目次
序 章 一九四九年四月・太平洋上
第一章 胡適序言・陳独秀遺著『陳独秀の最後の見解(論文と書信)』
第二章 陳独秀の生涯、その概略
第三章 「胡適序言」──その翻訳と解説
第四章 陳独秀と胡適──「死友」と呼ぶ仲
第五章 「国共合作」方式下の「大革命」の敗北と陳独秀
第六章 中国トロツキー派の趨勢と陳独秀
第七章 陳独秀遺著『陳独秀の最後の見解(論文と書信)』──その翻訳と注・解説
付録一 陳独秀「ケッテラー(克林徳)碑」──翻訳と解説
付録二 陳独秀関連の人物および中国トロツキー派の主要人物
付録三 陳独秀関連年譜・中国革命と世界情勢年表
あとがき
前書きなど
……これから話そうとするのは中国現代史上避けて通れない二人の思想家、政治家、学者であるこの二人、陳独秀と胡適の話である。だが、この二人は日本では長く禁忌(タブー)の下に置かれ、語ることが憚られる存在だった。近年は少し語られるようになったが、かれらの人生とその活動にはまだまだ明らかにされねばならないことが数多くある。わたしは、このような書き出しで、彼らの人生とその知的遺産を語りたいと思った。二人の陰翳とは「父無し子」の影のことであるが、しかし、自分の無能力さに嫌気がさし、断念した。そしていつものように、幕が開き、いつものように、学者然として、彼らの歴史時代を語るよりほかない無能な自分を見つめるよりほかなかった。