さんの書評2022/02/24

『教養としての映画』著者の伊藤弘了さんに きいてみる

『教養としての映画』著者の伊藤弘了さんに話をききました。 ききて・深水英一郎 ——本日はよろしくお願いいたします。本書を執筆するきっかけは何だったのでしょう? 【伊藤さん】  かねてより映画研究者=批評家として自分が身につけてきた知見を世の中に還元したいという思いを抱いていました。そんなときに折よく映画の見方についての連載と書籍化のお話をいただきました。  この本で一番お伝えしたかったのは、映画を意識的に見ることでその楽しみはいっそう大きくなり、世界が広がるということです。 ——ひとことで説明するなら、何の本ということになるでしょうか。  映画の入門書ですね。普段の映画鑑賞がより楽しくなるように、映画の歴史や鑑賞のポイント、鑑賞後のアウトプット術などを紹介した本、ということになります。  まずは「トイ・ストーリー」の見方について説明しているプロローグを読んでいただいて、本書のスタンスがご自分に合うかどうか確かめてみて欲しいです。 ——私はプロローグを読んで、映画についてもっと知りたい! と思いました。  この本の構成について簡単に説明しますと、まず第一講では映画の効用(映画を見るとどんないいことがあるか)、第二講では主に映画の歴史を紹介し、第三講以降で具体的な映画作品を分析しています。  黒澤明や小津安二郎、アルフレッド・ヒッチコックなどの古典期の監督の作品にくわえて、是枝裕和の「海街diary」(2015年)やクイーンの伝記映画「ボヘミアン・ラプソディ」(2018年)といった近年の話題作も取り上げています。最終講では映画を見たあとのアウトプット術について、具体例を交えながら紹介しました。 ——最終章で、感想や批評のアウトプット術、特にTwitterを使った書き方について述べておられて非常に面白かったです。誰でも発信者になれる時代であり、そのレベルも上がっていますが、映画の感想って、ちょっとむずかしいと考えている人も多いと思うんです。アウトプット方法について書こうと思ったきっかけは何かあるのでしょうか?  映画について質の高い発信が増えれば、結果として映画作品の質も上がっていくと考えたからです。  自分が見た映画について言語化することで鑑賞者自身の映画体験も深めることができるし、そうした感想が結果として映画文化の発展に貢献していくのではないかと。それが僕のイメージする健全な文化のあり方でした。とはいえ変に肩肘を張る必要はなく、気軽に取り組んでいただきたいと思います。SNSで発信しなくても、家族や友人に感想を伝えることも有効です。 ——監督が描きたいものと観客が観たいものとの間に差があってそれが批判につながることについてどう思われますか? 最近ですと「マトリックス レザレクションズ」(ラナ・ウォシャウスキー監督、2021年)でそれを強く感じました。人気作品の続編や漫画原作の実写化でも見かけます。  そういうことはこれからも起こり続けるでしょうね。僕個人としてはそれでいいと思っています。観客には自由に作品を批判する権利があるし、その反応を次の作品に反映するかどうかは作り手側の判断次第でしょう。賛否両論がある状態をストレスに感じる方もいらっしゃることでしょうけれど、文化的には健全な状態だと思います。 ——本書の、他の本にはない新しい点や工夫した点は何かあるでしょうか?  「ビジネス書」として出した点ですね。  これまで映画批評や映画評論に馴染みのなかった方にも興味を持ってもらえるように、そして気軽に手に取ってもらえるように意識しました。専門的な知識がなくても問題なく読めるように噛み砕いて説明しつつ、それでいて議論の質は落とさないように心がけて書きました。 ——執筆するにあたって刺激を受けたものはありますか?  大学院の修士課程在籍時の指導教員である加藤幹郎先生からは多大な影響を受けています。第六講(ヒッチコック)では加藤先生の議論を直接参照していますが、それ以外のパートにも加藤先生の教えが反映されていると思います。 ——これからの活動予定は?  ありがたいことに連載や次の本の企画が進行しています。いずれも広い意味で映画の見方について書くことになると思います。また、各種のイベントにも登壇していますので、ご縁があればぜひ。 ——今後執筆予定のテーマは?  映画の見方についてさらに踏み込んだ内容の本を書きたいと思っています。また、今回の本で取り上げられなかったテーマを盛り込んだ日本映画の通史的な本をいつか書いてみたいと思います。おそらくそれはずっと先のことになるでしょうけれど。 ——伊藤さんの映画解説はとてもわかりやすく、注目すべきポイントを知ることができ、映画を見る楽しさが増しました。次の本にも期待しています! 本日はありがとうございました。 (了)

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