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阿波野青畝への旅

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詳しい情報
読み: アワノ セイホ エノ タビ
出版社: 創風社出版
単行本: 232 ページ
ISBN-10: 4860372840  ISBN-13: 9784860372842  [この本のウィジェットを作る]
NDC(9) : 911.362

紹介

昭和初期に俳句に新風を吹き込んだ4Sの一人と言われて活躍した市井の俳人、阿波野青畝。その生涯と俳句の生まれる土壌を辿る。丁寧な取材と資料の読み込みで、93歳で没するまで市井の俳人で在り続けた青畝の魅力に迫る。
昭和初期に俳句に新風を吹き込んだ4Sの一人と言われて活躍した市井の俳人、阿波野青畝。その生涯と俳句の生まれる土壌を辿る。丁寧な取材と資料の読み込みで、93歳で没するまで市井の俳人で在り続けた青畝の魅力に迫る。

目次

プロローグ ―浮御堂―

第1部 青畝の半生
 第1章 生まれ故郷・神話と万葉集
 第2章 俳句との出会い
  1,耳疾
  2,俳句との出会い
  3,虚子への手紙
 第3章 たかむち句会
 第4章 大阪・切磋琢磨の時代
  1,原石鼎と野村泊月
  2,大阪の養家と結婚
  3,村上鬼城の来阪
  4,「小かぶら会」と「無名会」
  5,涅槃像
  6,かつらぎ
 第5章 銃後の俳句・連句
  1,銃後の青畝
  2,連句
  3,終戦日の青畝
 第6章 アッシジの聖フランシスコ
  1,青畝のキリスト教
  2,キリスト教の影響

第2部 青畝俳句の世界
 第1章 愛とエロス
  1,愛
  2,エロス
 第2章 アートな溲瓶
  1,青畝の俳句観
  2,病閑吟
 第3章 狐火ともののけ
  1,狐火
  2,雪女郎
  3,妖怪
 第4章 ユーモア
  1,青畝のユーモアとは
  2,ユーモアを生み出す表現法
  3,季語の本意をずらすユーモア
 第5章 取り合わせで広がる発想
  1,芭蕉と青畝
  2,「さびし」との取り合わせ
  3,雅と俗の取り合わせ
  4,切り返す青畝
 第6章 俳句の言葉
  1,造語と新季語
  2,絵画と言葉
  3,オノマトペ
  4,小動物
  5,青畝の推敲
  6,都会派青畝
 第7章 子規と青畝
  1,俳句の魅力
  2,青畝の中の子規
  3,俳句表現の比較

エピローグ
阿波野青畝略年譜
参考文献
あとがき

前書きなど

プロローグ ―浮御堂―

五月雨の雨垂ばかり浮御堂  青畝

 大津市本堅田の浮御堂の山門を入るとすぐにこの句碑がある。子育て中近くに住んでいた私は、小児科通いのたびによく前を通った。自転車を漕ぎながら、「さみだれのあまだればかり…」と声に出してみれば、濁音とア音が響き、心地よいリズム。五月雨と言えば、梅雨の鬱陶しい雨のことだが、この句では明るい雨のように感じられるのは、ア音が響くせいだろう。近江八景の中の「堅田の落雁」に描かれている雅な浮御堂に、俗な雨だれを取り合わせ、明るい雨の中ちょっとユーモラスでもある。
 句碑では漢字表記になっているが、平仮名表記にすれば一文字一文字が雨粒のようにも感じられる。雨の日に行ってみると、寄棟の屋根の浮御堂は樋がないので、屋根から四方の湖面に直接雨だれがぽたぽた落ちていた。

さみだれのあまだればかり浮御堂  (大正十三年 二十五歳)

 この句の掲載されている『日本新名勝俳句』(昭和六年刊行)を広げてみる。徳富蘇峰の序文によれば、大阪毎日新聞と東京日日新聞が共催で、先年選定した日本新名勝百三十三景のどれかを詠んだ句を募集し、高浜虚子に選句を依頼。その結果、応募句数は十万三千二百七に上り、秀逸の一万句を収録したという。その内の最優秀賞二十句に、琵琶湖を詠んだこの句が入賞した。同じ本の中から、青畝の句をもう一句見てみる。

宇治川をばたばた渡る雉のあり  (昭和五年 三十一歳)

 ばたばたというオノマトペにより、この雉の動きが生き生きと伝わってくる。宇治川と言えば、雅な『源氏物語』を思うが、雉は、そこを優雅にではなくばたばた渡るという。雅と俗の取り合わせからユーモアが生まれている。一方、私も風邪の子ども達を自転車に乗せ、浮御堂の雅な竜宮造楼門式山門の前をばたばたとよく走っていた。言わば、私自身が、ばたばた渡る雉だったかもしれない。青畝俳句のリズムとオノマトペの面白さから、俳句が身近なものに感じられた。

 昭和初期に俳句に新風を吹き込んだ四Sの一人と言われて活躍し、その後生涯市井の俳人だった阿波野青畝。その俳句の生まれた土壌を辿ることから、その俳句の魅力を考えてみたい。
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