目次
1 差別とは何か?
差別の国際基準――差別は「する人(側)」の問題
アファーマティブアクションは差別にあたらない
「みなし差別」と「関連差別」
人種主義(レイシズム)と部落差別
歴史の中の、部落を「異化」するまなざし
2 社会構築主義はマイノリティを無化するものか?
「人種」は社会的構築物—では、人種差別はフィクションなのか?
部落差別の場合――“あるべからざる属性”という表現に対する問題提起
差別を無視・放置する論理―カラーブラインド・レイシズム
3 レイシズム研究に手がかりをもとめて—「逆差別」言説の研究を契機に
なぜ現代の部落差別を研究するのに、レイシズム研究を参照するのか
私がレイシズム研究に関心を持ったわけ――「逆差別」意識への関心
90年代・日本の逆差別――同和対策事業に対して
2000年代以降の変化——「不当な特権」批判へ
(コラム)同和対策事業とは
逆差別言説をどう見るか―アメリカのレイシズム研究への関心
「新しいレイシズム」のいくつかのパターン
①社会システムに埋めこまれた差別
②変容する言説
部落差別と「新しいレイシズム」
4 社会システムに埋め込まれた差別――「土地差別」を考える
見えにくくなった部落差別?――兵庫県淡路市調査(2021)
差別を見聞きしなくなったのは「部落問題を知らない者が増えた」からではない!
部落差別の質的変化
「土地差別」は社会システムに組み込まれた差別――氷上町調査(2002)
「人」より「土地」に対して強く現れる忌避意識――大阪府堺市調査(2015, 2020)
部落の土地を避ける理由
インパーソナルな聞き方をした場合――兵庫県姫路市調査(2021)
市民意識調査に「土地差別」質問が入ったことこそ新しい
土地差別調査を規制する「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」
つくられた差別の町
5 部落出身者判定の手がかりにされる部落の所在地情報(地名等)
1984年「人権展」の図録を手にして
戸籍による「系譜的」身元調査
戸籍の閲覧制度廃止へ
(コラム)同和対策除籍等適正化事業
「属地的」判定に依拠する身元調査――部落地名総鑑事件(1975)が示すこと
市民意識調査に見る部落出身者の判定基準――大阪府調査(2010)
(コラム)戸籍等の不正取得
6「全国部落調査」裁判――インターネットによる部落の所在地情報の拡散に向き合う
「全国部落調査」裁判とは
「全国部落調査裁判」の争点から見えるもの
部落の所在地情報の拡散がデジタル・ネイティブ世代に与える影響――大学生のレポートから
若者が「出会わない」部落・抽象化するイメージ
アウティングという暴力
ソーシャルメディアと「参加型」の差別
判決—東京地方裁判所(2021年9月27日)・東京高等裁判所(2023年6月28日)
社会学からみた第一審判決
①「プライバシー侵害」の限界
②不十分にしか認定されなかった部落差別の「属地性」
③認められなかった部落差別の「系譜性」
④地裁判決の「現住所・現本籍地主義」は特定の原告にとって不利となる
⑤ 部落出身をカミングアウトしている者には認められなかったプライバシー侵害
第二審判決による進展
①「差別されない権利」
②認められた部落差別の系譜性
改めて法で「差別」に向き合うとは
7 ふたたび、言説の変容を考える――「現代的レイシズム」とインターネット
「現代的レイシズム」としての「特権言説」
在日コリアンに対するレイシズムの研究を手がかりに
部落関連ツイート(2018~19)の場合
「架空のこと」が事実のようになるネット世界
8 「現代的レイシズム」を強化するものは何か――大学生の意識調査から
最後の問い――「現代的レイシズム」を強化するものは何か
調査の概要
回答者の属性
歴史・政策等に関する知識
部落問題の認知経路
情報源は何か
部落差別は「不当な差別」だと知っているか
部落の「人」と「土地」に対する忌避意識のちがい
部落差別における「古典的レイシズム」「現代的レイシズム」の検討
「現代的レイシズム」「古典的レイシズム」と部落に対する忌避意識
「現代的差別」意識を形作るものは何か—自己責任志向とリベラルな政策への反発
大学生に「現代的レイシズム」がそれほど浸透していないわけ
9 終章―どこへ向かうのか
変容する現代社会の差別の特性
人権教育にも責任がある
「差別は、もう深刻な問題ではないのに…」と考えるマジョリティの心理
「自分たちこそ、見捨てられたマイノリティ」だと主張するマジョリティ
差別「する人(側)」研究から、その次へ
おわりに