目次
はじめに 2
第1章 3・11後、2年目の警戒区域 7
―大半が餓死したなかで、今なお生き残る動物たち
●小走りに向かってきた奇跡の猫 8
●警戒区域内でレスキューされた猫たち 10
●遠隔捕獲器でレスキューの「のぐちゃん」 18
●生き残って救出された5匹の犬の家族 20
●ボクたちを早く助けて! 24
●福島原子力エリアの被災ペットの現状について 31
第2章 家族と再会した動物たち 35
―3・11後数百日、家族との再会・里親の元へ
●黒猫ノア、遂に家族と再会 36
●絵本になったキティーの物語 40
●里親の元へ引き取られた犬たち 42
●里親の元で幸せになった猫たち 45
第3章 警戒区域の中に住みレスキュー 59
―「殺処分」された牛、生き残った牛
●「殺処分」に抵抗する希望の牧場・吉沢正己さん 60
●警戒区域内に住んで動物のレスキュー・松村直登さん 62
●松村さんに1年半ぶりに救出された奇跡の犬 66
●警戒区域内のもう一つの「希望の牧場」 68
●ペットオーナー共同所有の牛のしげみちゃん! 69
●放浪する牛と「殺処分」された無数の牛 72
●逃げ延び放浪するなか、交通事故で死んでいく牛 83
●警戒区域内の野生動物に広がる飢えと病気 85
第4章 HOSHI FAMILYの多様なレスキュー作戦 89
―警戒区域内への遠隔操作でレスキュー
●富岡町で桜カメラを発見 90
●自動遠隔捕獲器1号機・モニター始動中 91
●自動遠隔捕獲器2号機・モニター始動中 92
●自動遠隔捕獲器・モニターの3号機が完成しました 92
●最新の自動遠隔捕獲器1号機モニターから 94
●こちらはライブカメラ1号機 94
●こちらはライブカメラ2号機 95
●こちらはライブカメラ3号機 95
●アニマル・レスキューは自分たちの正当性を堂々と主張しよう! 97
●オフサイトセンター、HOSHI FAMILYと他の動物愛護組織を名指しで公式排除 100
第5章 世界に広がるフクシマ・アニマルレスキュー 105
―政府の被災動物の見殺しに世界から抗議の声!
●世界最大のニュース報道CNNもアニマルレスキューを報じる 106
●ノルウェー最大の新聞社もHOSHI FAMILYを報道 107
●フランスで2度目の「見捨てられた命」の写真展開催 108
●カナダでもアニマルレスキューの写真展とバザーを開催 109
●武蔵野ケーブルテレビが警戒区域内の動物たちの餓死を報道 110
●全国に広がる「見捨てられた命を救え!」の写真展 111
第6章 環境省・オフサイトセンターの偽善 123
―なぜ彼らは数十万の動物たちを餓死させ、放置したのか?
●私が警戒区域に行くようになった訳 124
●3月11日、追悼の日 129
●今、福島で何が行われているのか? 131
●HOSHI FAMILYからの大切なお願い「共存共栄・フクシマ」 136
●死の町・死臭のする町に150日間も通い続けて 141
●VAFFA311代表夏堀雅宏氏へあてた手紙 143
●HOSHI FAMILYの被災動物レスキューのポリシー 149
■資料 にゃんだーガードさんのブログから 153
■資料 福島警戒区域残留犬猫救護、管理に関する緊急措置の要望書 156
おわりに 158
注 本文及びキャプションで、特に表記していない日付の年号は2012年である。
前書きなど
3・11から、もうすぐ2年になろうとしています。私が家族で故郷の福島を訪ね、悲惨な動物の死を目にしたときから始まった素人の動物救援運動が、世界中の方からHOSHI FAMILYと称される運動になり、これほど長く続き、終りが見えなくなる救援になろうとは、とても想像のできないことでした。「日本がこんなひどい国とは思ってもいなかった」というのが、偽りのない気持ちです。
2011年4月22日、菅直人総理(当時)が発令したフクシマ警戒区域の立入禁止指令以後、放射線量が下がってからさえも、動物は見捨てられていきました。緊急災害動物救援本部に集まった6億7千万円もの義援金は、ほとんど生かされず利権と化してしまった感もありますが、その中で多くの心ある人々が、民間組織に物資や支援金を送り支えてくださいました。
チェルノブイリの原発事故でさえ、ペットや家畜は国民の財産として優先的に保護されたというのに、福島だけは人間のみならず、あらゆる命が見捨てられました。それは、原子力災害は起こらないという政府と東電の傲慢からでたものですが、初動対策が遅れ、今さら方向転換できないという中で、原子力災害対策で原子力産業は潤い、除染作業でゼネコンが潤い、動物をできるだけ助けないことで動物救援本部の資金が潤い、多くの者たちが災害の利権に関与したことだけが目につきました。
そして、数百頭の動物を保護しながら、義援金配分も貰えず運営に苦しむ民間組織もあれば、ほとんど活動もせずに多額の配分を得た組織もありました。そこには、行政を批判するものには義援金を与えないようにしようという構図がありました。福島の避難民の死亡率は、全国平均の2倍を上回り、将来を悲観して自殺した人や、警備の警察官でさえも、統計上あり得ない急性放射能障害で死亡した者も数名いるそうです。
私たちHOSHI FAMILYのメンバーも、首吊り自殺の現場に居合わせたり、住民の方から「もう家にも自由に帰れない、家においてきた猫すらも助けに行けないなら、もう死んでしまいたい」、そんな電話をいくつもいただきました。
しかし、政府の情報統制の中で保安院は、今でも動物愛護団体とジャーナリストは警戒区域に入れるなという指令を警察に行って、マスコミを通じたプロパガンダを流し続けているのです。これらは、明らかに憲法違反とも言える行為ですが、立ち上がろうという政治家は今のところほとんどいません。
政府は住民賠償を遅らせて、福島の民が地元を離れるのを必死で阻止しようとしています。除染すれば5年後には家に戻れると口実をつけて、物理的に不可能な除染を行い始めていますが、大量の汚染された野草を牛が食べてしまうとゼネコンが刈る草がなくなる。そんな利権絡みの構造から、数千頭もの牛が住民の生かしたいという願いを無視して「殺処分」されていきました。たかだか1兆円にも満たない20㎞圏内の住民賠償を遅らせ、そこに何十倍もの除染予算が投入され始めているのが現状です。
おりしも、本書を書き終えようという1月12日、名古屋において福島の飯館地区で動物を救うボランティア活動をしていた女性リーダーが、家族3人を殺害し自殺したというニュースが流れましたが、真相は究明されておりません。しかし、はっきりしていることは、もし、この日本という国が思いやりのある国で、心豊かな国であれば、彼女は福島に行くこともなかったであろうし、無駄な心労も辛い動物たちの死も目にすることはなかっただろうことです。時の流れは確実に別のものとなり、この動物好きの家族は、このような悲惨な事件に至らず生きていただろうということです。「弱気」を救えない今の政治が、彼女とその家族を死に至らしめた事を忘れてはいけません。
本書を見ず知らずの立場でありながら、フクシマの動物救援に協力をいただいた多くの愛護家の皆様、世界中からこの民間救援に支援物資を送ってくださった皆様、今も生き残る2千頭以上の猫と犬、千頭の家畜たち、最後まで信じて飼い主を待って餓死していった2万頭のペットと60万頭の家畜、HOSHI FAMILYが救った200の命たちと里親を志願していただいた皆様に捧げます。そして、警戒区域では今でも動物たちが救援を待って生きています。この歴史上最大の動物殺しの真実と人間行動の浅ましさを、多くの皆さんに伝えることを願ってやみません。
2013年1月18日
星 広志