紹介
藤原和好さんによる『語り合う文学教育-子どもの中に文学が生まれる-』には、著者と語り合う
文学教育の会の理念に基づいた、実際の子ども・教材・教室を拠り所とする考察が記されています。
「文学作品(本文)との葛藤の結果、読み手である子どもの中に生まれる文学作品を見出し、これを
意義づけ」ることを主張する本書の議論は、様々な理論的な研究にも裏打ちされています。しかし、
抽象論の引用はごくわずかです。平易な文体で具体的な論が述べられています。抽象的な理論をふま
えつつも、それ以上に「サークルで報告されるレポート」からとらえられる「子どもの内側に成立し
ている文学の世界」を厳しく見つめてきたことが、こうした論述に結実しているのでしょう。
この本は藤原さんが考えてきたことの集積です。これまでの取り組みをまとめるとともに、その過
程あるいはそこに至るまでの経験や思いが記されています。その一方で、本書は「集団的な討議」す
なわちサークルのメンバーとの絶えざる交流によってもたらされた成果でもあります。ですから、こ
の本は著者の考察の集積であると同時に、今日までに積み重ねられてきた教育実践を示し、その意義
を明らかにするものでもあります。ぜひとも日々の授業に臨んでいる人たちに読んでもらいた
いと思います。
目次
二つの「お手紙」(子どもの中に生まれる文学)
〈語り合う文学教育〉はどのようにして生まれたか
語り合う文学教育(教師にとっての意義)
文学作品との出会い―語り合う文学教育の会はなぜ読みのマニュアルをつくらないのか―
読み深め(虚構との出会い)
「感動は教えられない」か?
〔感じる力〕を育てる
賢治作品と子どもとをどうつなぐか
状況を読む(心情主義を乗り越えるために)
語り合う文学教育と説明文の指導