目次
序文(上村幸雄)
はじめに わが奄美
第1章 奄美を巡る昔話
奄美随想—失われた時を求めて— 奄美の息吹
ニラいかナイを辿って
第2章 奄美の女性と霊力
奄美随想—失われた時を求めて— 宝貝遊び
霊魂にまつわる三角形
奄美のノロと女の結びつき
奄美の女の生活と習俗
第3章 奄美の食と火の神がなし
奄美の食生活について
火の神がなし
第4章 奄美の色と織物
奄美方言と赤色について
奄美の赤と青、及び色料について
奄美の染色
奄美の織物—バショウー
消え去った奄美の織物
奄美の衣料と習俗について
大島紬の流れとおナリ神
第5章 奄美の方言
消えゆく奄美語を追って
おわりに 奄美のことば—長田さんの祈り(須山名保子)
あとがき (大島信徳/見目正克)
前書きなど
…長田須磨がやがて五〇歳になろうとする時、惹かれるように柳田国男氏の門を叩き、柳田氏の主宰する女性民俗研究会に参加を許された。柳田氏の一言の指摘が奄美の民俗と文化の価値に彼女の眼を大きく開かせ、以後四十余年に及ぶ彼女の後半生の運命を定めることになった。…
…天保生まれの曾祖母はとくに彼女(須磨)を可愛がった。九五歳まで長命したこの曾祖母は、由緒あるノロ(祝女。神事を司る女神官)を務め明治四十三年ころ亡くなるが、生前のある時ノロの美しい衣裳や装身具を前にして、「クンキンナスマニクリロヤア(この衣裳は須磨にあげようね)」と告げたそうである。おそらく須磨は幼な心ながらノロの相伝と受け止めたことであろう。アムシラレ(ノロの地方最高位)の末裔であるという誇りそしてヲナリ神(一家一族の守護神)の使命感が心の奥底深く刻みつけられたことと思う。彼女はよく「私は最後の奄美古代人」と苦笑しながら言っていたが、奄美の古い言葉や風習を克明に記憶していることに驚かされた。…
(あとがきより)