面白く、時々クスッと笑ってしまいます。 【森野さん】  ところどころで毒を吐いているというか、直球でズバッと書いている部分もあるのでそのあたりで共感してもらえるかなと思います。用語集は小ネタを盛り込んであるのでくすっと笑えるものになっているはずです。  よくわからないITの本というよりは、地方のおじさんがオヤジギャグを散りばめながらウェブマーケティングについて説明している、面倒くさい本だと思っていただければいいかなと思います(笑)。 ■ 外部パートナーも含めてひとつのチーム ——筆者として、特にここは読んで欲しいという部分はありますか? 【森野さん】  「第4章 ホームページリニューアルをやり切るために(3)  外部パートナーのディレクション」の章です。  小さい会社では自分たちだけで完結することはなくて、外部パートナーの力を借りることになります。多くの場合、失敗したくないために選考に時間をかける傾向にありますが、それではうまくいかないです。バナーデザインやちょっとした文章など、少額の案件を発注して自社との相性を確認し、そこから徐々に広げるとうまくいきます。  「いい業者を紹介してほしい」と言われることも多いですが、見ず知らずの企業を信頼できる人に紹介はできませんので、何事もちょっとした案件からコミュニケーションを始めるのが大切です。 総じて、社外の人に何かを依頼するときは言葉とやりかたを合わせることから始めましょう。 社内で通じる用語が通じないことが多いですし、社外の人が話す専門用語がわからないということもあると思います。相手の言っていることをお互いが理解できるようになって、稼働している時間やチャットが良いのか、電話が良いのかなどの仕事の進めかたも理解し、はじめて良い結果が得られます。協力して良いものを作り上げるという気持ちを忘れずに。  127ページにこう書きました。お金を払っているからやらせるのが当然だと思ったらうまくいきません。かかわる人たちが気分よく動いてくれれば自分の仕事も減りますし、いい結果が出ます。チームとして良いものを作ることを考えてほしいですね。 ——小さい会社のウェブ担当って、どういう人が向いているんでしょうか。 【森野さん】  自分で考えて動くことができる人→文章を書くのがうまい人→粘り強く継続してくれる人の順です。  小さい会社ではウェブマーケティングのことを知っている人は社内にいないはずなので、わからないことを一つずつ解決していく必要があります。難しいからあきらめてしまう人には向いていません。  ウェブマーケティングはブログやメルマガを書いたりSNSに投稿する必要がありますので、文章を書くのが上手い人がいるとスムーズに進みます。もちろん、日ごろは他の仕事をしていて文章だけうまい人にお願いするのもありです。  パソコンが使えるとかネットに詳しいなどはあまり関係ありません。むしろ中途半端に知っているとそれが邪魔する場合もあります。パソコンに詳しいから任命されて根性で乗り切った人もまれにいますが、それはその人の頑張りでしかないで適任かと言われるとやはり違うとなりますね。 ■ さらなる学びのために ——本書を読んだ読者がさらに一歩進むための情報源やコミュニティはあるでしょうか。 【森野さん】  情報源に関しては、本の60ページから参考サイト・書籍を紹介していますのでここを読んでいただけるといいですね。これらを追いかけるのが面倒だという人は、私が発行している「毎日堂」というメルマガを読んでいただけるとよいと思います。SEOなどの10のジャンルのニュースが平日の毎朝7時に届きます。500円/月なので新入社員の方でも読んでいただけます。  コミュニティはコロナの影響で活動が止まっているところが多くなってしまいました。前述の書籍の著者やサイト運営者のTwitterをフォローしておくのが良いと思います。これらの人のツイートややり取りが参考になりますし、セミナー登壇情報も流れてきますので、参加して質問などすると徐々に仲良くなれるはずです。 ——次に書きたい本はどんなテーマの本ですか? 【森野さん】  サッカーの分析から考えるウェブサイトの分析、名将の名言から学ぶウェブマーケティング、など自分の趣味と仕事を掛け合わせたようなテーマの本を書きたいです。サッカーや歴史などに興味がある人向けにウェブマーケティングの入り口になるといいなと思ってますが、1文字も書いていないですし発刊してくれる出版社もないと思います(笑)。 ——今後どんなことをやっていきたいですか? 【森野さん】  業種業界を問わず実際に小さい会社のウェブマーケティングにもっと関わっていきたいと思っています。前述のようにスポーツや歴史が好きなのでサッカークラブとか歴史研究会などのウェブマーケティングができるといいですね。本を読んだだけではわからないこともあるはずなので、本の内容に沿って実際にサポートしていきたいと思います。 ——本日はありがとうございました! (インタビュー了)

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