紹介
「こんなに体調が良くなり、加えてスリムにもなれるなら、どうしてもっと早くやらなかったのかと後悔するほどでした」
東京医科歯科大学 名誉教授 藤田紘一郎 ~日本語版序文より~
アメリカ東部の名門ジョンズ・ホプキンス大学の医師が教える肥満解消法!(2018 QS World University Rnakings 医学部部門5位)
リバウンドなく健康的に痩せるカギは、腸内細菌にあった!糖質制限ダイエット、低糖ダイエット、カロリー制限など、今までさまざまなダイエット方法を試したけど、なかなか痩せないのは、腸内フローラを元気にしないダイエットをしているのが原因です。
カロリーの摂りすぎは体重を増加させますが、それだけが原因ではありません。血糖スパイク(血糖値の急上昇)、インスリンの過剰分泌、炎症、そして代謝調節ホルモンまでもが、体重を左右する要因であることがわかっています。肥満とは、遺伝的要因、ライフスタイル、心理的要因が合わさって、その人の食べ物の選択や活動が左右された結果として生じる複雑な障害なのです。
そして腸内フローラがその人の体重増減に中心的な役割を果たしています。腸内細菌は食物代謝、食欲調節、エネルギー消費、ホルモン分泌、腸バリア機能、炎症、インスリン抵抗性、小腸で細菌が異常に繁殖してしまう小腸内細菌増殖症(SIBO)など病気に深くかかわっています。このように体のさまざまなしくみにかかわっている腸内フローラが乱れると、肥満につながります。
肥満の原因
・遺伝的要因、ライフスタイル、心理的要因
・腸内フローラの乱れ
・腸から体全体に広がる軽度の慢性的な炎症
・SIBO(小腸内細菌増殖症)によるもの
など
本書の内容の一部
・隠れた主役「腸内フローラ」
・腸内フローラの乱れと肥満
・腸内フローラダイエットとは
・フェーズ1腸内環境と代謝をリセットする
・腸を強くするライフスタイル、など。
肥満に効くヨガポーズ18、レシピ、ダイエット・サプリの評価も掲載。
【著者プロフィール】
ジェラルド・E・マリン M.D. (Gerard E. Mullin, M.D.)
医学博士
ジョンズ・ホプキンス大学医学部准教授
ジョンズ・ホプキンス大学病院統合胃腸病学栄養サービス部門ディレクター
統合的な消化器の健康と栄養に関する研究の世界的権威。世界じゅうの医師や医療従事者に、栄養、生活習慣、消化器の健康と体重管理における腸内細菌の役割について教えている。
専門分野:臨床消化器病、消化器病、炎症性腸疾患(IBD)、統合医療、吸収不良、神経消化器、栄養、減量
研究テーマ:消化器疾患における排泄食、栄養、腸内マイクロバイオームおよびプロバイオティクス、統合医療、セリアック病、 グルテン不耐性のスペクトル、炎症性腸疾患、小腸の細菌の増殖、胃食道逆流症
【訳者プロフィール】
浦谷計子(うらたにかずこ)
翻訳家、ヨガ講師
立教大学文学部英米文学科卒業
外資系製薬企業に勤務したのち、海外居住経験を経て、フリーランスの翻訳家に。
訳書に『母から受けた傷を癒す本』(さくら舎)、『「対話」がはじまるとき』(英治出版)、『判断力』(マグロウヒル・エデュケーション)、『APA倫理基準による心理学倫理問題事例集』(創元社)などがある。
目次
日本語版序文――日本医科歯科大学名誉教授 藤田紘一郎
はじめに
もしあのとき夢をあきらめていたら
今にして思えば
肥満が蔓延するほんとうの原因
最新研究でわかった肥満の原因
Chapter 1 隠れた主役「腸内フローラ」
腸内フローラの重要性
腸内フローラのバランスはなぜ乱れるのか
健全な生態系とは
腸内フローラダイエットは自分に合っている?
腸内フローラダイエット体験談①
Chapter 2 腸内フローラの乱れと肥満
経路1――腸内細菌のルーツ
行きすぎた清潔志向
経路2――慢性の全身性炎症
免疫系の暴走
経路3――腸内細菌のタイプ
経路4――食事
遺伝子型、表現型、そして遺伝子のクロストーク
経路5――代謝……短鎖脂肪酸の重要性
経路6――腸内細菌の居場所……SIBOの蔓延
経路7――庁と脳の会話
HPA軸――情報伝達の幹線道路
Chapter 3 腸内フローラダイエットとは
体と腸内細菌という生態系全体を意識したアプローチ
フェーズ1――腸内環境と代謝をリセットする
フェーズ2――腸内フローラのバランスを回復する
フェーズ3――適正体重と健康を無理なく楽しく維持する
Chapter 4 フェーズ1 腸内環境と代謝をリセットする
腸内環境をリセットする
フェーズ1で避けたい食品
添加糖
高フルクトース・コーンシロップ(HFCS)は砂糖と同じか?
精製炭水化物
炎症を誘発するタイプの脂質
高FODMAP食品
グルテン含有穀物
乳製品
ヘルシーなタンパク質
腸と心臓の関係
炎症を抑えるタイプの脂質
低FODMAPの野菜と果物
フェーズ1を成功させるヒント
スープ
水
間食
アルコール類
コーヒー
フェーズ1を成功するために
Chapter 5 フェーズ1におススメのスープフード10品目
1 卵
2 チアシード
3 シナモン
4 ベリー類
5 緑茶
6 ショウガ
7 アボカド
8 キヌア
9 トウガラシ
10 ホエイプロテイン
Chapter 5 フェーズ2 腸内フローラのバランスを回復する
善玉菌の種をまく
プレバイオティクスで腸内フローラを豊かにする
フェーズ2で避けたい食品
フェーズ2で少量なら問題ない食品
一部の炭水化物
グルテンフリーの全粒穀物
ナッツ類
グラフフェッドの赤身肉
ビール、ワイン
フェーズ2で積極的に摂りたい食品
プロバイオティクス食品
発酵食品はなぜ重要なのか?
ピクルス
発酵乳製品
植物性プレバイオティクス食品
フェーズ2を成功するために
腸内フローラダイエット体験談②
Chapter 7 フェーズ2におススメのスーパーフード10品目
1 オーツ麦
2 アスパラガス
3 豆類
4 ケール
5 味噌
6 ヨーグルト
7 ケフィア
8 キムチ
9 ターメリック
10 酢
Chapter 8 フェーズ3 適正体重と健康を無理なく楽しく維持する
体重メンテナンス
伝統食
地中海食
なぜ腸内フローラダイエットは体重メンテナンスに効果的なのか?
バルト海食
理想のダイエットはあるのか?
フェーズ3を成功させるための10原則
フェーズ3で避けたい食品
フェーズ3で少量なら問題ない食品
フェーズ3で積極的に摂りたい食品
フェーズ3を成功させるために
Chapter 9 フェーズ3におススメのスーパーフード10品目
1 サーモン
2 オリーブオイル
3 リンゴ
4 ダークチョコレート
5 緑色野菜
葉野菜――ホウレンソウ、フダンソウ、キャベツ、ケールなど
サラダ野菜
6 フラックスシード(亜麻仁)
7 ナッツ類
8 コーヒー
9 ブロッコリー
10 アーティーチョーク
スーパーフードを味方につける
腸内フローラダイエット体験談③
Chapter 10 腸を強くするライフスタイル
ストレスの影響
ストレス反応
レジリエンスとは
呼吸
マインドフル・イーティング
瞑想・ヨガ
なぜヨガが肥満解消に役立つのか?
肥満に効くヨガのポーズ
マインドフル瞑想――心の動きを観察する
視覚化、誘導イメージ療法、催眠療法
鍼やその他の代替療法
体内時計
睡眠
ウォーキング
腸内フローラダイエット体験談④
腸内フローラダイエット体験談⑤
おわりに
資料――ダイエット・サプリの評価
コラム
① 悪玉菌が肝臓を太らせる?
② 善玉菌を増やす食べ物、減らす食べ物
③ ダイエット炭酸飲料は大丈夫?
④ 動物性資質はどうなのか?
⑤ カルシウムとラクト―ス不耐症
⑥ プレバイオティクスとプロバイオティクスをサプリで摂っても効果は同じ?
⑦ 発酵乳以外の乳製品は?
⑧ スーパーフード番外編①――生ハチミツ
⑨ 塩と肥満の問題
⑩ スーパーフード番外編②――その他の大豆発酵食品
⑪ 無脂肪の乳製品は?
⑫ かつてはヘルシーだったシーフード、今は……。
⑬ リグナンの重要性
⑭ エモーショナル・イーティング
⑮ 睡眠不足の影響
腸内フローラダイエット フェーズ別食品チャート&レシピ集
フェーズ別食品チャート
レシピ集
前書きなど
日本語版序文
レジリエンスも高める腸内フローラによるダイエット
東京医科歯科大学名誉教授 藤田紘一郎
「レジリエンス」という言葉が特に注目されたのは、オバマ大統領による2011年の一般教書演説、2013年の第二期大統領就任演説の時でした。オバマ大統領は、米国の不屈なる回復力をこの言葉で語っていました。
レジリエンスは当初、物理学で「弾性、復元力」を意味する用語でした。そのうち心理学や精神医学の中でも使われるようになり、
「困難な状況にもかかわらず、うまく適応出来る力」
「ストレスフルな状況や逆境に陥った時でも、それを乗り越えて回復していく力、あるいはその回復過程」
を指す言葉となりました。イメージとしては「折れにくくしなやかな」「柔軟性のある」というものでしょう。困難に柔軟性をもって対応することは、あたかも人の体に備わっている免疫力のようです。
腸内フローラの乱れは肥満や体の不調につながる
私たちの体は外部からの攻撃(細菌、ウイルス、異物など)に対し、敵を識別して自己を守る免疫の仕組みを持っています。腸管には全身の免疫細胞の7割が存在していますが、免疫細胞単独で体内の免疫力を保っているわけではありません。バランスのとれた腸内細菌叢が腸管の免疫系細胞を適切に活性化するような双方向制御のシステムがあるからこそ、私たちの健康が維持されているのです。
著者のマリン医師が本書で目指しているのは、単なる減量ではなく、心身の健康、良質な腸内環境、そしてレジリエンス(しなやかな回復力)を手に入れ、生活習慣病を恒久的に防いでいくことです。
消化器官の乱れは肥満や体の不調につながりやすく、腸内の善玉菌と悪玉菌の不均衡(ディスバイオシス)が原因となっていることが多いと考えられています。
ヒトが狩猟採集をして生き延びていた時代と、農業や工業が発達した今の現代社会では、私たちが口にしているものは大きく違っています。タンパク質の摂取量が極端に低くなり、その代わりに精製された炭水化物(白米、砂糖、パン、パスタなど)を多量に摂取するようになりました。
炭水化物自体は腸内細菌のエサとなるため、一概に悪者だとはいえません。しかし、腸内細菌のバランスが崩れていると、そのエサは悪玉菌やデブ菌の増殖に優先的に取られてしまい、それが肥満や体の不調となって表れます。
加えて、作物の品種改良や遺伝子組み換え、食品添加物を利用するようになったのも、地球やヒトの歴史からみればごく最近になってのことです。私たちの腸内細菌もその影響を強く受け、腸内細菌叢の不均衡はさらに顕著になっています。腸漏れ症候群(リーキーガット)や過敏性腸症候群などの病気が増加しているのは、現代人のライフスタイルや食生活が急激に変化したからでしょう。
私も医師として恥ずかしながら、ストレスによる暴飲暴食がたたって、過去に2度も糖尿病を発症しています。
張り詰めた仕事から解放されるランチタイムには、つい欲が出てたくさん食べてしまいました。ラーメン、チャーハン、餃子のセットが大好きで、お腹に余裕があれば甘いものも嗜む毎日でした。そのときは胃腸の調子が常に悪く、月に一度は風邪を引くくらい免疫力も落ち、花粉症も酷くなる一方です。
ある日、やけに泡立つ尿を見て、これはおかしいと思い血糖値を測ると、500mg/dlを超えていました。結局、インスリンによる治療を受けて何とか血糖値を落ち着けていたという有様でした。
腸内細菌の大切さを知っている自分が、ここまで不健康ではさすがにまずいと思い、ついに一念発起することにしました。腸内環境を生まれ変わらせる決意で、食事内容と摂り方をガラリと変えることにしたのです。
基本的にはマリン医師の勧める内容と近いものですが、私は血糖値コントロールのために低糖質食を中心に行いました。すると、開始からたった1ヶ月であっという間に血糖値は正常範囲内に、1年後には体重が10キロ近く落ちました。そして風邪も滅多に引かなくなり、花粉症も漢方薬を少し飲んでおけば一日元気に過ごせるようになったのです。
こんなに体調が良くなり、加えてスリムにもなれるなら、どうしてもっと早くやらなかったのかと後悔する程でした。
腸内フローラを整えダイエットに有効な3ステップアプローチ
マリン医師は腸内細菌のバランスを整える方法について、「まず庭に生えた雑草を除去し、次に環境に合った種子をまき、そしてよい肥料を与える」というように、美しい庭をつくる過程にわかりやすく例えてくれています。
本書の一番の特徴は、その「美しい庭づくり」の方法がフェーズごとに分かれていることでしょう。
フェーズ1では、消化器官内の悪玉菌を最小限に抑えることから始めます。腸内環境をリセットするため、30日間という短期間だけグルテンを制限し、ケトジェニックを実行します。そして食物繊維の多い低FODMAPの穀物を摂ることで、腸内細菌の多様性を高めます。
フェーズ2では、善玉菌と悪玉菌のバランスを整え、良質のエサを与えて善玉菌を養います。プロバイオティクス、プレバイオティクスを中心に、グルテンフリーの全粒穀物も少量取り入れて、善玉菌の多様性を高めます。
フェーズ3では、体に理想的な数の善玉菌を維持します。ヘルシーな全粒穀物、地中食、バルト海食で健康と体重の長期的な維持を目指します。
これら3ステップの段階的アプローチをとることは、私たちのからだの仕組みにおいても大変理に適っていると思われます。
ダイエットの考え方に「セットポイント説」というものがあります。これは、「体脂肪量は常に一定になるように脳によってコントロールされている」という考え方で、脳が目標にしている体脂肪量をセットポイントと呼びます。これは基本的には遺伝子で決定し、人それぞれ異なる値が設定されています。
従来のダイエット法のように、カロリーや糖質摂取を制限することで確かに短期的には体重は落ちます。しかし、体脂肪量がセットポイントより減ると、脳は食欲を強めて摂取カロリーを増やし、体は節約モードに切り替えて消費カロリーを抑えてしまいます。
つまり、セットポイントから外れた体重を目標にしたダイエットは、脳の命令により基礎代謝が下がって痩せにくくなったり、ストレスが溜まって反動で食べてしまったりして、結局は体重や体脂肪量がセットポイントに戻ってしまうのです。
食事制限のダイエットが私たちにとって長続きしないのはこのようなセットポイントも原因と思われますが、何よりも食べるという日常的な楽しみを奪うとともに、健康的な体重維持に必要な栄養素を摂らないからです。私たちの体をつくるため、免疫の要となる腸内細菌を養うためには、さまざまな食品を摂ることが必要なのです。
書籍のタイトルには「ダイエット」と入っていますが、本書は単なるダイエット本にとどまりません。リバウンドせず、辛くないダイエットを実行しながらも、体全体への癒しと免疫の強化をもたらしてくれます。
食べ物と健康の多様な知識をふんだんに取り入れた腸内フローラダイエットは、私たちが本来持っているレジリエンスの力を発揮させ、サステイナブル(持続可能)な健康を目指すための、頼りがいある羅針盤となってくれることでしょう。