内田裕介さんの書評 2021/12/23 1いいね!
新聞広告に「おひとり様女子の、人に言えない性癖」という惹句があり、変な癖ってどんな癖なんだろう?と好奇心があって読んでみた。
そしたら、ある40過ぎの女性の自慰遍歴の手記、であった。
女性が自慰をすること自体は別に変ったことでもないが、この手記の主にはスカトロ趣向もあって、たしかに少し珍しいパターンかもしれない。
描写は微に入り細に入りで、人前で開くのが憚られるほど。
読みはじめたときは「ただのエロ本?」と★ひとつにしようと思ったが、考え直してみると、特別な主張があるわけでもなく、「わたしはこうなんです、ヘンタイかもしれないけど」とただ開示しているだけで、それが生身の人間のありようをまさに「赤裸々」にあらわしていることに気づいた。
元来、性的興奮の在り方は極めて個人的であり、他人から見ればそれこそ「ヘンタイ」としか言えない性癖も、本人にとってはとても大事な手続きだったりする。ヘンタイがあるならその反対にノーマルもありそうなものだが、果たして性欲的生活=ヰタ・セクスアリスにノーマルはあるのか。むしろ一人一人顔が違うように性欲的生活はみんな違う、つまりノーマルは存在しない、と考えた方がよいのではないか。
自慰の仕方など、たぶん、人生の最後まで人に話したり見せたりすることはなく、だからこそ、自慰は、他人や世間を気にすることのない「その人そのもの」がもっとも強く現れる局面、なのかもしれない。
そんなことをつらつら考えていたら、ひょっとすると本書、現代の『ヰタ・セクスアリス』とでもいうべき名作?という気がしてきたので、★5にした。
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