紹介
「羅生門」が発表されてから、ちょうど一〇〇年の節目の時を迎えます。芥川文学は、一〇〇年もの間、読み継がれる力を持ち続けてきたのです。そういう作品としての強度を持っているのです。しかしながら、このことは同時に次のような問いを我々に投げかけます。「何故多くの読書人が一世紀にも亘って芥川の作品と向き合ってきたのだろうか」。そこに作者や作品の力が大きく働いていることに疑いはないのですが、ただそれだけではない、他の何かが作用しているということも容易に想像されるのです。しかし、それは一体何ものなのでしょうか。本書の出版企画を進めるにあたっては、その問いの答えを探すことに重きを置きました。このことにかかわることがらを多面的、多層的な観点から明らかにしたい、そして、芥川文学を巡ってさまざまに展開されている研究の現状をしっかりと捉え直したい、ということを本書の目指す処としたのです。
目次
凡 例
作家研究からの二つの視角─芥川文学の読解のために
芥川文学─モダニズムとしての軌跡
芥川文学の窓─庄司達也・篠崎美生子編
家/教養・教育/蔵 書/書 簡/遺 書/肉筆資料/師と弟子/伝記研究/描かれた芥川/明 治/西 洋/キリスト教/古典文学/同時代芸術/モダニズム/プロレタリア文学/中 国/怪 異/狂気・心理/性/文 壇/メディア/読者・読者意識/ジャンル/全 集/文 体/語 り/装 幀/新聞小説/歴史小説/私小説/詩 歌/児童文学/世界文学/国語教育/消費社会/差 別/災 害/戦 争/植民地
作品論の窓─奥野久美子・五島慶一編
秋/アグニの神/浅草公園/あの頃の自分の事/或阿呆の一生/或旧友へ送る手記/或日の大石内蔵之助/一塊の土/糸女覚え書/芋 粥/馬の脚/大川の水/おぎん/お富の貞操/開化の殺人/開化の良人/影/河 童/神神の微笑/枯野抄/きりしとほろ上人伝/金将軍/蜘蛛の糸/芸術その他/戯作三昧/袈裟と盛遠/玄鶴山房/好 色/西郷隆盛/地獄変/邪宗門/秋山図/侏儒の言葉/俊 寛/将 軍/少 年/蜃気楼/素盞嗚尊・老いたる素戔嗚尊/西方の人・続西方の人/仙 人/大震雑記/大導寺信輔の半生/煙草と悪魔/偸 盗/点鬼簿/杜子春/トロッコ/南京の基督/葱/鼠小僧次郎吉/年末の一日/歯 車/芭蕉雑記/鼻/手 巾/雛/ひよつとこ/二つの手紙/舞踏会/文芸的な、余りに文芸的な/奉教人の死/本所両国/魔 術/蜜 柑/桃太郎/保吉の手帳から/藪の中/羅生門/龍/老 年/六の宮の姫君
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