紹介
改めて問います。いまの報道は、批評は、おもしろいでしょうか? それは果たして、考える場として機能しているでしょうか? 僕にはそうは思えません。いま、情報ネットワークにあふれかえるほとんどの言葉は、ある問題があったときにその問題を解くための知恵を出すこともなければ、問題そのものの問い直すこともありません。ほとんどの言葉は既に「世間(僕が一番嫌いな言葉です)」で話題になっている問題に、どう答えるとある層を動員(課金)させることができるかという大喜利的なゲームのプレイになってしまっています。そして、そこには何も建設的なものは存在しません。
だから僕たちは2020年に「遅いインターネット」という運動をはじめました。これはプラットフォームの提供する「速度」に抗って、SNSの相互評価ゲームの外側で時にはゆっくり事物を考えることを提案する運動です。
そしてその延長に2021年の秋、僕たちは新しい雑誌「モノノメ」を創刊しました。「遅いインターネット」計画から続く、アテンションエコノミーに抗いゆっくり思考する場をつくる。ただ売って終わりにせず、そのあとは読者と一緒に考え続ける……そんな雑誌を目指しました。
そして、このプロジェクトで大事なのは「続けること」です。新しい方法を試行錯誤しながら、こうやっていけばインディペンデントな、長いものに巻かれない「発信」を一定のクオリティを保ちながら続けていける……そんな成功例を小さくてもいいから、長く続くかたちで遺したい。僕はそう考えています。
この第2号も、創刊号に引けを取らない、いや、それ以上の情熱を注ぎ込んでいます。必ず、納得の行くものに、期待に応えられるものに仕上げます。到着を楽しみにお待ちください。
目次
[紀行文]観光しない京都2022
【特集】「身体」の現在
[座談会]身体論の現在──ケアと拡張身体のあいだで|牛場潤一×緒方壽人×笠原俊一×田中みゆき
[鼎談]思想としての義肢──OTOTAKE PROJECTの豊かな副産物について|遠藤謙×落合陽一×乙武洋匡
[論考]藤井修平|マインドフルネスの身体技法はいかに受容されてきたか──仏教と心理学の関わりの歴史から考える
[論考]藤嶋陽子|凡庸な服は、いかに捉え得るか? ––私的な身体技法をめぐる試論的考察
[インタビュー]上妻世海|制作する身体をめぐって──運と誘惑と戯れながら
[対談]「もうひとつの眼」と「もうひとつの身体」はどう出会ったか|飯田将茂×最上和子
[座談会]消極的な人よ、身体を解放せよ──いや、そもそも身体なんていらない?|消極性研究会
[特別企画]47都道府県再編計画──日本列島(再)改造試論|井上岳一×宇野常寛×田口友子
[ルポルタージュ]「ムジナの庭」では何が起きているのか
【妄想企画】水曜日は働かない
[マニフェスト]「水曜日は働かない」という提案|宇野常寛
[鼎談]「水曜日は働かない」という提案をめぐって|芦埜佑亮×高坂友理恵×辻音里
[コラム]「水曜日を働かない」ための働き方改革|坂本崇博
[特別鼎談]「劇映画的な身体」をめぐって──『ドライブ・マイ・カー』から考える|宇野常寛×佐渡島庸平×濱口竜介
[論考]苫野一徳|社会構想のための哲学思考
[エッセイ]吉田尚記|現役アナウンサーがその目で見た #TOKYO2020
[創作]眠い町 作・小川未明/版画・久保田寛子
【連載】
福嶋亮大|世界文学の制作 第二章:指し示すこと、物語ること
丸若裕俊×沖本ゆか もののものがたり #2|自在鉤/唐津焼の器
おいしいものにはわけがある #2|「ジャンボ」のお好み焼きと焼きそば
絵本のはなしはながくなる #2|近藤那央さんの選ぶ、不思議ないきものたちに出会える絵本
ひとりあそびの(おとなの)教科書 #2|東映レトロソフビコレクション──石ノ森章太郎と戦後サブカルチャー的身体
[フォトエッセイ]走るひとたち|上田唯人、高山都、宇野常寛