紹介
いまのインターネットは「速すぎる」。速すぎる情報の消費速度に抗って、少し立ち止まって、ゆっくりと情報を咀嚼して消化できるインターネットの使い方を考えてみたい。いま必要なのは、もっと「遅い」インターネットだ──。こうしてはじまった「遅いインターネット」計画。この1年、僕たちはあたらしいウェブマガジンの運営と、タイムラインの潮目に流されない豊かな「発信」のちからを養うワークショップを継続してきました。 そして、2021年。この運動の次のステップとしてあたらしい「紙の」 雑誌を創刊します。
雑誌の名前は「モノノメ」にしました。
由来は春の季語の「物の芽」で、いろいろな植物の芽の総称です。そしてそこに「ものの目」という意味も込めました。僕たちはいま、人の目のネットワークの中に閉じ込められているところがあるので、別の目で世界を観てみたい。そんな思いを込めています。
いま、この国はカビの生えた権威に媚びて席をもらうか、アテンション・ エコノミーに乗っかって空疎なパフォーマンスをやり遂げないと、ものを表現することが難しくなっています。けれども、それではどんどん世界は貧しく、つまらなくなっていく。この小さな雑誌が、本当に価値を生んでいる人たちがちゃんとした手続きで読者に出会えるような、そんな場になればいいと思っています。しばらく、粘り強く続けるつもりです。よろしくお付き合いください。
目次
[巻頭ルポ]10年目の東北道を、走る
[特集]「都市」の再設定
[座談会]「都市」を再設定する──復興、防災、地方創生|饗庭伸×安宅和人×菊池昌枝×渡邉康太郎
[解説]「都市」を再設定するためのキーワード集|ぽむ企画
[論考]松田法子|湧出東京──生きのびる土地
[エッセイ]推しが山いっぱいに増えてくれたら死ぬ──生き物たちと共に里山を作る|東千茅
[特別企画]虫の眼、鳥の眼、猫の眼──人間外から都市を読む|柳瀬博一 (監修)
[対談]〈もの〉がうごめく都市をめぐって|酒井康史×田中浩也
[妄想企画]「飲まない東京」プロジェクト2021
[インタビュー]「飲むこと」はもっと拡張できる──ノンアルコール・ドリンクを探訪する|古谷知華
[鼎談]大人のあそび場は「飲まない」ほうが楽しい|磯辺陽介×田中元子×藤井明香
[妄想計画]本瀬あゆみ + PLANETS CLUB|「飲まない東京カフェ」計画
[特別座談会]オルタナティブ・オリンピック・プロジェクト再考──TOKYO2020はどうあるべきだったか|宇野常寛×乙武洋匡×岡島礼奈×門脇耕三
[論考]福嶋亮大 世界文学の制作 序:小説における並行処理
[論考]鞍田崇 生きる意味の応答──民藝と〈ムジナの庭〉をめぐって
[論考]井庭崇 創造社会における創造の美:クリストファー・アレグザンダーと柳宗悦を手がかりとして
[エッセイ]最上和子 身体というフロンティア
[創作]浅生鴨 「穴」
[寄稿]猪子寿之『「祈り」展』のこと
[フォトエッセイ]高山都 走るひとり
[連載]沖本ゆか×丸若裕俊 もののものがたり #1 九谷焼の箸置き/朝日焼の湯吞
[連載]おいしいものにはわけがある #1 「たかまつ」の弁当
[連載]ひとりあそびの(おとなの)教科書 #1 世界の果てで、ウニモグを走らせる
[連載]絵本のはなしはながくなる #1 川上弘美