紹介
隠された幕末維新の真実――
赤松が生きていれば、
日本はまったく異なる近代史を歩んでいた……
坂本龍馬より時代に先駆け、維新直前に暗殺された、
大政奉還の隠れた立役者の実像!
■大政奉還150周年記念■
「我々がロシアを撃破できたのも、 思えば、赤松先生の薫陶の賜物と言うべきである」
――東郷平八郎
坂本龍馬に先駆けて議会政治を唱え、その先進性を西郷隆盛・大久保利通らが恐れ、ついに暗殺された赤松小三郎。これまで歴史の闇に葬られてきた。しかし、来年の大政奉還150周年に向けて、歴史の真実に注目が集まっている。
本書は、赤松の知られざる生涯を最新の研究成果とともに紹介し、幕末に彼の唱えた議会政治が現在の日本国憲法の理念と較べて何ら遜色のない内容であり、社会的支持も得ていた事実を明らかにする。
幕末に芽生えた“立憲主義の夢"は、テロリズムによって潰えたのであり、明治に出現した専制体制とは異なる“もう一つの維新"“もう一つの日本近代史"の可能性があった。そして、赤松小三郎の夢は、今なお実現していない。
「歴史の闇から救い出されたこの人物が、
いま我々に明治維新の《再解釈》を迫っている」
――佐々木実(ジャーナリスト、新潮ドキュメント賞・大宅ノンフィクション賞受賞)
■赤松小三郎(あかまつ・こさぶろう)
幕末の兵学者・政治思想家。天保2年(1831)~慶応3年(1867)。上田藩士。勝海舟の従者として長崎海軍伝習所に学ぶ。薩摩藩に請われ英国式兵学を教え、東郷平八郎、野津道貫ら、日本陸海軍の指導者たちを多数育成。また、普通選挙による議会政治、人民平等、個性の尊重など、現行憲法に通じる憲法構想を、徳川・薩摩・越前に建白した。徳川政権と薩長の内戦を回避し、平和的な新政権樹立を目指したが、大政奉還を目前に京都で暗殺された。享年37歳。
「慶応三年(一八六七)五月に日本で初めて、全国民に参政権を与える議会の開設、法の下の平等、個性の尊重など、現行憲法につながる憲法構想を提案し、その実現のために奔走したのが赤松小三郎である。長い間、歴史の闇に葬られてきた人物である。
なぜ彼は歴史から消され、知られていないのだろう。その理由を解明していくことそのものが、日本の近現代史の闇を照射すると共に、現在の時代が閉塞状況に陥っている原因の一端を明らかにすることにつながると私は考えている。」――本書「はじめに」より
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【目次】
[はじめに] 消し去られた政治思想家
第1章 赤松小三郎の生涯と議会政治の夢
第2章 赤松小三郎の憲法構想
第3章 明治維新神話とプロクルステスの寝台
第4章 そして圧政に至った
第5章 長州レジームから日本を取り戻す
あとがき
付録 巻末資料
参考文献一覧
著者紹介
目次
[はじめに] 消し去られた政治思想家
第1章 赤松小三郎の生涯と議会政治の夢
・いまだ解明されていないその生涯
・数学を基礎に、蘭学・兵学を学ぶ
・勝海舟の従者として長崎海軍伝習所へ
・挫折と雌伏
・英学事始
・身分制度の撤廃と言論の自由を
・野津道貫が薩摩に招請した
・京都での開塾
・会津からも招請される
・小三郎が講義で伝えた輿論政治
・小三郎を探索させていた大久保利通
・三通の「御改正口上書」─越前・薩摩・徳川政権
・薩土盟約と大政奉還建白書
・西郷隆盛の転向
・西郷に武力蜂起を促したアーネスト・サトウ
・内戦の扇動者
・小三郎最後の闘い
・山本覚馬の「管見」
・小三郎の最期
・諸藩士惜しがりおり候
・可兒春琳の談話
・品川弥二郎の関与
・死せる赤松、生ける西郷を走らす
・東郷平八郎が小三郎の記憶を呼び覚ました
第2章 赤松小三郎の憲法構想
・立憲主義の源流
・天幕御合体諸藩一和
・普通選挙による議政局議員の選出
・国権の最高機関としての議政局
・教育・人民平等・通貨政策・必要最小限の軍備
・万国普通公平の憲法
・現行憲法でも実現されていない小三郎の考え
・薩土盟約は議会制民主主義を目指した
・坂本龍馬の「船中八策」は実在せず
・福沢諭吉『西洋事情』の影響
・御改正口上書と薩土盟約の相違点
・地球のどこに持っていっても恥じるところのない憲法を
・改憲論者は日本の歴史も知らない
・明治維新最大の過ち
第3章 明治維新神話とプロクルステスの寝台
・左右共通の物語
・吉田松陰はなぜ記憶されねばならないのか?
・赤松小三郎はなぜ忘却されねばならないのか?
・吉田松陰の排外主義思想とそれを諫めた佐久間象山
・松陰を助けようとした老中も切り捨てられる
・下関戦争は日本におけるアヘン戦争である
・人斬り晋作・人斬り俊輔
・佐久間象山を暗殺した吉田松陰の弟子たち
・赤松小三郎の久坂玄瑞評
・自民党と共産党と長州の遺伝子
第4章 そして圧政に至った
・近代官僚専制システムの歴史的起源
・自由な空気が後退して圧政に至った
・加藤弘之の転向
・西周と軍人勅諭
・森鷗外と日露戦争の脚気惨害
・民権派の憲法構想も天皇大権に屈していく
・象徴天皇制は日本の伝統
第5章 長州レジームから日本を取り戻す
・戦後レジーム・永続敗戦レジーム・長州レジーム
・長州レジームの特質
・長州生まれの新興宗教=国家神道
・テロの正当化から戦死の強要へ
・GHQ史観と長州史観
・靖国神社は長州神社
・明治維新神話が崩壊するとき
・あとがき
付録 巻末資料
1……赤松小三郎「数件御改正之儀奉申上候口上書」(慶応三年五月)
2……薩土盟約「約定書」(慶応三年六月二六日)
3……坂本龍馬「新政府綱領八策」(慶応三年一一月上旬)
4……五箇条の御誓文(慶応四年三月一四日)
赤松小三郎略年譜
参考文献一覧
著者紹介