紹介
「子ども子育て支援新制度」発足にあわせて改正された児童福祉法,認定こども園法への対応はもとより,改正の目玉である,児童福祉の理念および社会的養護にかかわる部分を補足するため,子どもの貧困対策の推進に関する法律や少年院法など関連の法規にも新たに触れ大幅に内容を更新した。また,今回行政統計を最新のものに改めるにあたり,より理解を深めてもらうため統計の背景にある子どもと家庭をめぐる状況を記述し,授業に実務に幅をもたせられる1冊にまとめた。
第1章 児童福祉とは何か
第2章 児童福祉の課題-現代社会と子どもの生活
第3章 児童福祉の理念-子どもの権利・大人の責任
第4章 児童福祉の歴史
第5章 児童福祉および関連施策の体系
第6章 児童福祉の法制度-児童福祉法を理解する
第7章 保育
第8章 児童養護問題
第9章 非行問題
第10章 障害児福祉
第11章 子どもの遊びの保障
第12章 児童福祉の専門職
第13章 世界の子どもたち
目次
第1章 児童福祉とは何か
1 児童とは何か
1 児童(子ども)
2 子どもを表わす用語と年齢範囲
3 子どもとはどんな人間か
2 児童福祉とは何か
1 福祉,社会福祉,児童福祉
2 児童福祉の目的
第2章 児童福祉の課題-現代社会と子どもの生活
1 子どもの生活環境の変化
1 急速な社会の変化
2 少子化の進展
2 子どもの成長や発達をめぐる問題
1 子どもの生活習慣
2 子どものからだと心の変化
3 高学歴社会の子どもたち
4 心と行動へのケアが必要な子どもたち
3 子育てをめぐる問題
1 子育ての負担・不安感
2 経済的な負担感
3 仕事と子育ての両立の困難
4 これからの子育て
第3章 児童福祉の理念-子どもの権利・大人の責任
1 児童福祉理念の国際的動向
1 児童の権利に関するジュネーブ宣言
2 児童の権利宣言
3 子どもの権利条約
2 日本における児童福祉の理念
1 児童福祉法における児童福祉の理念
2 児童憲章
3 子どもの権利条約の意義と内容
1 子どもの権利条約の概要
2 子どもの権利条約における権利規定
3 子どもの権利条約の実施
第4章 児童福祉の歴史
1 近代以前の時代における児童保護
2 明治初期の児童保護対策
3 児童保護事業のはじまり
1 孤児・貧児保護
2 非行児童保護
3 保育事業
4 障害児保護
4 児童保護にかかわる制度・政策(明治末~昭和戦前期)
1 明治末~大正期
2 大正期半ば~昭和戦前期
5 戦時下,児童保護の中断
6 児童福祉法の成立とその後
1 児童福祉法成立の背景
2 制定の経過と成立法の特徴
3 その後の変化・発展
7 欧米における児童福祉の歩み-イギリス,アメリカ
1 イギリスにおける児童福祉の歩み
2 アメリカ合衆国における児童福祉の歩み
第5章 児童福祉および関連施策の体系
1 児童福祉および関連施策の対象
2 児童福祉および関連施策の諸形態
3 児童対策にかかわる主な法律
4 児童福祉および関連施策の全体像
第6章 児童福祉の法制度-児童福祉法を理解する
1 児童福祉法の構成
2 児童福祉施設および事業
1 児童福祉施設の目的
2 児童福祉施設の設置
3 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準
4 児童福祉の事業
3 児童福祉の機関と児童福祉実施のしくみ
1 国及び地方公共団体の責務
2 児童福祉の機関
3 児童福祉実施のしくみ
4 児童福祉の財政
1 児童福祉法における公費支出の規定
2 児童福祉法における利用者からの費用徴収
3 子ども・子育て支援法における費用のしくみ
4 子ども・子育て支援法における利用者からの費用徴収
第7章 保 育
1 保育をめぐる状況
2 子ども・子育て支援制度
1 子ども子育て支援制度の成立と意義
2 子ども子育て支援給付
3 教育・保育給付の利用
3 保育所・認定こども園―教育・保育給付
1 施設型給付の対象施設
2 保育所
3 認定こども園
4 地域型保育給付
1 家庭的保育
2 小規模保育
3 居宅訪問型保育
4 事業所内保育
5 その他の保育施設
6 地域子ども・子育て支援事業
第8章 児童養護問題
1 社会的養護のしくみ
2 要保護児童の動向
3 児童虐待
1 児童虐待とはなにか
2 児童虐待の状況
3 児童虐待の背景
4 社会的養護の現状
1 施設養護
2 家庭養護
5 児童養護問題の今後の課題
第9章 非行問題
1 非行とは
2 少年非行の歴史的動向
3 非行少年保護にかかわる法制度
1 児童福祉法と少年法
2 少年法の改正と罰則化
4 非行少年への対応
1 臨床機関と手続き
2 少年犯罪事例と処置
5 非行の要因と背景
1 経済的要因
2 家庭環境
3 障害の影響
6 非行少年の自立支援
1 児童自立支援施設における支援
2 少年院における支援
3 退所後の支援
第10章 障害児福祉
1 障害のある子ども
1 障害とは何か
2 障害のある子どものニーズ
3 わが国における障害の定義と実態
2 障害児福祉の制度
1 障害児・者施策に関する法律体系
2 近年の「障害児支援の強化」に向けた取り組み
3 「障害者総合支援法」成立の過程
4 「発達障害者支援法」の成立と改正
5 障害のある子どもの保育・教育
6 障害のある人への理解
第11章 子どもの遊びの保障
1 子どもの「遊び」
1 子どもにとっての「遊び」の意味
2 モノのない時代の「豊かな遊び」
3 モノのある時代の「貧しい遊び」
2 子どもの「遊び」をめぐる問題
1 遊び場の減少
2 遊び時間の減少
3 遊び仲間の減少
4 現代の子どもの「居場所」
3 子どもの「遊び」を保障する場と制度
1 児童厚生施設
2 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)
3 住民によるさまざまな活動
4 「子どもの権利」としての「遊び」
1 「子どもの権利」としての「遊び」の保障
2 子どもの居場所づくり―オランダの取り組み
3 子どもの居場所づくりに向けて
第12章 児童福祉の専門職
1 児童福祉にかかわる専門職
1 行政機関の専門職
2 児童福祉施設等の専門職
2 保育士制度の歴史と意義
第13章 世界の子どもたち
1 世界がもし100人の村だったら
2 子どもの権利
1 子どもの生存権-生きる権利
2 守られる権利
3 育つ権利-教育を受ける権利
4 参加する権利
3 世界の子どもの福祉を考える
子どもの権利に関する条約
前書きなど
第3版刊行にあたって
2017年に刊行した『子どもと家庭の福祉を学ぶ』<改訂版>を、再改訂し<第三版>をお届けします。本書の基本的な考え方はこれまでと変わりませんので、「まえがき」と「改訂版刊行にあたって」をご一読ください。
今回の改訂の内容は以下のとおりです。
第一に、2017年以降の制度改正に即した修正をいたしました。
大きなものとしては、2019年6月に成立し、10月に施行された「子ども・子育て支援法」の改正があります。基本理念に「保護者の経済的負担の軽減」(改正法第2条)が加えられ、改正施行令により満3歳以上児についての保護者負担の全面的無償化が図られました。本書第6章および第7章でこの点にふれています。様々な課題を含む改正であり、今後の動向を注視していく必要があります。
次に2022年6月「子ども家庭庁設置法」が成立し、2023年4月に施行されます。児童福祉法の所轄は厚生労働省から子ども家庭庁(内閣府の外局)に移り、児童福祉行政が大きく変化することが予想されますが、本書ではこの点に言及することはできませんでした。
第二に、統計数値を更新しました。2020年の国勢調査の結果を反映させ、毎年発表の行政統計および様々な調査についても、できるだけ新しいものを取り上げるようにつとめました。
子どもと家庭をめぐる状況についてはこの間大きな変化が生じています。2020年初頭から世界を襲った新型コロナは、2023年の現在もなお私たちの生活と健康の脅威でありつづけています。罹患者、死者は多大となり、感染防止のための行動制限は子どもに及び、自由に友だちと交流できない、遊べない、マスク越しの会話しかできない時期が長期化したなかで、子どもの育ちが危惧されます。2022年後半から噴出した宗教2世の苦しみは、児童虐待の問題として深刻です。その他さまざまクラクラするような子どもと家庭の福祉の問題が生じていますが、進行中ということもあり、本書ではとりあげることは出来ませんでした。
本書刊行にあたっては、ななみ書房長渡晃氏に多大のご尽力をいただきました。まず、統計数値の更新を全面的に担っていただきました。また活字の書籍に加えて、電子版の出版および本書をベースとしたハイフレックス授業のための「資料集」の作成にも取り組んでいただきました。新しい状況に応じた新しい試みに挑戦する出版社の姿勢に感謝しています。
2023年1月 著者一同