目次
永き日や…大下真利子 花に寝ん…浦ひろし 駄馬つづく…喜読寿美
衣更へて…小西昭夫 かたまるや…中村美津江 短夜の…相楽くみ子
午砲打つ…正田土口男 吹き井戸や…松原永名子 ゑいやつと…本村弘一
祖母様の…小山トミエ
◆エッセイ◆松山から熊本へ…小西昭夫
すずしさや…小倉喜郎 朝貌の…中川喜久子 琵琶の名は…狩野琇鵬
就中…佐々木 峻 独身や…樫山健一 なんのその…原田美由紀
秋立つや…合志浩子 見上げたる…斎藤英雄
◆エッセイ◆第五高等学校…永田満徳
反橋の…須崎美穂子 鴫立つや…前川妙子 温泉の町や…塚本日出男
碧巌を…永田満徳 玉か石か…嶺 武志 や…わたなべじゅんこ
稲妻に…吉田千賀子 廻廊の…松井紀美恵
◆エッセイ◆結婚生活…あざ蓉子
酒なくて…友田郷道 引かで鳴る…吉岡美穂子 作らねど…坂上智哉
長けれど…松本秀一 名月や…泉 碧 君が名や…左近ゆみ
配達の…服部智恵子 秋の蝿…山村恵子
◆エッセイ◆引越し…横溝藤子
秋高し…川崎洋子 御名残の…野田遊三 凩や…松井紀美恵
水仙や…山村由紀子 水仙や…藤田啓次 雑炊や…梶 真久
同化して…笠原千歳 日あたりや…今川茂雄
◆エッセイ◆内坪井の家…正田土口男
面白し…竹下哲行 人に死し…中原幸子 寒山か…横溝藤子
ふるひ寄せて…小路美佐子 落ちざまに…岡村和子 ぶつぶつと…西田 誠
或夜夢に…塩見恵介 朧夜や…田代 格
◆エッセイ◆九州の旅…鈴木ひさし
木瓜咲くや…麦田雅弘 なある程…乘富あずさ 菫程な…谷さやん
土筆物言はず…野口志織 いの字より…尾上有紀子 謡ふものは…山口則男
菜の花の…三池悦子 菜の花の…嶋 そら
◆エッセイ◆小天温泉の旅…井上智重
筑後路や…松原永名子 留針や…平野咲子 しめ縄や…大西裕美
魚は皆…南村健治 若葉して…井上智重 淋しくば…坂口亜耶
天草の…吉田千賀子 温泉や…林よしこ
◆エッセイ◆紫溟吟社…馬場純二
有耶無耶の…橋本晴信 湧くからに…小山トミエ 禰宜の子の…堺由美子
春の夜の…鈴木ひさし 菅公に…城 恵以子 風呂に入れば…林よしこ
神苑に…竹花美代惠 冬木流す…平野咲子
◆エッセイ◆寺田寅彦…坪内稔典
道端や…中村美津江 ニツケルの…梶 真久 瑠璃色の…別所勝代
靴足袋の…中居由美 草山に…大下真利子 雪隠の…櫻井登美子
白露や…横溝藤子 秋の川…坪内稔典
◆エッセイ◆漱石と謡曲…狩野琇鵬
朝寒み…浦ひろし 行けど萩…服部智恵子 野菊一輪…小枝恵美子
顔洗ふ…樫山健一 聞かばやと…城恵以子 秋茄子…喜読寿美
涼しさや…須崎美穂子 いかめしき…鹿井 功
エッセイ◆熊本からロンドンへ…野田遊三
頓首して…馬場純二 先生の…坂上智哉 本名は…吉岡美穂子
南窓に…原田美由紀 大食を…友田郷道 部屋住の…水上博子
横顔の…東 英幸 安々と…あざ蓉子 菜の花の…中川喜久子
春の雨…相楽くみ子
◆夏目漱石略年譜…馬場純二編
◆あとがき
前書きなど
この『漱石・熊本百句』は、『漱石全集』第十七巻(平成八年、岩波書店)を底本とし、その全集から熊本時代に詠まれた百句をあざ蓉子、坪内稔典が選んだ。鑑賞、エッセーの書き手は、熊本と愛媛の若い人を中心にあざが依頼した。愛媛の書き手を多くしたのは、この本の姉妹版として『漱石・松山百句』が計画されているからである。ちなみに、漱石は愛媛(松山)において新派俳人としてデビューし、熊本において新派の代表的俳人になった。明治二十九年から三十三年に及ぶ熊本時代の漱石は俳人として世に知られていたのだ。
−中略−
さて、私たちのこの『漱石百句』は、漱石に関心を持つ者、あるいは熊本、愛媛などにおいて俳句を作っている者が、自分の眼で漱石の俳句を読むことに重点を置いている。すなわち、作者の事情(句の成立事情)よりも、眼前にある一句から読めることに比重をかけて鑑賞している。具体的には、各鑑賞文の前半が一句から読めることを中心にした鑑賞(表現に即した鑑賞)であり、後半は句の成立事情などである。なお、鑑賞文、エッセーのすべての草稿にあざ、坪内が目を通し、何人かには書き直しを求めた。激しく立腹された方もあったが、表現に即して鑑賞するというこの本の目的にかなり近づけたのではないだろうか。
ところで、今年は漱石の小説「草枕」「二百十日」が発表されて百年目に当たる。この二編は漱石の熊本体験が生かされた小説だが、百年を記念して今年の熊本ではさまざまなイベントが催されている。この記念の年に、『漱石百句』が漱石に気軽に親しむ契機になればどんなにいいだろう。
最後になったが、多くの要求に応じてくださった執筆者の方々、裏方としてこの本の進行を支えてくれた「花組」の横溝藤子、松原永名子に感謝する。もちろん、版元の創風社出版の方々にも。(あざ蓉子・坪内稔典 あとがき)