紹介
本書は、日本でいえば「環境庁長官」にあたる環境保護局局長を務めた著者が、自ら日本語で書いた回顧録である。日本統治下の台湾で生まれ育ち、日本の学校教育を受け、やがて公務員となった著者は、戦後は京都大学大学院で衛生工学を学ぶなどして、環境保護に理解と技術を深めた。そして、台湾の環境保護行政のトップとなった著者は、カドミウム汚染問題、ダイオキシン被害の阻止、自動車等の排ガス対策、騒音問題、ゴミ処理、環境アセスメントの導入などと、現代社会が抱える問題へと果敢に立ち向かったのだった。そして、台湾の李登輝元総統をして、「当時の荘進源局長の快刀乱麻を断つ行動がなければ、環境保護は世界の先進国家に追いつかなかった」と言わしめる活躍を見せたのである。
目次
推薦の辞 李登輝 ------- 2
自序 ------- 5
第1章 日本人だった幼少時代 ------- 13
生い立ち/公学校から小学校へ/宜蘭小学校/松下正信先生/宜蘭の街/
日本統治時代の教育について/田園生活の思い出
第2章 日本人だった青少年時代 ------- 41
台湾商工学校入学/就職そして独学/総督府普通文官試験/高等師範合格
/戦争の影、応召/学徒出陣
第3章 台湾人になった頃の思い出 ------- 63
終戦直後の混乱/台湾大学入学/二二八事件/親日感情について
/台湾大学卒業
第4章 社会人ルーキーの時代 ------- 85
結婚/鉱務科での仕事/啓信化学工業廠へ転職/環境衛生実験所へ移る
第5章 青年奮闘時代 ------- 103
環境衛生実験所/京都大学留学/京都での日々/家内の来日
/環境衛生実験所に帰って/台北市衛生局に出向/長期海外視察
/台北市政府環境清潔処
第6章 台湾の公害防止行政の開拓 ------- 145
衛生署環境衛生処処長となる/台湾環境保護学会の創設/アメリカ視察
/台北市の上水道、李登輝先生との出会い/処長時代のトピックス/環境保護局局長となる/局長時代のトピックス/局長としての主な対公害施策/京都大学工学博士の学位取得/環境保護署(環境庁)の設立/経済部技監となる
第7章 悠悠自適 ------- 195
幸運をもたらしたもの/神のご加護/諸国漫遊/ドイツで盗難に遭う
/住居についての所論/著作に取りかかる/「易」について/家族
/家内の演歌
第8章 短歌 ------- 221
短歌を趣味に/老妻との日々/自然を楽しむ/老ひの呟き/台湾の行方を憂ふ
/山荘生活随想/犬猫雀達と共に/国外出詠入選/回顧録を書き終えて
後記 244
付録 荘進源年譜 246 著作目録 249