目次
第Ⅰ部 産業構造の変動と生活空間
1章 グローバル経済化と京都経済の構造変動
2章 京都における産業変動と在日韓国朝鮮人企業
3章 戦後京都市における銭湯と生活空間の変化
第Ⅱ部 産業の再編と地域社会
1章 繊維産業の再編と産地崩壊の危機
2章 京都の医療産業
3章 京都の映画産業
4章 観光産業の変容と観光振興の課題
第Ⅲ部 土地所有・利用構造の変容
1章 京都における都市形成と土地所有
2章 京都の住宅問題
3章 京都府における農地問題の今日的展開
4章 京都府農業の担い手パターン
第Ⅳ部 財政危機・行財政改革と住民生活
1章 京都市の財政危機
2章 水資源開発と日吉ダム
3章 京都府の水道事業
京都経済を探るために
地域を見る眼
京都経済を学ぶための参考文献一覧
前書きなど
私たちは、日々の生活のなかで、自分たちの住んでいる地域が、どのような来歴を経て作られてきたものなのかとか、経済の急激なグローバル化とどのような関係にあるのかといったことを考える機会はほとんどない。そのような問題を考えなくとも、日常生活を支障なく送ることができるように思えるからである。
けれども、その日常生活のあり方を、深部から規定しているのは、その地域の経済活動であり、それが順調にいかなければ、そこに住む人々の生活も不安定なものとなってしまう。また、それぞれの地域は、自然条件や歴史的条件や立地条件に規定された地域的個性を有している。その個性は、産業構造や生活様式の個性としても発現しており、決して日本あるいは世界の各地域は、均一な構造をもっているわけではない。とくに、資本主義の時代においては、資本の活動が集中する大都市と農村とでは、「グローバル化」の現れ方も、根本的に異なる。
1990年代の経済のグローバル化と長期不況の継続は、東京などごく一部の大都市部を除く日本列島の大部分の地域経済衰退を加速させ、それらの地域、とりわけ農村部の住民生活の不安定化をもたらした。後にも述べるように、京都は全国的にも産業後退の著しい地域のひとつとなっている。