紹介
<格差社会,福祉の空洞化,市場原理主義への回帰というポスト・デモクラシー状況とは?その打開策は?>
今日、西欧ではポスト・デモクラシーと呼ぶ体制が進行し、民主主義が衰退に向かっている。労働組合が弱体化し、企業の利益代表と政府の相互交渉によって政治が形成されて、権力と富の再分配政策はとても望めそうにない。少数の政治エリートが大衆の要求の管理と操作法を習得し、選挙は見世物的なゲームと化した。また公共サービスのブランド化。しらけた大衆は社会的上昇のため教育に異常な関心を示している。
こうした状況に対して、著者は、人間が人間らしい生活をするために不可欠な公共的施策は必要であり、市民的権利がどれだけ守られるかが、その社会の品位を推し測る試金石になると述べている。
本書は富裕者優遇政策を生む構造的力を解明し、企業の政治支配防止、政党の再生、新たなアイデンティティ形成など、その打開策を探る。格差拡大に進む日本の政治状況にも大きな教訓となるヨーロッパ最新の思索。
山口二郎(北海道大学法学部教授)
—日本政治を読み解く上でも、本書は有益な視座を提供してくれる。とくに、新自由主義政策によって不利益をこうむるはずの弱者がなぜこれを支持するのかという大きな疑問が、本書のいくつかの概念を応用することによって解決されるように思う。