紹介
▼遺作
20世紀の偉大な歴史家、ホブズボーム。
資本主義社会の矛盾に鋭い眼を向け、
社会変革の可能性を生涯追い続けた彼は、
最期、私たちに、いかなる言葉を遺したのか
本書は、1964年から逝去する2012年までの約50年の間におこなわれた講演原稿をもとに、ホブズボーム自身が手に入れ、1冊に編みこんだ遺作である。
ホブズボームは、歴史家として、これまでも社会的現実と芸術の間に横たわる奇妙な絡まりについて筆をとってきたが、本書では、特に彼自身の文化的背景となっている中央ヨーロッパのドイツ語圏をとりあげ、19世紀に勃興した資本主義産業化のもとで生まれた「ブルジョワ(高級)」な社会と芸術が、第1次世界大戦を契機として、いかに破壊されていったかを述べる。ブルジョワ「近代」の価値観とはなんだったのか、それに絡みつく「芸術」の概念はどのように変容したのか。
「二重革命の時代」「資本の時代」「帝国の時代」「極端な時代」、そして、破断の時代――。
ホブズボームが、最後に読者に伝えたかった「20世紀」とは何か。
目次
謝辞
序文
第1章 マニフェスト
第1部 「高級文化」窮状の今
第2章 芸術はどこへ行く?
第3章 文化共生の世紀?
第4章 なぜ21世紀にフェスティヴァルを開催するのか
第5章 新世紀の政治と文化
第2部 ブルジョア世界の文化
第6章 啓蒙と成果 ―― 1800年以降のユダヤ人才能の解放
第7章 ユダヤ人とドイツ
第8章 中欧の運命
第9章 ヨーロッパ・ブルジョワ社会の文化とジェンダー ―― 1870
年~1914年
第10章 アール・ヌーヴォー
第11章 人類最期の日々
第12章 ヘリテージ
第3部 不確実性、科学、宗教
第13章 未来への不安
第14章 科学 ―― 社会的機能と世界の変容
第15章 フリジア帽をかぶったマンダリン ―― ジョゼフ・ニーダム
第16章 知識人たち ―― その役割、機能とパラドックス
第17章 民衆宗教の将来
第18章 アートと革命
第19章 芸術と権力
第20章 アヴァンギャルドの失敗
第4部 芸術から神話へ
第21章 ポンと飛び出す芸術家 ―― ポップ化する芸術家、爆発する
文化
第22章 アメリカン・カウボーイ ―― 国際的な神話?
訳者あとがき
索引