サラリーマン@Yoga好き❤️さんの書評 2025/10/29
この本はpivotで紹介されていたため、手に取ってみた。 本書の構成については、前半ではメガプラットフォーム(活動や取引などを行うための基盤的仕組み。ここではデジタルプラットフォームを指す)が、果たして大衆支配に取って代わる存在となるのか、またメガプラットフォームの代表的な病理とも言える「嘘」「陰謀論」「フェイク」と私たちはどのように関わるべきかについて論じられていた。 一方で、後半では現行の政治制度の現状とその未来への展望が中心となっており、メガプラットフォームとの直接的な関連性については深く触れられていなかった。 前半の内容で印象的だったのは、民意を選挙だけでなくSNSやデジタルデバイスからも汲み取り、それらをビッグデータとして解析し、政策立案や意思決定をアルゴリズムに委ねるという「アルゴグラシー」という考え方である。 非常にユニークで魅力的な概念だと感じる一方で、そのような仕組みが進むと最終的には人々の生活や心理が丸裸にされ、個人情報が悪用される危険性もあるのではないかと感じた(たとえば、オレオレ詐欺が標的を絞り込む際のデータとして悪用されるなど)。 したがって、このような技術の進展に対しては、適切な法的整備が不可欠だと感じた。 後半を読むと、前半で論じられた「人が主権を持つアルゴグラシーのもとで、法律や憲法をどのように柔軟に変えていくべきか」という問題提起が背景にあるように思えた。 その観点から紹介されていたアイルランドの憲法改正制度は非常に興味深く、国民投票による憲法改正が議会の過半数の賛成によって次の段階に進められるという点で柔軟であり、また国民から無作為に抽出されたメンバーによって構成される「憲法会議」で熟議を行う仕組みも、偏りのない意見を集約する上で意義深いと感じた。 ただし著者は、このアイルランドの方式はまだ発展途上であり、日本にそのまま適用できるかどうかについては今後の検討が必要であると述べていた。 全体的な感想としては、専門用語が多く登場するため、理解しながら読み進めるには労力を要した。 そのため、ChatGPTなどのツールを活用しながら一つ一つの概念を調べていくことをおすすめしたい。 また、政治体制の将来像として「肉体を単位とする民主政」「身体を単位とする民主政」「肉体・身体を単位としない民主政」という三つのタイプに分かれると論じられていたが、とくに「身体を単位とする民主政」については、本書を通読してもイメージがつかみにくかった。 一見すると簡単な言葉であっても、深い理解を要する箇所が多い本である。 とはいえ、AIをはじめとするデジタル技術が今後さらに発展していくなかで、政治のあり方もそれに合わせて進化していく必要があるという点は、本書を通じて得られた最も大きな学びであった
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