目次
第1章 明治時代のかっけ研究にみる日本の医学会の体質
かっけと栄養──幕末から明治にかけ猛威を振るった
原因不明でありながら治療法が先に確立
日本海軍でかっけ集団発生──解決のキッカケは間違った仮説
高木兼寛が行った世界初の臨床実験
まっとうな批判による健全な議論でかっけ撲滅が停滞
米食と麦食の比較試験必要──かっけ研究と森鷗外の反論
かっけの撲滅に奮闘した医師──麦飯採用で陸軍が「変身」
森鷗外に先駆けること3年──高木兼寛が動物実験
ニワトリの実験で否定されたタンパク質不足説
国内試験は麦・パン食+肉増量で患者数ゼロに
陸軍の患者増加が東大グループを動かす
農学部教授の「オリザニン」発見を無視した日本の医学者
日本の学者の無理解が世界的大手柄を奪った
かっけ克服の転機になった島薗順次郎のあいまいデータ
人体実験によるかっけの実証は慶應大学でなければできなかった
かっけの臨床試験──大森憲太式はなぜ問題なのか
その後の「かっけ」減少までの長い道のり
「根拠に基づく医療」はかっけ論争の反省抜きには語れない
現代の医学にいまも色濃く残る「論理重視」の風潮
「根拠に基づく医療」の授業は臨床医が行うべきではないか
ディオバン事件、もう1つの側面──かっけ論争から何も学ばず
ディオバン事件のその後──日本では論文捏造は罪にならず?
ディオバン事件と東大──かっけ予防の教訓は生かされているのか
敗血症にはビタミンCとB1が有効との最新研究が
ランダム化比較試験は常に適切な方法といえるのか
第2章 がんの終末期にどんな医療を選びますか?
「緩和治療」は高額な画期的抗がん剤と同等の効果がある
がん患者は介護者がいると寿命が縮む?
大橋巨泉さんの死因はモルヒネ系鎮痛剤の誤投与なのか
がん終末期の点滴に医学的効果は期待できない
終末期の患者にとって「在宅酸素療法」は意外に効果がない
終末期の呼吸困難患者にモルヒネは有効なのか
終末期の呼吸困難患者には風を顔に送ることが有効
緩和ケアにおける「ステロイド」の効果と副作用
欧米で人気──「尊厳療法」の効果と日本での反応
終末期治療の「平均的効果」と「個別効果」
第3章 がん検診は“本当に”受けた方がいいの?
がん検診は受けた方がいいのか
診断と治療は正しいのに──がん早期発見が害になる“過剰診断”
がん検診の負の面を伝えるのは難しいものです
がん検診が過大に評価されるカラクリ
がん検診の効果は何で検討すればいいのか
乳がん検診は年齢によって効果が違う
マンモグラフィ検診による乳がん死亡は0.07ポイント減るだけ
マンモグラフィ検診の乳がん死に対する効果の本当のところ
乳がん検診2つの害──「偽陽性と被ばく」どう考えるべきか
がんの早期発見は誰にでもメリットがあるとは限らない
がん検診の4つの行く末
がん検診を過小評価させる意外な理由
前立腺がんはがん検診に向いていない
「前立腺がん検診」の効果
大腸がん検診はお勧め
子宮がん検診で子宮がん死亡が100から14に激減との報告も
肺がん検診の「CT検査」はハイリスク群向け
甲状腺がん検診──生死に関係ない潜在がんがきわめて多い
第4章 コレステロール、ビタミンCD、βカロテンの意外な事実
少しずつ、イロイロがいい──日本人の食事は栄養的に世界一かも
和食の弱点──コレステロール不足が脳出血を招く
脳卒中とコレステロール──高い方がいい? 低い方がいい?
日本人の脳卒中──欧米に比べ脳出血が多い
コレステロール摂取量が多いとがんになりやすいは本当?
寿命とコレステロール──高コレステロールが寿命を延ばしている可能性も
卵も脂の多い肉も そればかり食べなければ毎日でもOK
魚の脂とコレステロール──心筋梗塞などの合併症予防に効果
ビタミンCを摂ると「風邪が1日早く治る」は本当か?
ビタミンCとがん──治療・予防に有効とする研究はあるのか
骨を形作るのに必須だが……ビタミンDは骨折を予防しない
風邪にはビタミンD? 10万人中3000人が予防できる計算
ビタミンEとβカロテンの抗酸化作用
第5章 糖尿病との賢いおつきあい
「根拠に基づく医療」とは何か
糖尿病新薬は「仮説」レベルで発売
糖尿病合併症予防を「根拠」として治療する
40年以上もあやふやな根拠に基づく治療が続いている
ランダム化比較試験のよいところ
血糖を下げ合併症予防を示した最初の研究「熊本研究」の問題点
「100の合併症が88に減る」は厳しい治療に見合うものなのか
血糖コントロールは緩くてもいい
心筋梗塞や脳卒中の予防効果は不明のまま
治療は最小限の薬にとどめ空腹時血糖に一喜一憂しない
薬を減らし体重を増やさない方がマシ!?
厳格コントロールだと低血糖が増える
「相対的に合併症が減った」という指標の意味
メトグルコによる「薬で糖尿病の合併症が減る」の根拠
糖尿病の合併症リスクを減らす薬の飲み方
薬の追加は逆効果──死亡率が増加
安くて効果のある薬が使われていない
メトグルコの副作用
薬による糖尿病治療──長寿は証明されず
糖尿病の薬で寿命が延びないワケ
HbA1cの値と死亡率との意外な関係
糖尿病はがんのリスクも高い
インスリンはがんを増やす!?
安くて効果が優れている薬が普及しないワケ
メタ分析が語る薬による血糖抑制のホントの効果
初期の糖尿病は厳しい治療が重要
遺産効果の実態──80歳までは変わらない
DPP4阻害薬の効果──ニセ薬と比較して差がないから安全ってなに?
DPP4阻害薬は安全と言えるのか
鳴り物入りで発売された糖尿病新薬の効果と害
血糖より血圧とコレステロールの低下が大切
糖尿病患者がアスピリンを使う効果と副作用
食事・運動療法は無理せず長く続けることが大事
糖尿病の早期発見に意味があるのか
運動や食事よりもやりがいのある治療法がある
第6章 寿命とがん
日本人の「不健康寿命」は延びている
ステージⅢの進行胃がんの告知と85歳の誕生日
100年前と大差ない75歳の平均余命
高齢者は病気と闘う必要があるのか
風邪は何日で治るのか
医療数字の「平均」──半分の人が治るのは……
パーセンタイルで見えてくるもの
ばらつきの重要性
標準偏差の異常が発端だったディオバン事件
「余命6カ月」の本当の意味
あてにならない「余命宣告」
「肺がん」は1年半で90%死ぬ、「乳がん」は10%以上が10年以上生きる
「余命8カ月」と宣言され20年生きた生物学者
余命は長さよりその中身が大切
末期がん「治さない方がいい」とも言い切れない
余命宣告の数字は他人のデータ
余命宣告を受けた後の生き方
末期がんの余命は死刑囚の執行日予測と同じくらい難しい
余命宣告は数字の希望の側面も照らす
「生き残った人だけの治療法」に意味はない
がん患者の“生存率”──誰を対象に計算すればいいのか
診断技術がアップすると生存率が延びる
がん患者に見る「雨乞い効果」と「治療効果」
第7章 医学研究の現実
真実か都市伝説か……「新月の夜は犯罪が多い」の真偽
健康食品やサプリメントの広告“著名人の体験談”は怪しい
標準的な治療を保険診療の範囲内で行うのが先決
自分によく似た患者で検討する
動物実験の結果を人間に当てはめてもいいのか
科学的でなければ「人体実験」は許されない
「人体実験」の実施にはいくつもの“科学的なプロセス”がある
「臨床試験」とはすなわち「人体実験」である
ナチスの「人体実験」を忘れないための「ヘルシンキ宣言」
「治験ボランティア」のカネとリスク
臨床試験では健康な人が死ぬこともある
臨床試験は事故を想定しておかなければならない
治験データ解析不足で副作用──日本の臨床試験での“大事件”
帯状疱疹の治療薬「ソリブジン」──本当の効果を検証する
動物実験から治験まで──数々のステップも事件の歯止めにならない
患者は新薬を期待するが治験の「偽薬」はハズレではない
新薬の開発にも「ランダム化試験」は重要
夢の薬「オプジーボ」のホントの効果とは
“3カ月の延命”の是非──新薬は副作用の点でも優れているか
100 ㎎で27万8000円──新薬「ニボルマブ」の驚くべき値段
超高額な新薬「オプジーボ」の値段はどう決められたのか
厳しい抗がん剤治療──途中でやめた「脱落者」をどう扱うか
最終章 かっけの歴史に戻って