紹介
鮮やかによみがえる「対匈奴最前線」──漢帝国の長城のまもりと、辺境に生きた人びとの姿
秦の始皇帝の時代、将軍・蒙恬によって匈奴は豊かなオルドスの牧地から黄河の北へと駆逐された。しかし、秦末の混乱に乗じて冒頓単于は匈奴の勢力を再編・拡大し、あらたに誕生した漢帝国に対して優位に立った。この関係が転じるのはくだって武帝期のことで、衛青・霍去病といった有能な将軍の出現もあって、漢帝国は「河西通廊」の確保に成功する。河西通廊には郡が置かれ、漢帝国の辺境かつ対匈奴の最前線となった。本書では、北辺の守りとして長城とともにこの地に設置された望楼や城砦、そこで勤務する兵士たちの生活、文書伝送のシステムなど、帝国の辺境かつ「フロンティア」の様相を、出土文字史料である漢簡を駆使して復原する。匈奴の侵入にはいかに対処したのか。兵士たちはどんな日常生活を送っていたのか。北辺の官吏たちはいかなる職務をになったのか。そして、長城や城砦は、匈奴から何を守るために置かれたのか──。99年刊行の同名書に、大幅な改訂をほどこすとともに、新たに補篇「書記になるがよい」を加えた決定版。
目次
プロローグ
第一章 河西の争奪
1 匈奴の興起
2 黄河の西へ
第二章 烽燧・長城・関所
1 望楼と城砦
2 長城—辺境の防壁
3 道と関所と宿駅
第三部 兵士たちの日々
1 長城をまもる人々
2 戍卒たちの仕事
3 騎士—辺境の機動部隊
第四章 下級官吏の世界
1 北辺の役人たち
2 勤務評定と昇進
3 文書と帳簿のはたらき
第五章 辺境に生きる
1 さまざまなトラブル
2 吏卒の家族たち
3 病気と休暇と死
第六章 フロンティアの構造
1 田官と屯田
2 オアシスの相貌
エピローグ
補篇 「書記になるがよい」
あとがき
増補新版あとがき
参考文献一覧
図版一覧