目次
第一章 純粋経験の基本構造 (林 信弘)
第一節 事実そのまま
第二節 疑いうるだけ疑って
第三節 意識の統一力
第四節 純粋経験としての神
第五節 物となって
第二章 場所 (福尾 弘子)
第一節 考究の出立点
第二節 純粋経験から場所へ
第三節 場所
第四節 生きるということ
第三章 私と汝 (羽鳥 恵一)
第一節 純粋経験
第二節 唯一実在としての意識現象
第三節 真の自己
第四節 私と汝
第四章 生命 (近藤 正樹)
第一節 人生の悲哀
第二節 純粋経験の立脚地
第三節 純粋経験の分化発展と統一力
第四節 神の愛
第五節 無限なる生命
第五章 宗教 (武田 寛耕)
第一節 純粋経験の立場
第二節 神の存在証明
第三節 悪の問題
前書きなど
本書の課題は近代日本最大の哲学者・西田幾多郎の名著『善の研究』において展開された、いわゆる「純粋経験」(あるいは直接経験)なるものの本質、並びにその意義と可能性を読み解くことにある。西田の「純粋経験」はあまりにも有名で、従来多くの研究者によってあれこれ論じられてきたが、しかし編著者には、いずれも隔靴掻痒で、解釈を施せば施すほど、当の「純粋経験」からズレてゆく感を拭えなかった。本書も結局、同じ轍を踏んでいると受け取られるかもしれないが、あえて我々なりの挑戦を試みた。これまで書かれてきた多くの西田研究書という夾雑物にできるかぎりとらわれずに、直截に西田と正面から向き合い、思いを通わせるなかで、彼の「純粋経験」そのものに参入しようとした。