目次
はしがき
第1部 近代日本の海外知識の摂取と国際認識の確立
第1章 福澤諭吉と山縣有朋の対外認識及び所見c3
第2章 西川如見『華夷通商考』の世界認識−11
第3章 林子平『三国通覧圖説』と桂川甫周『北槎聞略』
の北方認識−31
第4章 吉田松陰の世界認識−41
第5章 支那思想の検討と日本的理解の確立−51
第6章 対外接触と万国公法の導入−59
第7章 世界知識の摂取――魏源『海國圖志』、褘理哲
『地球説略』、及び箕作省吾『坤輿圖識』−85
第8章 欧米文明の導入と文明化−105
第9章 藤田茂吉『文明東漸史』と陸羯南の国民主義−117
第10章 文明と安寧の国際秩序への参加−127
第2部 地域研究250年−135
第1章 文明の接触と地域の確認−137
1-1国際関係の拡大と接触−137
1-2地域研究の時期区分−140
第2章 探検と外国知識の吸収−143
2-1対外知識の蒐集−143
2-2北方・南洋と西アジア・インド、及びシベリア紀行−145
2-3中国大陸への関心−149
第3章 対外進出と地域研究−155
3-1植民学の転換と国策の遂行−155
3-2植民地経営と地域研究−160
3-3中国、朝鮮、南洋研究−164
3-4インド、西アジア、アフリカ研究−167
第4章 対外政策の遂行と地域研究の使命−175
4-1日本の中国進出と地域研究の役割−175
4-2支那社会への着目−176
4-3大陸政策論争−178
4-4アジア的生産様式論争−180
4-5共同体論争と農民革命論−185
4-6抗戦支那の分析−188
4-7内蒙古研究−190
4-8南洋進出と華僑−192
4-9インド研究−197
4-10京都学派と大東亜研究−201
4-11現地調査−205
4-12講座の刊行−210
第5章 世界の中の国家と地域研究−223
5-1国際認識の新しい座標−223
5-2地域研究の再出発と太平洋問題調査会−224
5-3昭和史論争と近代化論争−228
5-4韓国独立運動の確認−232
5-5先行研究と新生国家の解剖−233
5-6毛沢東研究と中国分析−234
5-7朝鮮資本主義論争と韓国資本主義論争−236
5-8チュチェ思想と金日成体制研究−239
5-9
東南アジアの相互認識と地域研究、及びアジア経済研究所と京大東南アジア研究センターの活動−241
5-10地域研究の拡大と深化、植民地主義からの脱出−246
5-11中東研究への視野拡大−247
5-12アフリカ諸国の独立とアフリカ研究−250
第6章 地域研究の自立−257
6-1地域研究の独立性−257
6-2植民地主義イデオロギーとの訣別−257
6-3新中国の地域研究と東アジアの国際関係−263
6-4アジア・エートスの確認とアジア圏の再把握−270
6-5中華システム/大一統システム−271
6-6インド世界研究の視点−273
6-7オセアニア地域及び太平洋世界の登場−275
第7章 地域研究と綜合社会科学−279
7-1歴史教科書論争と誤報朝日新聞事件の教訓−279
7-2歴史認識論争――日中韓の歴史認識をめぐって−279
7-3
歴史解釈論争――インドのサバルタン史、中国の新中国期民間
歴史学、日本の北方史、北朝鮮の金日成解放闘争−282
7-4綜合社会科学としての地域研究の原点追求−286
7-5価値体系の確認−290
7-6地域性の確認−293
7-7新京都学派と国際日本文化研究センター−296
7-8国際日本学−299
7-9地域研究の成果としての講座の刊行−300
第8章 戦略地域空間と地域研究−311
8-1地域研究の前提3条件−311
8-2戦略地域空間−312
(1)東アジア・ユーラシア世界−312
シベリア/日本海圏−313
北方領土、竹島、尖閣諸島−316
ユーラシアと改革開放中国−319
チベット−321
両岸関係−321
東アジア共同体−324
北朝鮮による朝鮮統一−326
華南・インドシナ地域−328
(2)東南アジア広域世界−330
ASEAN経済圏−330
南シナ海域−331
太平洋盆地−333
(3)アジア太平洋世界−335
アジア太平洋圏−336
(4)南アジア世界−340
インド経済圏−340
インド洋・東アフリカ圏−341
(5)中東世界−341
ガルフ圏−343
イスラム世界−343
イスラムの独自性――イスラム圏−345
アルカイダ活動圏−348
パレスチナ問題−348
(6)アフリカ世界−351
アフリカ開発−352
南部アフリカ圏−353
(7)非核地滞−354
第9章 地域研究の展望−361
9-1地域研究の次元−361
9-2地域単位論争−364
9-3歴史都市と地域研究としての都市−367
9-4地域としての水利ネットワーク−370
9-5地域空間設定の5要件−372
第3部 認識・論争・成果年譜−379
浦野起央主要業績−457
索引−464
前書きなど
対外認識と国民形成は国民国家の基本である。近代日本は海外知識の摂取による国際認識の確立をもって国際秩序の理解とそれへの参加が可能となり、日本は国民形成と対外関係の樹立へと突入し、そして国民国家の政策が追求され維持されてきた。この視点において、日本はどのように海外知識を摂取していったか、そこにおいて開国と対外関係のかかわりがどのように始まり、国際法がどのように受容されてきたか、そこにおける日本の認識と理解はどういうものであったか、また漢字文化圏にあった日本はどういう形で欧米文明を導入し理解し近代普遍的文明化世界の一員となったか、そこにおける国民主義はどのような理解と主張にあり、そこで近代国民国家の姿を辿ったかが論じられる。加えて、かかる近代日本は対外列強に抗して自尊と自存を自覚し確立していったか、その日本の対外原則は、日本の主権線を維持し、その安危のための利益線を保護することの発想にあった。これが本書、特に第1部の主題「近代日本の海外知識の摂取と国際認識の確立」である。
以後における対外知識の摂取と対外政策の形成及び展開は、地域研究と国際関係の領域にある。第2部に「地域研究250年」、第3部に関連の年表を付したのはそのためである。