目次
1章 浅井攻めと秀吉
2章 長浜城の築城と構造
3章 長浜城主時代の秀吉家臣団
4章 秀吉と国友鉄砲鍛冶
5章 秀吉の領国統治
6章 秀吉の城下町・長浜
7章 秀吉が与えた朱印地
8章 長浜の旧町名と城下町
9章 賤ヶ岳合戦と秀吉
10章 伝秀勝墓の発掘と埋葬者
11章 湖北・長浜での秀吉信仰
12章 秀吉以後の長浜の発展
前書きなど
この本は、表題に反して秀吉賛美の本ではない。秀吉が天下人となったのは偶然だが、その天下を取った秀吉が最初に城主であった長浜の地に、日本近世(江戸時代)の原点があるのは必然である。その意味では、秀吉という人物を通して、日本の近世社会のルーツを探る意図があり、日本の中世から近世への変革の深層を探る。
秀吉の業績は、今の長浜という町を、単なる地方都市に留まらない、由緒ある町にしている最大の理由である。そこを、とことん掘り下げてみた。だから、それは長浜という町の地方史でありながら、全国に通じる歴史でもある。明治維新にも勝ると思われる、近世社会の創出という日本の大構造改革の波が、この地方都市から起きたのである。今の日本は「地方創生」がささやかれるが、この長浜の四百年余りの前の実例を、再起するイメージかもしれない。その時の長浜は秀吉のおかげで必然の成り行きの中、変革の嚆矢となったが、今は地域住民の努力なしに果たせないという現実がある。
長浜の過去を検証し、数少ない古文書や地上に残った地形や地名などにより、この町がたどった歴史を正確に跡付けようとしたのが本書である。けっして秀吉を称賛することはしないが、長浜の町がたどった歩みには敬意をもって接したい。長浜という地方都市を出発点とする日本近世史がここで繰り広げられる。