目次
まえがき K. スリダンマーナンダ長老
はじめに
第Ⅰ部 出家まで
第1章 ブッダの過去世
01話 スメーダ……未来のブッダ
02話 スメーダの大望……一切知者ブッダになる
第2章 生誕
03話 マハーマーヤー妃の夢
04話 生地ルンビニー……菩薩降誕
05話 アシタ仙人……泣き笑いの理由
06話 ゴータマ・シッダッタ……命名式
第3章 王子の時代
07話 こども時代と教育
08話 慈しみにみちた若き王子
09話 シッダッダ王子の結婚
第4章 重大な前ぶれ
10話 最初の予兆……一人の老人
11話 二番目の予兆……一人の病人
12話 三番目の予兆……一つの死体
13話 四番目の予兆……一人の僧
第5章 出家
14話 菩薩の出家
15話 髪を切る
16話 ビンビサーラ王の申し出を断る
第Ⅱ部 成道へ
第1章 苦行
17話 二人の仙人
18話 苦行……骨と皮に
19話 スジャーターの乳粥
第2章 さとり
20話 成道……完全なさとり
21話 さとりの後の七週間
第Ⅲ部 法輪を転じる~伝道布教へ
第1章 初転法輪
22話 タプッサとバッリカ……最初の在家の仏弟子
23話 最初の説法……「転法輪経」
24話 ヤサの出家……伝道説教へ
25話 三十賢群王子……探しものは女か、自己か
26話 カッサパ三兄弟と獰猛な龍王
第2章 サンガ(僧団)
27話 ビンビサーラ王……最初のパトロン国王
28話 二大弟子……サーリプッタとモッガラーナ
29話 最初の比丘集会……諸ブッダの教え
第3章 ふるさとへ
30話 ブッダの帰郷
31話 ヤソーダラー妃の願い
32話 一人息子ラーフラ……最初の沙弥
第Ⅳ部 ブッダをめぐる人々
第1章 さまざまな男たち
33話 アナータピンディカ……給孤独長者
34話 コーサラ国パセーナディ王……パトロン国王
35話 墓場のソーパーカ……七歳の阿羅漢
36話 くず拾いのスニータ……賤民の阿羅漢
37話 ローヒニー川の水戦争
第2章 さまざまな女たち
38話 女の出家……比丘尼サンガ成立と八重法
39話 美女ケーマー……不浄をさとり、王妃から聖尼へ
40話 生母にアビダンマ……三十三天で
41話 嘘つき孕み女チンチャマーナヴィカー
42話 逆うらみの美女マーガンディヤー
第3章 ブッダの一日
43話 パーリレイヤカの森の象のように
44話 ブッダの一日……定例の時間割
45話 心を耕す……カシ・バーラドヴァージャの「労働」
第4章 ヴィサーカー信女
46話 女性の在家信者で「布施第一」……鹿子母
第5章 在家信者への教え
47話 最上の吉祥とは……ブッダの幸福論「吉祥経」
48話 生きとし生けるものを慈しんで……「慈経」
49話 人食い鬼アーラヴァカ……最上の生き方とは?
50話 青年への教え……「シンガーラ教誡経」(六方礼経)
第6章 側近の人たち
51話 侍医ジーヴァカ……ブッダを治療した名医
52話 侍者アーナンダ……ブッダのことばの管理人
第Ⅴ部 さまざまな「悪」
第1章 殺人事件
53話 アングリマーラ……指を花飾りにした殺人鬼
54話 美女スンダリーを殺したのは?
第2章 邪見の神々
55話 龍王ナンドーパナンダを撃退したモッガラーナ尊者
56話 永遠論に囚われたバカ梵天
第3章 弱き者へ――病いの比丘・嘆きの母
57話 病める比丘への慈悲……プーティガッタ・ティッサ
58話 幼な子に死なれた母……キサーゴータミー
59話 すべて亡くして裸でさまよう女……パターチャーラー
第4章 外道――異教徒たち
60話 論争家サッチャカ……五蘊の無常・苦・無我をめぐって
61話 資産家ウパーリ……ジャイナ教を捨てて
第5章 サンガ分裂の陰謀
62話 デーヴァダッタ……殺仏・破僧のたくらみ
63話 凶象ナーラーギリ……酔象もおとなしく
64話 アジャータサットゥ……父王を牢獄で死に追いやる
第Ⅵ部 入滅へ
第1章 ブッダ最後の旅
65話 死への旅立ち……般涅槃へ(最期の一年)
66話 アンバパーリー……阿羅漢になった遊女
第2章 入滅――B.C.543年
67話 大般涅槃(マハーパリニッバーナ)
第Ⅶ部 入滅のあとに
最終章 ブッダの遺産
68話 火葬、そして舎利の分配
69話 仏典結集
参考文献
原著の参考文献
訳者あとがき
前書きなど
翻訳を進めるに当たって、なるだけ誤訳をなくし、また仏教の教理に反しない
ようにするため、木岡さん、西澤卓美さんらに監修をお願いしました。具体的に
は69話の翻訳が仕上がるたびに同報メールで届け、そのつど目を通していただき、
問題点などを指摘していただきました。西澤さんは1996年にミャンマーのマハー
シ冥想センターで比丘出家し、10年間の修行後帰国、ウ・コーサッラ長老の法名
でアラナ精舎を拠点としてヴィパッサナー冥想指導やアビダンマ基礎講座を全国
で開かれ、2014年還俗、大阪市に西澤綜合研究所を開設された方です。ヤンゴン
の国際上座仏教大学(ITBMU)ではクサラダンマ長老と同窓で、両者ともミャン
マーでは「外国人」であったこともあって、親友づきあいされたようです。翻訳
者はウ・コーサッラ長老当時から指導を受け、還俗後も変わりなく、相談に乗っ
ていただいています。
(中略)
翻訳のいきさつが少し長くなりました。最後に、この『南伝 ブッダ年代記』
の五大特長を挙げてみます。
①ブッダの生涯を69 のストーリーで人物エピソード中心にまとめ、初期仏教
の全体像を俯瞰して見渡せるパノラマ風の生彩ある読み物。波瀾万丈の連載読
み切り風で、“小説ブッダ”として読んでも楽しい。筆者のクサラダンマ長老
は、中国系インドネシア人。ミャンマーの国際上座仏教大学(ITBMU)主席卒業
直後の30代半ばに執筆。
②ブッダの年齢と南伝の暦年をリンクし「雨安居」の場所から時期を特定。口
伝から始まった上座仏教の伝統的な暦年の真正性が、近年、ユネスコのルンビ
ニー遺跡発掘調査などから見直される中、日本ではこれまで類例のないスタイ
ルで、年号を整理して歴史表記した画期的な初のブッダ年代記。ブッダの教え
の実践こそ最重要だが、そのための理解を深める仏伝である。
③万人向けの読みやすく親しみやすいブッダの真理ガイドブック。もともと青
少年向けに構想・執筆され、こどもからお年寄りまで、また仏教の初心者から
専門家まで、誰にでも分かりやすい簡潔な表現を駆使し、複雑な教えの内容を
的確にすっきりまとめている。将来的には長編コミックやアニメの原作として
格好の資料になることも期待され、仏教の更なる普及一般化のきっかけとなり
得る。
④その一方で膨大なパーリ三蔵経典から精選した仏教の真理が、縦横無尽に博
引旁証され、仏教の基本書、“教科書”として読んでも高度な内容。ブッダの
特に大切な経典や教えが随所にちりばめられ、読み進めるうち、いつのまにか
自然に身につく。人格向上の指針として、とても役に立つ。
⑤それぞれの物語の情景を彷彿とさせるイラスト付きの“ブッダ絵本”。ミャ
ンマーの著名な水彩画家が、滋味あふれる絵によって場面を再現。
じつは、この五大特長は翻訳開始時に作成したものですが、翻訳終了後も同じ
感をもっています。5 番目のイラストは、本書では掲載できませんでしたが、そ
れぞれの場面の情景がわかるものです。3 番目に「将来的には、長編コミックや
アニメの原作として格好の資料になることも期待され、仏教の更なる普及一般化
のきっけとなり得る」としましたが、それがどれほどの「将来」なのか、わかり
ませんが、なるだけ早く実現すればいいな、と切に願っています。