目次
・〈感情と自己欺瞞〉自分のつくウソに喜んで騙される私とはどういう人なのか
堀内進之介(首都大学東京客員研究員、現代位相研究所首席研究員/政治社会学・批判的社会理論)
自分の理性の不十分さや意志の弱さに付け込まれ、あるいは感情への期待を逆手にとられ、国家や会社や共同体に都合よく動員されてしまう。だまされていることに気づきながらも、もっともらしい理由をつけて納得しようとする。理性より感情を重視する思潮にあって、こうした感情の負の側面にこそ注視する必要がある。あらためて「冷静に考える」ための条件や環境を整えることの重要性について考察する。
・〈キャラ化とイツメンの世界〉つながり過剰症候群…ともだち探しという明るい地獄
土井隆義(筑波大学人文社会系教授/社会学)
決して周囲から突出してはならず、協調しあいながら摩擦を避け、仲良し関係を営み続けなければならない。そういった過剰な同調圧力こそ、今日のいじめの根底に潜んでいるものだと土井氏は言う。同調圧力、すなわち過剰なつながりへの拘りを、感情の強要とのかかわりから分析する。
・〈暴走する現代の世間〉やさしい世間はどこにある?…〈空気読め〉の構造からの脱却
佐藤直樹(九州工業大学名誉教授・現代評論家)
伝統的な人的関係である「世間」は、日本独自のものだが、明治以降の近代化、すなわち西欧化の進展によって、いずれ解体・消滅すると考えられてきた。ところが、1990年代末ぐらいから、この「世間」が逆に暴走し、凶暴化し始めていると「日本世間学会」を設立した一人である佐藤氏は言う。なぜ、今、「世間」が暴走・凶暴化するのか。ポジティブ感情、ネガティブ感情の交差からその正体に迫る。