紹介
令和元年5月1日発売!
喜び、愛、哀しみ、怒り、呪い、いがみ合い。
万葉集に綴られた、古(いにしえ)の人々の息遣いと元号に秘められた人間味あふれた情を紐解く。
明治天皇は、即位礼当日、讃岐国に勅使を遣わし、あるものを京都に持って帰らせた。勅使が京都に帰ってきた翌日、史上初めて御籤の方法で『明治』を引き当てる。そこから、明治の大革命が始まった。
明治天皇は、何を持って帰らせたのか。なぜ、御籤の方法をとったのか。
勅使は、瀬戸内の直島にも立ち寄って祈りを捧げている。直島抜きには、明治維新は成功しえなかったのだ。
『明治』の元号と、瀬戸内と関係の深い天皇の歴史を紐解く1400年の元号史。
この元号史は『令和』に繋がっている。
○目次
序章 元号か、西暦か
第1章 聖徳太子と暦
第2章 呪われた元号
第3章 瀬戸内から都へ
第4章 新元号は令和
〔元号の歴史が語る、日本国民の叡智〕
日本の元号は、飛鳥時代の大化の改新で「大化」が建てられたことに始まり、
「大宝」から1300年以上も途切れることなく使い続けられている
歴史の深い年号です。
元号の歴史には、この先の未来は、どんな世の中がいいか、
国のあり方をみんなで考えながら、作り上げていった記録が残っています。
人々の希望と叡智が詰まったのが元号です。
<序章より抜粋>
目次
〔序章〕元号か、西暦か
万葉集の元号
・世界の年号
・宗教統合の元号
・キリスト教の西暦、無宗教の元号
・なぜ改元するのか
・元号か、西暦か
〔第一章〕聖徳太子と暦
日本初の元号は「大化」
・天体と暦
・なぜ閏日は二月二九日なのか
・聖徳太子
・初めての改元は「白雉」
・本格的に始まる元号「大宝」
怨霊で始まった平安時代
・力を強めた天皇
・不倫ではじまる保元の乱
・ついに武家出身の天皇が誕生
重宝する干支
〔第二章〕呪われた元号
呪いを伴う憤死
・一〇〇年ごとの不吉な災い
・直島に島流し
愛と恨み
・和歌の名手
・最愛の妻と過ごした直島
・魔除けの源為朝
改元は幕府の手に
・失敗に終わった天皇の政治
天皇が二人、元号が二つ
〔第三章〕瀬戸内から都へ
横暴な江戸幕府
・奪い返した改元の力
・天皇をやめると激怒
・ついに解けた呪縛
史上初、御籤で決まった「明治」
・なぜ、御籤だったのか
・天皇一代、元号一つ
明治天皇のこころは直島へ
皇紀と新暦の導入
・旧暦改め、新暦へ
〔第四章〕新元号は令和
天皇と、三種の神器が揃う年
・二〇〇年ぶりの譲位
・東京オリンピックと天皇
・古事記、日本書紀、日本国憲法
・祝日と休日
戦後も残った奇跡の「昭和」
・元号の法律
英語になった元号
・官房長官の一一分
・選ばれなかった元号
前書きなど
―〔序章〕元号か、西暦か より抜粋―
万葉集の元号
「新しい元号は、令和であります」
平成三一年(二〇一九)四月一日、菅義偉内閣官房長官からこのように新元号が発表さ
れました。続いて安倍晋三内閣総理大臣から、「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生
まれ育つ」という意味が込められていると元号の説明がありました。
出典は日本の和歌集『万葉集』巻五の「梅花の歌三十二首序」にある一文「初春令月、気淑風和、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香」の漢文二文字をとりました。
読み下し文にすると「初春の令月にして、気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭珮後の香を薫らす」となります。
大意は「初春のよい月で、気は清く風は穏やかで、白梅は鏡の前の美しい人が白粉で
装うように花咲き、蘭は身を飾る衣にまとう香のように薫らせる」です。ここに歌人た
ちが集い歌をかわします。雪解けの春に白梅が咲き、蘭の香りに包まれた白く美しい春
の情景が目に浮かびます。
〈中略〉
長屋王は皇族ですが、怨霊になった天皇がいます。平安時代末期の崇徳天皇です。天
皇の怨霊ともなれば、その威力は絶大で、時代を超えて恐れ続けられました。大伴旅人
のように都に帰ることも許されず、瀬戸内の讃岐国で、怒りのあまり怨霊になったと伝
えらえています。
この怨霊は七〇〇年後、明治天皇によってやっと鎮められるのですが、怨霊鎮めには、
「明治」への改元が大きく関係しています。
本書は元号を主題とした歴史物語です。飛鳥時代から連綿と続くそれぞれの元号には
人間ドラマがあります。改元をめぐっては、喜び、愛、哀しみ、怒り、呪い、いがみ合
いなど、人間味溢れた情のぶつかり合いがありました。
元号とは何かということを解説しながら、最初の元号「大化」から「令和」に到るま
での歴史を振り返ります。
世界の年号「令和」は、ますます国際的な時代になることが予想されます。
〈中略〉
第一章には、日本で初めて元号が使われた飛鳥から平安時代まで元号がどう扱われて
きたか、そもそも元号とは何かということを解説しています。第二章は、天皇の改元する力が武家に奪われた鎌倉時代の歴史について記しました。
第三章は、史上初、御籤で決まった「明治」の元号についてです。明治天皇は皇居に
て即位礼を行なっていましたが、その日、明治天皇の勅使は讃岐国にいました。翌日に
は瀬戸内の島、直島に向かいます。そして、勅使が讃岐国から京都に帰ってきた翌日に、
御籤をひいて元号を決めます。なぜ、そのような大切な日に讃岐国にいたのでしょうか。
なぜ、元号は御籤の方式だったのでしょうか。
拙著『美術館ができるまで』で、直島の芸術の島としての成長を紹介しましたが、本
書では、「明治」への改元に欠かすことのできなかった直島の歴史について紐解いていき
ます。
また、「令和」の元号については第四章に記載しました。近年の元号の採択は、過去に
元号の候補として挙がったものから、選ばれることが多いです。過去の元号候補はこの
章で一挙に公開します。