紹介
著者の森田要氏は、ヘアカラーやパーマを施術する美容師として10年を過ごし、その後、カットとヘナ専門の美容師として、南青山で30年美容院を続けている。カットとヘナ専門の美容師としてスタートするきっかけは、ヘアカラーやパーマを頻繁に行うお客様の髪の傷みを止めることができなかったこと、調べてみると、ヘアカラーやパーマ剤が体と環境に大きな負担になることを知ったことによる。
美容師として40年、森田氏がさまざまな体験と学びから得たことは、美髪を続けるためのヘアケアはシンプルであること。体にも髪にも優しい洗髪を行うこと。個性が光る魅力的な髪型は、その人が生まれ持った髪の特徴を生かすこと。傷んだ髪からの回復にはヘナの力を借りること。白髪染めは、ヘナやそのほかのハーブで行うこと。髪を「壊す、修復する」を繰り返している、現在の美容業界の経済の回し方を変えること。
この結論に至るまでの森田氏の美容師として、化粧品販売会社代表としての歩みとともに、美しい髪を続けるために大切なことは何かを1冊の本に綴る。
目次
美髪再生への道
再生へのヴィジョン
再生への方法と手順
再生にかけるお金と時間
美髪再生の完了
はじめに
第一部 常識という落とし穴
第一章「美しい髪」を渡しに東へ西へ
100%植物ヘナは白髪を黒には染めない
――正しい情報を伝えたい
キリンで生まれたのに、なぜシマウマに
――ヘアカラー愛好者の不可解な行動
「脱色したことはない」と答えるヘアカラー経験者
――美容師は施術についての説明が足りない
アイビーの茎をもっとくるくるさせる、反対にすべて伸ばす
――パーマで作る髪の不自然さ
自然のままの髪は、生命力にあふれている
――化学物質の薬剤でエネルギーは枯渇する
「沁みましたら、おっしゃってください」は どこまで我慢すればいいのか
――重篤なアレルギー症状を起こす危険あり
18〜 85歳までにかかる美容院代は1000万円 !?
――もっと有意義なお金の使い方があるはず
美しい髪を渡す美容師が信頼を得る
――施術を増やして利益を出す美容院は行き詰まる
髪の栄養はトリートメントではなく食事から
――無農薬野菜を食べて、ヘアカラーをする矛盾
洗浄力や保湿力の高いシャンプー剤が、 頭皮のバランスを崩す
――洗髪方法を見直す
7年間、髪を切らなければ自然に美しい髪がそろう
――女性の髪がすべて生え変わるには時間が必要
傷んだ髪をヘナでコーティング
――地肌を整えながら、新生毛が伸びるのを待つ
<コラム>薬剤師として思うこと――森田さんのワークショップに参加して
第二章 美しい髪とそれを壊すもの
生まれ持った髪は個性が光り、美しい
――頭髪のトラブルは美容業界が引き起こす?
外部からの衝撃を防ぎ、体内から重金属などを排出する
――頭髪の役割は多岐にわたる
80〜90%はたんぱく質。毛細血管が運んでくる栄養で成長
――髪の構造を知る
パーマ剤の成分は、脱毛剤にも使われている
――髪が薄くなるきっかけにもなる
化学物質によるヘアカラーは、メラニン色素を壊す
――白髪が増える原因に
化粧品扱いのマニキュアは、脱色せずに表面をコーティング
――成分のタール系色素に問題あり
トリートメントはダメージをさらに広げる
――頭皮の環境を壊す
化学物質による白髪染めは美容院にとって大黒柱
――薄毛、そしてかつらへの第一歩
体の不調をも引き起こすヘアカラーとパーマ
――経皮吸収の事実が明らかに
第三章 負のサイクルで経済を回す美容業界
美容院は全国25万店舗(2019年現在)
――コンビニエンスストアの約5倍
パーマとヘアカラーは同じ日に施術してはいけない
――正しい説明を受けたことはありますか?
化学物質のヘアカラーやパーマ剤は環境破壊にもつながる
――気軽に下水に流していいものではない
負の連鎖を断つために化学物質の ヘアカラーやパーマをしない選択
――一時的に収入は減るが、道は必ず開ける
薬剤の犠牲になり、職を離れる決断を迫られた美容師
――ある女性美容師がヘナ専門美容師として再スタートするまで
第二部 クライアントは髪である
第一章 美容室kamidokoの日常
傷んだ髪から3年計画で美しい髪を取り戻す
――ヘナの力を使って
月に1度カットをしなければと思い込む必要はない
――きれいな髪の人に伝えること
髪のコンプレックスこそが、実はその人の魅力を作り出す
――個性を尊び、輝かせる
はさみを大切にする美容師は腕がいい
――髪の切り口で手触りは大きく変わる
第二章 ヘナと歩んだ30年
クレオパトラも愛した、古代から使われてきたヘナ
――Hennaとは
高品質といわれるインドのラジャスタン州のヘナ
――ヘアケアで使われているヘナ
トリートメント効果を感じ、世界中から 100種以上のヘナを取り寄せる
――私とヘナとの出会い
経皮吸収による体調不良の新聞記事で、 カットとヘナ専門の美容院を決意
――ヘナの普及に力を入れる
使いやすさを求めたジェル状ヘナの製造中止を決断
――時代の求めるものではなく、安全で有効なヘナを届ける
化学物質入りのヘナが流通し、健康被害が報告される
――日本のヘナ輸入会社の勉強不足も原因
インドで見つけた「人類にとって何が必要か」を考える企業
――持続可能な社会のための活動に重点を置くCNP社
世界に本物を伝え、地域の貧困解消を目指す
――CNP社の会長は薬草栽培の専門家。 栽培方法をしっかり伝える
クリーンルームに最先端機器を完備した工場
――検査室、研究室も充実のCNP社
CNP社製の高品質で安全なヘナを販売開始
――進化し続ける美容関連ハーブ製品
第三章 新発想・粉末ハーブで頭髪を洗い、整える
高い洗浄力と保湿力が、 頭髪に負担をかける
――使用中のシャンプーを見直す
傷んだ髪からの移行期に必要な 植物性合成シャンプー&トリートメント
――ある程度の保湿力が必要な時期
健康な髪は、ハーブで洗って美しい髪を保つ
――人にも環境にも優しい洗髪剤
第三部 未来へ植物の可能性
第一章 植物の力を借りて
手ぬぐい、腰巻の染め。昔から植物に助けられてきた .
――合成染料が日本に入ったのは明治初期
生薬を頭にのせたらどうなるのか、その可能性を知りたい
――頭皮は経皮吸収率が高いことを逆手に取る
ハーブだけの力で体を整える
――全身トリートメントや洗顔料を商品化
第二章 経皮吸収による可能性を知りたい
ハーブの効果についてCNP社とともに実証したい
――人と地球に優しい商品の開発を
前書きなど
はじめに
<前略>
「常識という落とし穴」 これは決まりだから、常識だからといわれていることでも、疑問を抱いた時には、そこに 何か問題が潜んでいる可能性がある。そのまま見過ごしてはいけない、きちんと疑問と向き 合っていこうと、この言葉を見て改めて決意した。
私が専門学校を卒業して美容院に入店した新人の頃、 「先輩の教えに対して疑問を持つな」 と言われて育てられた。疑問を抱くことなく、日々の業務を覚える、美容師としての技術 を鍛えることがよしとされていた時代であった。そんな日々の中で、私は常に疑問や不思議 を抱いていた。
白髪を染める時、全体的に同じ色に染めることが美しさの基本とされていた。色むらがないことが、技術的に素晴らしいものとされていた。ただ、私は80代後半の女性の髪が、一分 の隙もなく真っ黒になることは、逆に不自然に見えると感じていた。そんな疑問を先輩に尋 ねてみたが、頭から否定された。
ある日、 80代後半のお客様にカラー剤を塗る仕事を任された。ついに、やってしまった。 真っ黒な髪の不自然さをなくすために、髪を少しずつ丸く束ねてその上からカラー剤を塗り、 全体的に自然に見える色むらを作ることを勝手に試みてしまった。全体のイメージが、自然 な雰囲気になる、絶対に良くなる。それを実験してみたかった。
染め上がると、先輩から
「何をやっているんだ。もう一回、やり直しじゃないか」
「何を目的にカラー剤を使っているのかわかっているのか。きれいな黒髮を作るためだ」
バックヤードに呼ばれ、叱責を受けた。 ところが逆に、お客様はとても喜んでくれたのだ。その姿に、先輩は何事もなかったよう にお客様を見送った。
「今日も、前回のようによろしくね」
次の来店時も、前回のように染めてほしいとリクエストを受けたのだ。改めて、美容師と いう仕事は、お客様が気づかなかった「美しい」を提供することが、大切な仕事であるのだと 思った。
パーマやカラーリングの技術を覚え、お客様の髪を施術しながら疑問を抱いたことはほか にもある。美しい髪を目指して施術をしているのに、同じお客様が来店するたびに、髪はど んどん傷んでいくのはなぜだろう。トリートメントで修正しようと試みるが、次に来店され た時は、さらに傷んでいる。この方法は正しいのだろうか。
自分の理論を証明するには、詳細な観察データが必要だ。資料を徹底的に調べ、仮説を立て、実験する。疑問を解決するまでの予定や方法の計画を立てる。自分の仮説を証明する 旅には、地図が必要だ。問題解決までの地図を作り、行動する。これが私の始めたことだ。
本当のことを知りたい。
さまざまな疑問の解決を探っていくうちに、一般的に行われているヘアケアでは、美しい 髪を目指すことはできないと確信した。さらに「美しい髪」を守るには、ヘアケアを巡る経済 循環から変える必要があるという考えにも至った。 髪を壊すことなく、自身の持って生まれた美しさを保つ。髪のケアで、美しい髪と健康を 損なうことなく、髪の美容に関わる誰もがマイナスを出さず、笑顔で生きていく。そのこと ができる経済の仕組み、「誰もがプラスになる活動」の仕組みこそが必要だ。今、一般的だと 考えられているヘアケアを見直す必要がある。
<中略>
生命力を放つ髪に化学物質を使って色を変えると、たちまちエネルギーは減少してしまうように感じる。 美容院の扉が開いてお客様が入ってくるその瞬間、カラーやパーマをしている人は、その 人から放たれるエネルギー、生命力が弱いように思うのだ。
生花とブリザーブドフラワーを比べてみてほしい。着色したブリザーブドフラワーはきれいだが、生花のような強いエネルギー、生命力を感じることはない。これと同じなのである。自然は美しい、神が創造したそのままの姿が最も美しく、そして生命力に溢れている。若いからこその潑剌としたエネルギー。歳を重ねたからこそ醸し出される気品、凛とした姿。そんな生き方が素敵だと思う。
<中略>
ブリザーブドフラワーのように、人工的な美しさの施しを追い求めた結果、髪は傷つき、生命力は削がれる。化学薬品による美しさを求めた結果、猛スピードで薄毛から禿に変貌していく。こんなレールに乗ることが、はたして幸せなのだろうか。 しかも、多額な投資をしてのことだ。私は、自身の成長への投資に使うことが生きたお金の使い方だと思っている。
<後略>