さんの書評2022/03/11

著者のバーチャル美少女ねむさんにきいてみる

発売前にあらかじめ原稿を読ませていただいた上で『メタバース進化論』著者のバーチャル美少女ねむさんにお話をききました。 ききて:深水英一郎 ──ねむさん、よろしくおねがいします。『メタバース進化論』はどんな本なのか教えてください。 【バーチャル美少女ねむ】  よろしくお願いします。この本は、メタバースに興味を持った幅広い読者の方を対象に、現在のメタバースの真の姿、そしてその革命性をわかりやすく伝える「メタバース解説書の決定版」を目指して執筆しました。 メタバースの原住民である私の実地調査と、1200人の原住民を調査したアンケート結果を基に、かつてないメタバースの「リアル」をお届けします。 ──ねむさんとしては、本書のどこに注目して欲しいですか?  ブーム以来、投資目線でメタバースが注目されて、様々な思惑や情報が飛び交っています。しかし、実際にそこで人生を送っている私たち「メタバース原住民」からすると、それらの情報は実態とあまりにもかけ離れています。 本書の前半1~3章では、メタバースとはなんなのか? 馴染みのない方にもわかりやすいように、その真の姿を説明します。後半は、メタバースのもたらす革命性を順を追って解説します。 メタバースを体験したことのない方に特に注目してほしいのは4章「アイデンティティのコスプレ」です。 メタバースで、現実とは違う「なりたい自分になれる」とは一体どんなことなのか? どんな革命を我々人類にもたらすのか? 読者の方が自分自身をどうデザインして生きていきたいか、考えるきっかけになればと思います。 ──世間では、メタバースにVRゴーグルが必須なのかどうかについて、まだ定義が揺れているように感じます(「アクセス性」の話との矛盾など)。ねむさんはどう思いますか?  世間的にそこは大きく揺れていますね。 本書の定義では手段のひとつとして「VRによる没入手段が用意されていること」を不可欠な要素としています。 スマホやPCなど必要に応じていろんな手段でメタバースに入ることができるにせよ、親密なコミュニケーションをしたり、じっくりメタバースを楽しみたいような局面ではVRでメタバースに入って没入体験ができる、ということです。 そうでなければ、人生を代替できるような充実感のある体験になりえないと私は考えています。 ——ちょっと確認しておきたい点があるんですが…。今メタバースに住んでいる人たちはこの物理世界はもはやどうでもよくて、メタバースに行ったっきりでもよい、という感覚なのでしょうか?  それについては、必ずしもそうではないと思います。私自身の感覚としては、メタバースでの人生が充実することで、物理現実の人生も豊かになっていきます。  例えば、物理現実では出来ないこと、やってみたいことに、メタバースなら挑戦できるという事はあると思います。  私の場合は「美少女アイドルとして活動する」がそれにあたります。また、物理現実とは一線をおいた世界だからこそ、自由に色んなことを周りの友人に相談できたりする側面もあります。  物理現実とメタバースをいったりきたりすることで、色んな「自分」を切り替えることができます。そのことにより、物理現実も含めて人生がより立体的になり、充実したものになっていくのではないかと私は考えています。 ——メタバースで生活するという感覚に乗っかれる人は今後どれくらい出てくるのでしょう?  現在メタバースで生活している人は、特定の目的(技術やコミュニティへの興味など)があったり、特別な事情(心身の性別の不一致とか)があったりという場合がほとんどです。  そうではない普通の人が使い始めるポイントは、メタバース内で本格的な経済が回り始めた瞬間になると思います。  本書で解説したとおり、現在のメタバースの経済性は試行段階で、それにはもう数年~十数年の時を要するでしょう。しかし、ひとたびそのポイントをすぎれば、一般の人にもメタバースに入る強い動機が生まれます。現在誰もがスマートフォンを持っているように、誰でも当たり前に人生の一部をメタバースで送るようになるでしょう。 ——となると将来は、現実世界を意識せずに生活していくことが可能になったりするのでしょうか。  現在の技術はVRゴーグルでメタバースに入るのが精一杯なので、当分は難しいでしょう。しかし、BMI(脳・コンピューター間インターフェース)が将来的に実用化されると、究極的には全感覚でメタバースに没入し、物理現実を全く意識しないでそこで生きていくことができるようになります。  ただし、技術的な壁は大きく、私たちが生きている間には民生レベルで実用化されることはないでしょう。その辺りも本書で詳しく解説しています。 ——メタバースが理想を実現する世界なのだとしたらそこで生活している人たちから見ると、現実世界はどういう風に見えるのでしょうか?  メタバースに一度慣れてしまうと、移動の不便や姿の不自由さなどの理不尽が多く、物理現実はとても不自由なものに感じられます。ただし、やはり現時点ではVRゴーグルを通したものなので、メタバースに365時間24時間没入するのは不可能ですし、ご飯の美味しさや触覚の臨場感は物理現実の方が上回っています。双方を簡単に行ったり来たりできるのがメタバースのいいところだと思うので、両方のメリットを使い分けていくのが今後の人類のスタイルになっていくのかな、と私は考えています。 ——メタバースが何を達成したら人類の進化といえるんでしょう?  本書で紹介したような「メタバース原住民」の生活・文化・可能性を見る限り、もはやそれは現生人類のスタイルからは大きく逸脱しています。私は、すでに進化は始まっていると考えています。生まれたままの肉体から解放された、「アバター」という新しい身体。それで生活する人類はもはや新たな人類である、と言えるのではないでしょうか。 ——ソーシャルVR国勢調査によれば、メタバースで恋に落ちたことのある人の割合は40%とのことです。そして30%はVR内で恋人ができたことがある。一方、物理世界でのマクロミルの調査によると、いわゆるマッチングアプリでの成功率は約40%(※)。単純な比較はできないと思いますが、それにしてもなかなかすごい数字だと思います。メタバースには恋に落ちやすい要素があるのでしょうか。(※=マクロミル2018年5月15日発表データより)  物理現実だと、年齢・性別・立場の壁があって、だれとでもすぐに仲良くなるのは難しいのではないでしょうか。メタバースではそういった壁が取り払われて、心の距離が近づきやすくなることはデータにもはっきりと現れています。  特に、恋に関しては物理現実と違い、性別の垣根が取り払われる傾向があるのがメタバースでの恋の特性です。そういった要素が、メタバースで恋に落ちることを促しているというのは考えられると思います。 ——人が操作するアバターとNPCの区別がつかなくなる未来は訪れるでしょうか? そうなったら、ねむさんは恋愛相手がAIでも良い?  そんなことは絶対ないと思います。2000年代初頭からの第三次AIブーム(機械学習)で明らかになったのは結局「我々人類の知性の深淵は予想以上に深かった」「AI=人工の『知性』は現在の人類では全く作ることができなかった」ということです。現在「AI」と呼ばれているものは、本来の意味での知性でもなんでも無く、AI研究の結果うまれた機械学習による効率化技術に過ぎません。  一方でメタバースは、言ってしまえば、機械学習による「効率化」とは真逆の技術です。人間らしい非効率的なコミュニケーションをオンラインで行うことができる、という所にメタバースの価値の本質があります。機械学習によりさまざまなことが自動化できるようになったからこそ、自動化できない非効率性・アート性の価値が高まっています。それをオンラインで加速させるための技術こそがメタバースなのです。 ──ねむさんの今後の活動予定について教えてください。 バーチャル美少女ねむ 思いついたことはすぐやる! が信条なので、基本的にすぐに思いつくことはやってしまった後なので、今後の予定は一切ありません。 メタバースの世界は進化が早すぎて明日の予想など誰にもできません。これからも常に新しいこと、昨日の自分が予想できなかったことがメタバースで生まれ続けていくでしょう。これからもそれに挑戦し続けていきたいです。 ──本日はありがとうございました! (了)

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