目次
刊行に寄せて 女子大学と女性教育の未来[森田勝昭]
序論 本気で女性を応援する女子大学の探求[野崎志帆]
Ⅰ 甲南女子大学の女性教育のこれまでと今
1 甲南女子大学の歩み[米田明美]
2 女性教育カリキュラムの意義と可能性[野崎志帆]
3 図書館における女性教育の展開[中岡妙子]
4 保健センターの取り組み――女子学生のからだとこころの健康への支援[八木麻理子]
5 リーダーシップ教育[佐伯勇]
6 キャリア支援体制[前川幸子]
7 女性教育プロジェクト――女子大学の存在意義への問いかけと対話の軌跡[野崎志帆・ウォント盛香織]
Ⅱ 各学問領域における女性教育
〈女性教育と人文科学〉
1 日本古典文学の中の女性――『無名草子』作者の叫び:「女ばかり口惜しきものなし」[米田明美]
2 日本語教育は日本社会を変える!をめざして[和田綾子]
3 女性写真家とセルフ・ポートレイト[馬場伸彦]
4 マンガが示す多様な生き方のモデル[増田のぞみ]
5 北米先住民女性の役割と「力」に学ぶ――過去から現在まで[岩﨑佳孝]
6 文学に広がる女性の多様な生き方――アジア系アメリカ文学を例に[ウォント盛香織]
〈女性教育と社会科学〉
1 コロナ禍の授業を通して女性に関わる課題と未来を考える――SDGsの視点から[髙橋真央]
2 女性と持続可能な自然資源の利用――フィリピンに暮らす女性と水産資源との関わりから考える[瀬木志央]
3 「賢く生きる」の心理学的考察[山田尚子]
4 自由な女性であるために――共通科目「女子学」のねらい[池田太臣]
5 環境に配慮した暮らし[中野加都子]
6 企業と女性問題、さぁ、どうする?――わが国の企業におけるジェンダーに関する課題とその対応について[森本真理]
〈女性教育と保健医療科学〉
1 性の多様性の観点から学生が考える女子大学のあり方[川村千恵子]
2 世界にひろがる母子健康手帳――女性と子どものいのちと健康をまもる[中村安秀]
3 女性教育と理学療法[川村博文]
4 産後女性の体のケア[山本綾子]
5 生物学的・栄養学的な性差を理解してジェンダー平等の女性教育を考える[天野信子]
シンポジウム報告 甲南女子大学のこれから
本気で女性を応援する女子大学に向けて[ウォント盛香織・野崎志帆・前川幸子・米田明美]
あとがき
前書きなど
序論 本気で女性を応援する女子大学の探求[野崎志帆]
(…前略…)
6.そして甲南女子大学は?――はじまった教職員のチャレンジ
さて、私たち甲南女子大学を運営する甲南女子学園は、2020年に100周年を迎えました。本学もまた、これまでの伝統を踏まえつつ、女性が長い人生をどのように生きていくのかを想像し、今の時代に合った女子大学のあり方、女性教育のあり方を改めて検討する必要があります。女性教育とは、単に教育の対象が「女性だけ」であることを意味しているのでしょうか。なぜ、甲南女子大学はわざわざ「女性だけを集めて教育する」のでしょうか。「なぜか女性しかいない大学」になるのか、「本気で女性を応援する“女性のための女子大学”」になるのか。100周年を経た今、私たちはその分岐点にいます。
本学がこの命題にどのように応答するのか、今なお探求のただ中にあります。そこで本書は、女子大学としてのアイデンティティを明確にし、生き残る価値のある女子大学となるべく、本学の教職員有志が女性という記号をもつ学生と改めて向き合い、それぞれの持ち場で女子大学の存在意義、女性教育の取り組み、自身の専門領域と女性や女性教育との関わりについて探求し、「本気で女性を応援する女子大学」に向けて格闘する一端を示すものです。
本書は三つのパートで構成されています。第Ⅰ部では、「甲南女子大学の女性教育のこれまでと今」を、歴史、カリキュラム、図書館、学生生活支援、リーダーシップ教育、キャリア支援、教職員有志のプロジェクトといった全学的な取り組みから捉えます。第Ⅱ部では「各学問領域における女性教育」として、人文科学、社会科学、保健医療科学分野における多彩な専門性をもつ本学の教員による、女性および女性教育についての論考を紹介します。そして最後にシンポジウム報告「甲南女子大学のこれから」では、2021年2月に開催したシンポジウムでのトークセッション「本気で女性を応援する女子大学に向けて」の記録を掲載しています。
本書は、本学に関係する方々はもちろんのこと、教育に携わる全ての人と女性教育について語り、「本気で女性を応援する女子大学」に向けたダイアローグを続けるための試みの一つです。そして、私たちの格闘と情熱が、これを読む「女性という記号」をもつ高校生や学生の皆さんにとって、自分らしく豊かな人生を生きるための、小さな後押しになればと心から願っています。