目次
序論 「自分がされたくないことは人にもしない」という「黄金律」の新開拓…………i
第1部 グローバル公共倫理「自分がされたくないことは人にもしない」の実践
対談 市民レベルの日中交流をどう進めるか 福田康夫×王敏……………………3
人類運命共同体は、世界が発展するための歴史的な必然である 滕 文生…………29
【人間の責任に関する世界宣言】の背景と思考 渥美桂子……………………………45
文化人類学から『世界はなぜ争うのか 』を読む 秦 兆雄……………………………89
中国の視座からみた憲法平和主義の行方 季 衛東……………………………………125
人類運命共同体の理念と相互に映える新書 王殿卿……………………………………155
公共理論の中に未来を発見する(発言の要旨) 陳煜…………………………………165
「未来への信仰」・「交わりへの信仰」 呉 端……………………………………………169
Not Impose on Other - Regulations of International Law on Anti-War 周 凡淼…195
第2部 グローバル公共倫理から日中・東アジアの平和発展へ
福田ドクトリン、新福田ドクトリンと日中関係 段 瑞聡……………………………255
脱亜入欧 仲違い 和合東亜 王殿卿……………………………………………………291
福田康夫元首相の南京訪問………………………………………………………………305
福田元首相の南京大虐殺犠牲者記念館参詣 高洪…………………………………306
【記録】南京への慰霊の旅 王 小燕…………………………………………………312
世界宗教の対話に参与する儒家の知恵 張践……………………………………………333
アジア生態文明の精神的価値とグローバル公共論理の再検証 范 云涛……………355
『世界はなぜ争うのか』から得た日中両国国民感情の改善方法 鈴木晶(陳晶)…375
終論 「日本と中国が近くなってほい」……………………………………………391
対談者・論文著者紹介…………………………………………………………406
前書きなど
日本人は皆「智者不惑」、「一日之長」、「四海兄弟」などの四文字熟語の出典が『論語』であることを知っています。なぜならこれらの知性に満ちた表現は古来より他の中国古典とともに日本人に受け入れられ認められ、日本語の単語の中の一員に変化しました。漢字文化圏以外の地域では、『論語』を例にしますと、大概の多くの人が「己所不欲勿施于人」(自分がされたくないことは、人にもしない)を、まず挙げます。というのは他の文明圏の経典の中にも似たような説法があるからです。またこうとも言えましょう。「己所不欲勿施于人」が含む意義とカギは地域や人種を越え、広く共通認識され共有されていると言えましょう。
このため、日本の前首相である福田赳夫氏は国際行動理事会(インターアクションカウンシル、通称OBサミット)を創り、1995年にこの世を去るまで委員長を務めました。OBサミットは全会一致の1997年発表した「人類責任宣言」を通して、主旨はグローバルに分布している普遍的意義と価値の倫理規範をまとめて整理することであり、明文化して宣言しました。そしてグローバル倫理規範を支えている核心の「キーワード」に「己所不欲勿施于人」(自分がされたくないことは、人にもしない)が選ばれました。この一叡智は数千年の歴史検証をなめ尽くしたことを鑑みて、地球に連綿と続く生態であり、「人類責任宣言」はこれを「黄金定律」に定めました。