前書きなど
古本屋、始めました
二〇一一年十一月、沖縄は那覇で古本屋を始めた。
豚ので有名な第一牧志公設市場の向かい側で、隣は漬物屋さんと洋服屋さん、前は鰹節屋さん。通りには土産物屋も餅屋も傘屋もある。アーケードの下、みんな道にせり出して、顔をつきあわせて店番をしている。
畳三畳のスペースに本を並べる。メインは沖縄に関する本で、ほかに人文・文芸・芸術・実用書など、試行錯誤しながら少しずつ揃えている。
店のお客さまは、地元の方と観光の方が半分ずつくらい。牧志公設市場は観光客向けになってしまったと言われており、確かに地元の若い人は少ないけれど、まだまだ毎日の買い物をしに来る人はいる。野菜を抱えた人が外の棚に目をとめて文庫を買われたり、「ずいぶん古い本を売ってるね、沖縄の本ならいいの? うちにたくさんあるから今度持ってくるよ」と言ってくださったり。
ぶらぶら歩いている観光客も、ふと立ちどまってウチナーグチ(沖縄の言葉)の本や紅型の写真集を手にとっていく。沖縄の特産物はマンゴーやちんすこうだけでなく、沖縄県産本というものもあるのだと知ってもらえたらいい。
ジュンク堂書店那覇店が開店するときに東京から異動してきた私が、その二年後にひとりで古本屋を始めるとは、自分でも思いもしなかった。いまだに冗談のような気がしながら、毎日シャッターを開けて、市場中央通りに一日じゅう座っている。
「市場の古本屋ウララ」、那覇の台所であり観光地としても有名な牧志公設市場の向かいにあります。お近くにお越しの際はお立ち寄りください。ご不要な本がありましたら、お譲りください。どうぞよろしくお願い申し上げます。