目次
課題としての〈ポスト戦争体験の時代〉
継承とはなにか
開いた傷口に向き合う
戦友会の質的変容と世代交代
創作特攻文学の想像力
戦争体験の聞き取りにおけるトラウマ記憶の扱い
戦争を〈体験〉するということ
平和博物館は何を目指してきたか
英霊を祀る
体験的継承から対話的継承へ
原爆の災禍から何を学ぶのか
核の記憶とともに
地域からみる、観光が拡げる
ともに働くという継承
「平和と民主主義」のもとに
〈国民〉の〈労苦〉
体験者でもわからないものとして空襲を捉え直す
「慰安婦」被害者と出会い、正義を求め行動する拠点
過去と対話する下伊那の歴史実践
平和博物館研究をより深く学ぶために
「戦争体験」、トラウマ、そして、平和博物館の「亡霊」
前書きなど
多様化する〈戦争体験の継承〉に関する新たな取り組みの動向と現状をまとめ、その在り様と可能性を考えることが本書の目的である。(中略)それはただ単に「戦争体験の風化」に抗する継承実践を掬い上げるという従来型の問題設定ではない。本書は、戦争体験の〈忘却と想起〉というより包括的なフレームにもとづき、それぞれの対象に関する考察と紹介を行うものである。すなわち、(1)〈ポスト戦争体験の時代〉になぜ戦争体験を継承するのか。(2)それはどのようにすれば可能なのか。また(3)冷戦崩壊後の今日のグローバル社会においてそのことはどのような意味を持つのか。さらには、(4)冷戦崩壊後、戦後半世紀も経った一九九〇年代以降に様々な戦争体験が新たに想起されクローズアップされたり、また多くの平和博物館が新たに開設されたりしてきたが、それらの現象にはどのような社会的意味が付与されているのか、を明らかとしていきたい。(「序章」より)