紹介
■ あらゆる規範を失った政治が醜態をさらし、文学の終焉が語られて久しい。
文学はこんにち、生へのアクチュアルな発信を断念し、政治的現実への無惨
な絶望を前に、ついに自閉してしまうのだろうか。
著者の半世紀を賭けた文学的試行を集成する、「文学と政治」論集。
■ 大作『レ・ミゼラブル』を皇帝権力に抗っての亡命下に書き継いだユゴー、
身をもって政治参加を生きたサルトル、グローバル化という民主主義の負の
未来を見事に予言したトクヴィル……
時代の権力とそれぞれの仕方で向き合った思想家たちの闘いに耳を澄ます。
ここには断念することを知らない精神と、私たちの同時代への驚くべき予言
と、言葉と権力との秘密めいた関係をめぐる明晰な意識とがあった。
目次
【目次】
はじめに 文学と政治
Ⅰ 『レ・ミゼラブル』の現代性
──ヴィクトール・ユゴーとその時代──
第一章 歴史小説としての『レ・ミゼラブル』
第二章 ユゴーとふたりのナポレオン
第三章 『レ・ミゼラブル』と現代
Ⅱ 文学と政治参加
──ジャン = ポール・サルトルとアルベール・カミュ──
第四章 サルトルと私
第五章 神も理性も信じない人間
第六章 もうひとつの文学行為
第七章 歴史への責任
Ⅲ グロテスクな民主主義
──トクヴィルとフローベール──
第八章 トクヴィルの現代性
第九章 恋愛・金銭・デモクラシ
あとがき 私のフランス文学周航