目次
プロローグ
第1章 誰が「黒く輝ける王子」を殺さなかったのか──カリルの生とFBIの影
第2章 ストリートのニーチェ──アリの闘いと純白のアーカイヴ
第3章 116丁目ストリートのスケッチ──ハミッドの「あるく、みる、きく」
第4章 理想郷のつくりかた──ハーレムとコロンビア大学との境界
第5章 先送りされるコミュニティ──アブドゥッラーの夢とディレンマ
第6章 ムスリマの世間──21世紀の問題とアイシャのムーヴメント
エピローグ
補章
本書の「問い」と「認識」についての覚え書き
注
あとがき
前書きなど
《いま・ここ》に共鳴する階級都市の諸相
「ここに記したのは、まぎれもなくアフリカン・アメリカンのムスリムたちの姿だ。だから本書はその点で、アメリカ社会に暮らすマイノリティたちの物語だと言えるかもしれない。〔……〕けれども、死を考えることが生を考えることであるように、マイノリティについて考えることは、ひるがえってマジョリティについて考えることでもある。マジョリティ/マイノリティの線引き自体が恣意的なもので、多くの場合マジョリティによって歴史・社会・文化的に構築され、維持され、ときに変化する。また、マイノリティは、その性質上、つねにマジョリティによってしるしを付けられ、制約を課され、それゆえにマジョリティを意識せざるを得ない立場にある。だから本書は、マジョリティに関する本でもある。アメリカの物語であり、アメリカについて語った本でもある」——「まえがき」より。