紹介
村落文書のあり方を考えるときに、近世はおろか、中世においても、様式や署判のありかたは見過ごされ続けてきた。
本書では、中世の「村落定書」(村落集団の意思決定事項を記した文書や木札など)と、村落文書の「署判」に着目して、従来の古文書学・史料学の枠組みでは捉えきれない、中世村落文書が持つ豊かな世界の扉を開く。
第一部では、中世から近世移行期までのすべての村落定書の文書様式と内容分類の分析を通し、両者の関係の変遷をあとづける。そこで見えてきたのは、口頭伝達社会の村人が文字による伝達に接触していく過程の痕跡であり、中世村落の動的な姿である。
第二部では、村落文書の署判に着目する。署判の有無と「正文」「案文」の関係への疑問、署判からみえる村落集団と集団代表個人との興味深い関係性を示し、そこから中世村落民の意識の問題までを見通す。
目次
序 章
■第一部 村落文書の形成と村落定書
第一章 村落文書の形成―荘園公領制との関連から―
第二章 村落定書の世界
第三章 村落定書の成立と変遷―文書様式の観点から―
第四章 村落定書の源流―注置状と置文―
付論一 明応七年丹波国山国荘黒田下村の紛失定書二通
■第二部 村落文書の署判
第五章 村落定書の署判
第六章 村落文書の惣判・惣印
第七章 惣判・惣印の形成とその意義
第八章 丹波国山国荘における木印署判
付論二 山国荘井戸村江口家の木印
終 章