前書きなど
長いあいだ、母親や教師たちから私に寄せられる期待に「男の子の性教育の絵本がほしい」という声がありました。性教育に着手してから30年間、私は幼児向けから父親向けまでの単行本、マンガ、写真集、絵本、事典、全集など、多種多様な書籍を刊行してきました。しかし、そのなかには女子向けの本が数冊もあるのに、男子向けのものはマンガ本1冊のみで、それも現在では入手困難になっています。
そこで、思春期前期までの男子に、「自分の体に責任をもつ、体の主人公になってほしい」という大人たちの願いを込めて作成したのが、この絵本です。
男子の場合は女子と違って、幼児のころから自分の外性器に興味をもって育ちます。ところが、この「愛しい負ペニス」が、思春期を境にして変身します。それは、柔らかくて従順な「泌尿器」から、雄々しく勃起して自己に「性器」になるのです。その後の男性は、このパーツといかにつきあうかの試練を受けるのです。その課程で、ペニスは人に優しさを伝える「きずな」ともなり、最悪の場合は、人を傷つける「凶器」にもなるのです。もちろん、使う機会は少なくなりましたが、「生殖器」にもなります。
いずれにしろ、この性器は、男性が自己の性を認識して、どれほどわが性を自律(セルフ・コントロール)し、ひいては性的な自律(性的自己決定)をすることの、その度合いのバロメーターにもなるのです。
そこで、本書は、真正面からこのペニスを扱う絵本にトライしました。まず、ペニスの存在から〈性差〉を認知し、その機能である〈排尿〉〈勃起〉〈器官〉〈生殖〉〈射精〉〈遺精〉などを説明し、さらに〈諸器官〉や〈性毛〉〈包皮〉〈プライベート・ゾーン〉〈急所〉〈自慰〉などから、〈大人になること〉にまで語りかけます。このように、1本の「おちんちん」にまつわる性情報をできるかぎり網羅した、新しい時代に生きる男の子たちの「性器」読本です。